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「愛のメモリー」(76・米) 70点

2014-07-20 15:56:15 | 外国映画 1960~79

 ・ デ・パルマ得意の360度スローモーション・カメラが見られるロマンチック・ミステリー。

                    

 サイコ・スリラーで名を売ったブライアン・デ・パルマ監督がヒッチコックを尊敬していたのは有名だが、名作「めまい」のオマージュとして知られる作品。邦題「愛のメモリー」はまさにロマンチック・ミステリーのようだが、原題は「OBSESSION(妄想)」。

 「タクシー・ドライバー」(76)の脚本家ポール・シュレイダーとともに作ったが、デ・パルマのマニアには幻の名作と言われるほど、日本公開はひっそりと行われた。その理由は、同年上映され話題を呼んだ「キャリー」と比べ地味で、日本にはなじみが薄いキャスティングのサスペンスものという評価がされていたからか。

 59年ニューオリンズで結婚10周年記念のパーティを行ったマイケル。その晩、現金50万ドルと引き換えに最愛の妻と娘を渡すという脅迫文とともに妻子を奪われてしまう。警察の指導どおり行動するが、2人を乗せた車が大型タンクローリーと衝突して車ごと川中へ。

 16年後、傷が癒えないまま、共同経営者のロバートとともにイタリアへ渡ったマイケル。妻と出逢った想い出のフィレンツェのサン・ミニアート・アル・モンテ教会で妻とそっくりな女性を見かける。

 ヴィルモス・ジグモンドのカメラはソフトフォーカスでニューオリンズの湿った空気とフィレンツェのクラシックな佇まいを見事に捉え、ミステリアスなストーリーをシッカリ支えている。音楽はヒッチコックの作品には欠かせないバーナード・ハーマンなのでさらに雰囲気が盛り上がる。

 マイケルを演じたクリフ・ロバートソンはオスカー俳優だが、日本ではそれ程知られていない。妻とイタリアの若い女性を演じたジュヌヴィエーヴ・ビジョルドは、2役には少し無理があったが独特の風貌はミステリアスで、彼女中心でストーリー展開して行く。

 デ・パルマとシュレイダーの2人は、もう少し違った展開を考えていたようだが、3時間を超える長編になるということで断念したという。もし構想通りだとすれば、論議を呼び話題騒然となったことだろう。当時なら道徳上日本公開されなかった恐れすらある。ミステリーの謎ときは多少強引な感が否めないのはその中抜きがあったためだろう。ジョン・リスゴー扮するロバートが台詞で種明かしする手法は、名手P・シュレイダーのシナリオらしくない。

 デ・パルマといえば、長廻しと360度のスローモーションが定番だが、後者はこれがラスト・シーンに登場する。マニアにとってはこれだけで価値がある作品ともいえる。
 


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