再会の食卓
2010年/中国
国情に翻弄されながら必死に生きた市井の人々
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
「トゥヤーの結婚」でモンゴル自治区で暮らす人々を描いてカンヌ・グランプリを獲得したワン・チュエンヤン監督が、今回は台湾からの帰郷団の取材をもとに上海の家族を通して夫婦・親子とは?を問う物語り。
中国と台湾という微妙な関係に翻弄されたユィアー。元夫に40数年ぶりに再会し、今の夫や家族と食卓を囲みどんな思いが蘇ったのだろう。主人公の3人は激動の中国に翻弄されながら必死に生きてきた市井の人々。とくにユィアーには1年しか暮らしていない元夫への想いは女として決して消し去ることはできないだろう。台湾で暮らすイェン・ションには望郷と懺悔の気持ちと余生への想いで一杯。イチバン気の毒なのは上海の夫シャンミン。息子を抱え途方にくれるユイアーを気の毒に思い、国民党の遺族であることを承知で引き取り、娘2人をもうける。こんな家族団らんの食卓に台湾からの賓客を迎えるだけでドラマになる。息子は競争社会から脱落し、次女は今の生活を壊しにきたイェン・ションを許せない。一家は急激な変化に巻き込まれながら過ごし、孫の世代は大都会上海の繁栄を当たり前のものとして享受している。向田邦子や橋田寿賀子のホームドラマの世界と同じ切り口だが、特異な設定の割に物語は淡々と進んで行く。東洋の文化を底辺に持ちながら欧米並みの発展を遂げた上海文明が本流となりつつなる今の中国・上海を見事に切り取って見せてくれた。カンヌの銀熊賞(最優秀脚本賞)を獲得した若手脚本家ナ・ジンの視線が孫のナナを通して描かれている。
倹約家で質素な生活のシャンミンは高価なカニを振る舞い、秘蔵の酒を飲み大いに謳う。3人の食卓は必死に生き延びた人生を切々と訴え、とてもいい場面だ。同情を禁じ得ないシャンミンが本音を隠し家族に意見を託したり、料理店で高級な白酒を飲み大声を発し隣客と口論する場面がとても切ない。
ユィアーを演じたリサ・ルーは「ラスト・エンペラー」で西太后を演じたヒト。とても80歳を超えたとは思えない、みずみずしいヒロインぶり。元夫役のリン・フォンは台湾歌手で中国を初めてTVで紹介したプロデューサーでもある。この作品への想いも人一倍強いだろう。シャンミン役のシュー・ツァイゲンは中国の大ベテラン。ナナ役のモニカ・モーは環境保護を訴えたヌードで有名な若手女優。このカルテットが世界一変化の激しい上海に暮らす人々の存在を改めて考えさせてくれる。
台湾からの帰郷団が盛んだったのは90年代。時代が10年ほどギャップがあるのは目をつぶろう。
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