・ エスニック ジョーク連発、フランスならではのコメディ。
昨年、フランス映画祭で「ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲」という邦題で上映された本作は、題名を変えて公開された。監督はフィリップ・ドゥ・ショーヴロンでギィ・ローランとともに脚本も手掛けていて、本国で歴代興業収入6位の大ヒット作。
ちなみに歴代1位は日本未公開作品の喜劇で、2位は日本でもヒットした「最強のふたり」(11)。
パリから170km程離れたロワール地方シノンで暮らすヴェルヌイユ夫妻。敬虔なカトリック教徒だが、4人娘でうち3人はそれぞれアラブ系、ユダヤ系、華人と結婚していて、教会で式を挙げることはできずにいた。
末娘ロールの恋人シャルルがカトリック教徒と聞いて大喜びするが、現れたのはコートジボワール人だった。しかもシャルルの父は元軍人でフランス人に好意を抱いていない。
名画「招かれざる客」(67・米)に似た設定だが、多様な人種・異宗教が原因で偏見が混在しているフランスの社会情勢を風刺したホーム・コメディで、そのエスニック・ジョークはタブーすれすれ。
15年11月に起きたパリ同時多発事件後なら、恐らく公開が遅れたことだろう。ただ建国以来、移民を受け入れ多様な異文化コミュニケーションを理解する寛容な共生社会の国でもある。
本作でも父クロードは、地元の名士で自称<ド・ゴール主義(保守派イデオロギー)者だがコミュニスト(反人種差別者)でもあり>、人種の違う3人の婿とも何とかやってきた。
初対面の人との会話で政治と宗教とスポーツの話はタブーだといわれるが、ヴェルネイユ家ではもう一つ食事が加わりそうな雰囲気。異文化を受け入れることの難しさを、お祭り騒ぎの踊りやテンポの良い笑いで変える素晴らしさを見せられると思わず納得。
貴族出身の監督は喜劇しか作らない人で自身もアフリカ系の婚約者がいる。主演の夫婦クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビーともに喜劇畑のベテラン。美しい4姉妹、個性豊かな婿たちコートジボワールの両親など粒揃いの出演者が真面目に演じるほど面白いコメディに仕上がった。
続編も企画されるようなので、その頃の社会情勢を超越した普遍性のある傑作を期待したい。
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