晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『光のほうへ』 85点

2011-06-18 15:50:54 |  (欧州・アジア他) 2010~15

光のほうへ

2010年/デンマーク

悲惨な暮らしに微かな救いがあった

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「光のほうへ」は邦題で原題「SABMARINO」は<水中に頭を突っ込まれる拷問>を意味するらしい。まさに拷問を受けるような、悲惨な生活を送っていた兄弟がそれぞれの人生を必死にもがく生きザマを描いている。ヨナス・T・べグトソンの原作をデンマークのトマス・ヴィンターベア監督が映画化。福祉先進国家デンマークの影の部分をドラマチックに切り取ったヒューマンドラマだ。
兄弟の少年時代、兄の今の暮らし、弟の今の暮らし、再会そしてエンディングの4部構成は極めてシンプル。これでもかというほど続く兄弟の極悪な環境。兄・ニックは恋人アナと別れたことがキッカケで暴力沙汰で刑務所から出所して3カ月。臨時簡易宿泊所暮らしで酒とスポーツジム通い以外は当てのない生活。離れて暮らす弟に電話するが子供の声がトラウマとなって切ってしまう。その弟は息子マーティンと2人暮らし。クスリ漬けの毎日は子供をまともに育てることも覚束ない。
こんな2人が久々再会したのは母親の葬儀で2回目が刑務所というのはこのドラマを象徴的に描いている。こんな2人に救いとなったのは弟の子供マーティン。救いようのない展開なのに周りの人々は優しく、最後はまさに一条の光が射してくる。
監督はデンマーク映画運動「ドグマ95」の創始者のひとり。この作品でも撮影は全てロケーション、照明は使わない、カメラは手持ちという精神は生きていて、他の映画とは一線を画している。米アカデミー外国語映画賞受賞のスサンネ・ビアといい「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアといいデンマーク映画からは目が離せない。
兄・ニックのヤコブ・セーダーグレンが何もかも諦めながらも品のある優しい眼差しが印象的。弟のペーター・プラウボーはナイーヴな風貌そのままで息子を溺愛しながら育てることができない不安定な父を好演している。助演というより、出番も多く2人主役という感じ。息子マーティンを演じたグスタフ・フィッシャー・ケアウルフが愛くるしく観客の父(母)性本能を満たしてくれそう。



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