晴れ、ときどき映画三昧

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「ハリーの災難」(55・米)75点

2020-07-05 13:09:31 | 外国映画 1946~59


 ・ヒッチコックによるエンディングが微笑ましいブラック・コメディ。


 アルフレッド・ヒッチコックがジャック・トレヴァー・ストーリーの原作を映画化したブラック・コメディ。「34丁目の奇跡」のエドモンド・グエン、ジョンフォーサイス、これが映画デビュー作のシャーリー・マクレーン、ミルドレッド・ナトウィックの共演。

 紅葉が色鮮やかなバーモント州のある村。森のなかで男の死体が見つかる。発見者は4才の男の子アーニーだが、自分が殺してしまったのでは?という人物が3人いた。やがて男はハリーという名で保身のため埋められたり掘り返されたりされるハメに・・・。

 最初に現れたのは元船長のアルバート(E・グエン)で禁猟区でウサギを撃ったつもりがハリーに当たったとオドオドする。
 そこに現れたのは中年独身女性・アイビー(M・ナトウィック)でアルバートは経緯を話しお昼の約束を取り付ける。次に現れたのは息子アーニーの母ジェニファー(S・マクレーン)でハリーは夫だと判明する。
 不思議なことに死体を観ても二人とも驚いたり嘆き悲しんだりしないこと。さらに流れ者はハリーの靴を持って行くし、歩きながら読書の医者は死体につまずいても気づかない。売れない青年画家サム(J・フォーサイズ)は死体のスケッチをする始末。

 悲壮感皆無のシュールな展開だが、まるで舞台劇を観ているような錯覚に陥る流れは、ヒッチ独特の人間心理描写と演技上手な俳優に身を委ねてしまう。

 ヒッチ自信満々の作品は、テンポのある米国向けのコメディではないため不評だったが欧州(特にパリ)では大好評で面目を施し、次回作「知りすぎていた男」の大ヒットへとつながった。
 おなじみのカメオ出演は凡そ20分後、大富豪の車の奥に歩いている男で登場している。

 20才で映画デビューしたS・マクレーンの若いママ役はベテラン陣に囲まれても物怖じしない堂々の演技。その後「アパートの鍵貸します」(60)、「あなただけ今晩は」(63)、「愛と喝采の日々」(77)、「愛と追憶の日々」(83)など長年第一線で活躍、「あなたの旅立ち、綴ります」(18)でも健在ぶりを発揮し、生涯女優を貫いている掛け替えのない存在だ。

 死体を埋めたり、掘り返したり人間の尊厳を無視したようなコメディだが、初コンビのバーナード・ハーマンの音楽とともに微笑ましい台詞でハッピーエンドとなるまで和ましてくれた。


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