紳士協定
1947年/アメリカ
タブーに挑んだザナックに先見の明
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
アメリカでこの時代人種問題とくに<ユダヤ人排斥の事実や運動>を取り上げることはタブーだった。製作のダリル・F・ザナックは、ローラ・Z・ボブスンの原作をユダヤ人であるモス・ハートに脚色を依頼、監督にエリア・カザンを指名し映画化に挑んだ。ザナックの勇気と先見の明が評価されアカデミー作品賞を獲得している。
{偏見や差別を目前にして沈黙するのはそれを助長すること}という正義漢溢れるその切り口は鋭く、いま観るとアメリカの恥部を根こそぎ掘り起こし大上段から問題提起していて、その後起きた<赤狩り>に走ったアメリカの危うさを感じざるを得ない。その当事者でもあるE・カザンが監督賞を受賞したのも皮肉な現象である。
物語はNYのリベラルな雑誌に「反ユダヤ主義の記事」を委託された記者フィル・グリーン(グレゴリー・ペック)が自らユダヤ人と偽り体験した8週間を描いている。その間苛めにあった息子を犠牲にし、恋人キャシー(ドロシー・マクガイア)ともギクシャクし<偏見による差別>に挑んだフィル。インテリ社会における「暗黙の協定」ほど陰湿なものはない。いまの日本では<放射能汚染の風評被害>がそれに近い現象を起こしているが、かつての在日外国人など普遍的なテーマである。
G・ペックはこの作品でアメリカの良心として花開きその後も大スターの道を歩むが、15年後「アラバマ物語」で黒人差別問題を言動で正した弁護士役で見事実を結ぶことになる。母親役のアン・リヴイアと同僚アンのセレステ・ホルムの好演が目立つが助演女優賞はS・ホルムの手に。幼なじみのジョン・ガーフィールドなど手堅い脇役陣の演技も見どころのひとつ。
ただラブ・ロマンスとしては中途半端だったのと台詞が説教臭かったのは注文のつけすぎか?
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