ミリキタニの猫
2006年/アメリカ
日系人の気骨を描いたドキュメンタリーの傑作
shinakamさん
男性
総合 90点
ストーリー 90点
キャスト 90点
演出 95点
ビジュアル 90点
音楽 90点
リンダ・ハッテンドーフが初めて手掛けた長編ドキュメンタリー。
東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門の最優秀作品賞を始め各国で多くの賞を受賞している。
NYソーホーで路上生活をしながら画を描き続けている老人はミリキタニ(三力谷)という日系人。リンダは「路上アーティストの四季」というテーマでカメラを廻し始めたが、9.11事件をキッカケに、黙々と画を描き続ける彼への思いを新たにする。自宅に引き取ることで、思いもしなかった彼の80年余の人生を知ることになる。
’20カリフォルニア州で生まれ、広島に戻り少年時代を過ごした以外18歳から今日までアメリカで過ごした波乱の人生。その軌跡をたどるうちに、第二次大戦における日米の歴史と平和への願いが浮かび上がる。
猫の画を描くのもツールレーク収容所で慕ってくれた少年が猫好きだった想いを忘れられないから。映画は膨大なフィルムの中から76分に纏められ、変に感情的にならず希望を失わない反骨の人生を追いかけている。編集したケイコ・デグチの手腕によるところが大きい。
監督は声だけでなく、同居以降は画面にも登場し、まるで実の孫娘のような存在として観客に訴えてくる。この映像を支えたもう一人の撮影マサ・ヨシカワとジョエル・グッドマンの音楽も見事な調和を見せている。
この映画の素晴らしいところは天衣無縫なジミー・ミリキタニの人柄を、過剰な演出をすることなく丹念に撮り続けることで、<人の絆の大切さ>を実感することだろう。彼の望郷の念は富士や広島の風景、日本の演歌で切々と伝わってくる。それにしても「北国の春」や「奥飛騨慕情」はどうやって覚えたのだろう。
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