晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「ローズの秘密の頁(ページ)」 70点

2018-06-23 17:47:57 | 2016~(平成28~)

・ 時代に翻弄されたアイルランド女性の大河ロマン。




セバスチャン・バリーの原作を大胆に脚色してメガホンを撮ったアイルランドの巨匠ジム・シェリダン。

「マイ・レフトフット」(89)、「父の祈りを」(93)が代表作だが、筆者にはアイルランドから渡米した自伝的ファンタジー映画「インアメリカ 三つの小さな願いごと」(02)が印象深い。

時代に翻弄された一人の女性の半生を描いたラブ・ロマンは、美しいが過酷な環境のアイルランドの風景がミハイル・クリチマンのカメラと月光の旋律が映えるブライアン・バーンの音楽が花を添える。

80年代半ば、アイルランド西部の精神病院の取り壊しが決まり、転院する患者の中で頑なに拒否するローズ。彼女は40年前赤ん坊殺しの罪を背負いながら精神科医グリーン(エリック・バナ)に自分の人生を語り始める・・・。

年老いたローズを演じたのは大女優ヴァネッサ・レッドグレーブ。80歳を超えて毅然とした佇まいは、ローズが本当に自分の子供を殺したとは思えそうもなく興味が沸いてくる。

若い頃のローズには、ルーニー・マーラ。その一途な瞳には薄幸の女性にはピッタリで、「ドラゴンタトゥーの女」(11)、「キャロル」(15)など今目が離せない女優。

まるっきり似ていない二人だが殆ど気にならなかった。

この時代の背景を理解していると、ローズの置かれた環境が如何に理不尽なものかがよく分かる。

ローズは戦火が激しくなって、英領アイルランドから叔母を頼ってアイルランド共和国へ移ってきた。英国と違って中立を宣言していたアイルランド。思想・宗教も違っている。

都会からやってきた若くて美しい女性の存在は、それだけで注目の的。なかでもゴーント神父(テオ・ジェームズ)と酒屋の息子で英国軍人となったマイケル(ジャック・レイナー)は環境が好対照でローズを巡って争う破目になる。

余りにもでき過ぎの感は否めないが、ローズを巡る40年の愛の物語は聖書に書かれた日記により終結を迎える。たった一つの愛を貫いた女性の壮大なラブストーリーだ。


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