晴れ、ときどき映画三昧

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「ニノチカ」(47・米)75点

2020-07-23 12:03:20 | 外国映画 1946~59


 ・ ルビッチ監督G・ガルボ主演の洗練されたソ連風刺コメディ。


 サイレント全盛期の名監督エルンスト・ルビッチによるコメディ。41才で引退し伝説の女優となった元祖クール・ビューティ、グレタ・ガルボの主演。当時34才時で笑わない女優の彼女が大笑いするシーンで話題を呼んだ。キャッチフレーズは<ガルボが笑った!>。

 スターリン体制のソ連国家所有の宝飾を売るためパリにやってきた貿易委員3人組の監視役ニノチカ(G・ガルボ)。厳格な共産党員の軍曹がレオン伯爵(メルヴィン・ダグラス)との出逢いを通し自由な社会を知っていく寓話的ラブ・コメディ。

 当時の国際情勢ではナチス・ドイツへの警戒が趨勢だろうと思うが、アメリカは労働者の革命によって生まれた理想社会を謳う社会主義国家ソ連を風刺したコメディを早くも製作していた。

 ガリガリの共産党員ニノチカは華やかなパリで軟弱なプレイボーイのレオンの強引なアタックにも反応しなかった。キスにも「科学的には既に共鳴しあっている」といいながら、最先端のファッションで身を包み鏡に見とれる女心。

 極めつけは労働者食堂でのレオンがずっこける姿を観て思わず笑いが込み上げバカ笑いするニノチカ。いつしかシャンパンを愛しレオンとの逢瀬を待ち焦がれるように・・・。

 二人に嫉妬したのはスワナ大公妃(アイナ・クレア)。宝飾品を取り上げられ、オマケに愛人のレオンまで奪われるのは我慢できない。公務を忘れそうになったニノチカに二者択一を迫る。

 レオンは大公妃の庇護のもと爵位という特権階級を欲しいままに暮らしてきた微妙な立ち位置。自由主義の背景も欺瞞だらけだが、ソ連帰国のニノチカにラブレターを送り続ける。検閲で真っ黒な手紙にも<思い出だけは検閲できない>というほど愛一筋。

 狂言回しの3人組が愛のキューピットとなるラブ・コメディは、プロパガンダ映画を巧く笑いに包んだルビッチのさじ加減で口当たりのいい料理と化した。

 影で支えたのはルビッチを師と仰ぐビリー・ワイルダーが、チャールズ・ブラケットとともに書き起こした脚本であることも納得だ。


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