晴れ、ときどき映画三昧

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「眼下の敵」(57・米/西独)75点

2020-10-07 11:18:02 | 外国映画 1946~59

 ・ 両雄の緊迫した知恵比べを、ゲーム感覚で楽しむ元祖・潜水艦映画。

 英国海軍中佐D・A・レイナーの体験に基づく小説「水面下の敵」を、英国からアメリカに置き換え俳優でもあったディック・パウエルが監督、オスカー特殊効果(音響編集)賞受賞作品。ロバート・ミッチェル、クルト・ユールゲンスの競演が最大の見どころ。

 第二次大戦中の南大西洋。米国駆逐艦ヘインズが独軍Uボートを発見。Uボートは特別任務を負って航路変更できなかったため、海上と海中で双方の艦長が知力の限りを尽くした対決が始まる・・・。
 
 米軍駆逐艦ヘインズの艦長マレルに扮したのがR・ミッチェル。貨物船船長だった前歴を知った乗員からは船酔いする素人と噂されていた。ひとたび緊急事態になると迅速で的確な指揮で懸念は一掃される。
 魚雷で貨物船が撃沈され妻を失った過去があり「破壊と苦痛に終わりはない。やがてこの戦争は終るが、次が始まるだろう。」と諦観の念を抱きつつ任務は全うするプロフェッショナルである。

 かたやUボート艦長シュトベルクを演じたのはC・ユールゲンス。第一次大戦で息子ふたりを失い「昔の戦争は負けても名誉が残った。しかしこの戦争は名誉などなく勝っても嫌な記憶が残るだけだ。」とナチス体制への疑問をぶつける。それでも「死も任務のひとつだ。だが、我々は死なない。」と部下への言葉は真のリーダーだ。

 ドイツ人が英語を話す違和感はあったが、この知らない男同士の心理的駆け引きによる戦いはまるでシーソー・ゲームを観るような感覚で、筆者のようなマニアでない人にも元祖・潜水艦映画と言われる所以が分かる面白さ。

 のちの「Uボート」(81・独)のようなリアルな艦内描写はなく当時の特撮技術では粗もめだつが、米海軍が全面協力したことで駆逐艦による爆雷攻撃などの迫力は満点!

 ノーサイド精神で美化されたハリウッドらしいエンディングが肌に合うかどうかで評価も分かれるところだが、大戦後まだ20年も経っていないのに米軍=正義、独軍=悪と言う図式を超えた戦争映画を作ったことに敬意を表したい。

 それに応えたC・ユールゲンスの名演に拍手を送りたい。

 



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