晴れ、ときどき映画三昧

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「未来を花束にして」(15・英) 70点

2017-07-15 16:30:57 |  (欧州・アジア他) 2010~15

  ・ 20世紀初頭、英国での婦人参政権を求めた女性たちのヒューマン・ドラマ。


    

 1912年のイギリス、過酷な労働である洗濯工場で働く24歳の女性モード・ワッツを主人公に婦人参政権を求め男性の階級社会に闘いを挑んだ女性たちのヒューマン・ストーリー。

 ワッツに扮したのは「17歳の肖像」(09)「華麗なるギャッツビー」(13)のキャリー・マリガン。30代だが童顔のため24歳の役にも違和感はない。下層労働者階級ながら同僚の夫と幼い息子と3人で慎ましく暮らしていたが、「サフラジェット」と呼ばれる女性参政権を要求する組織に身を投じ<違う生き方があるのではないか・・>と思うようになる。

 それは、今の生活を放棄するという究極の選択に迫られるが、女性に親権がなく長時間低賃金を余儀なくされることに甘んじることでもあった。

 WSPU(女性社会政治同盟)のリーダーであるエメリン・パンクハーストは「言葉より行動を」と呼びかける。本作では出番は少ないが演じたメリル・ストリープならではの存在感。

 本来社会の注目を引き付けるための手段としての行動はハンガー・ストライキだったが、強制摂食という手段で対抗した当局。

 行動は店への投石に始まり、電線遮断や郵便ポスト・別荘爆破へとエスカレート。今テロ行為がナーバスなとき、この行為は正当化されてよいものか?という疑問も湧くがそれだけ純粋な思いだったのだろう。

 アーサー・スティード警部(ブレンダン・グリーンソン)が上層部に利用されているだけで後悔するという説得にも、スパイへの協力要請にも答えず、優しい夫・サニー(ベン・ウィショー)の警告も耳を貸さず運動へ没頭するワッツ。

 キャスティングやシナリオ如何では、共感を得られない展開を巧くカバーしたのはC・マリガンや実行リーダーであるイーディス・エリンに扮したヘレナ・ボナム=カーターの存在が大きい。

 イーディスは実在の人物ではないがモデルとなった柔術師範の女性がいた。演じたヘレナは、時の首相で運動を弾圧したハーバート・ヘンリー・アスキス伯爵のひ孫という縁で、この役を喜んでいたという。

 「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」も担当したアビー・モーガンのシナリオも出色で、男性の弱みである仕事に忠実であることを優先し善悪がないがしろになったり、子育ては女性に頼らずできないことをしっかりと描いている。

 1913年エプソム・ダービーでジョージ5世の馬に飛び込み亡くなった実在の人物エミリー・ワイルディング・デイビソンが、もうひとりのヒロインだった。

 現在当たり前の女性の参政権は先進国のイギリスでも僅か100年前に漸く認められた事実を改めて知る思い。
 


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