・ ユーモアたっぷりな老夫婦の終活を描いたロード・ムービー。
50年連れ添った老夫婦が、愛用のキャンピング・カーでボストンの自宅からヘミングウェイが暮らしたキーウェストを目指して旅に出る。
人生の終わりを見据え過ぎ去った時を懐かしみながら夫婦の愛を確かめ合う、ユーモラスなロード・ムービー。
マイケル・ザドュリアン原作<旅の終わりに>をイタリアの巨匠パオラ・ヴィルズイ が監督。夫婦役をヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドという名優が共演している。
H・ミレンは知的な役柄が多いが本作では末期ガンながら強い生命力と夫への愛を全面に出した快活な女性エラに扮し、ほゞ完璧な演技は流石のオスカー女優。
D・サザーランドはヘミングウェイ研究の元・文学教授ジョンで、アルツハイマーが進行中。
こんな二人が娘や息子に行き先を黙って愛用のレジャー・シーガーに乗って旅に出る。それは終活への旅でもあった。
現実には認知症の夫が運転するキャンピングカーで長い旅を全うすることはできそうもないが、そこは映画ならではのこと。
本作ではガソリンスタンドで給油中、エラを置き去りにしたり、蛇行運転して警官に止められたりする。これもエピソードとして笑って済ませたい。
<ユーモアを忘れずに、夫婦の愛を描きたかった>というP・ヴィルズィは旅のエピソードのなかで如何に夫婦愛の絆が深いかを随所に織り込んでくる。
教え子の女性に遭遇したジョンは名前をしっかり覚えているのに、自分の娘や息子の名前を思いだせなかったり、妻のエラを隣人のリリアンを混同したりする。そのリリアンとは2年間浮気をしていたのが判明する。知らなかったほうが良かった昔の秘密がエラを怒らせ老人ホームに置き去りにする。
エラの初恋相手ダンはヒッピーの黒人男性だった。ジョンは未だに嫉妬してしていて老人ホームで再会すると銃を向けたりの騒ぎを起こす。
目的地キーウェストはすっかり観光地化して昔の面影はなかったが、人生を謳歌している人々に触れるだけで老夫婦の終活は目的を果たしたのだろう。
死を待つのみの老人ホームを拒否し、娘や息子に迷惑を掛けたくないというエラの想いは清々しいエンディングを迎える。
ジョンは果たして満足した人生を全うしたのだろうか?自分がジョンだったらと我が身に置き変えてみるとと少し気分が重くなってしまった。
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