・ 映画の教科書として燦然と輝くO・ウェルズの名作。
弱冠25歳で製作・監督・共同脚本・主演して<メディア王の生涯>を描いた名作。アメリカ映画史上最高作品と評価が高い本作。オスカー9部門ノミネートされながら脚本賞のみ受賞となった。
パンフォーカス、長回し、ローアングル、超クローズアップ、モンタージュ、クレーンショットなど当時の映画ファンを驚愕させた映像は、その後の作品に多大な影響を与え今でも映画の教科書的存在となっている。
しかし、CGなど技術革新が著しい現代、その驚きは少なくなってしまったのは否めない。
むしろ実在のメディア王・ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルとした主人公ケーンの描き方には不変の面白さがある。O・ウェルズとともに脚本を担当したハーマン・J・マンキーウッツの葛藤ぶりが映画化されるほど<Mank/マンク(20)>。
ケーンが豪邸サナドゥ城で小さなスノードームを手に、「バラのつぼみ」という言葉を残し孤独の生涯を終えたのは何故か?ニュース記者が関係者に取材を重ねながら謎解きをしていくストーリーは、時間軸の操作によって人物像を浮かび上がらせていく。
回想シーンを多用するこの演出法はクロサワの「羅生門」(50)など名作に受け継がれている。
少年時代スノー・ボードに描かれていたその言葉は、幼くして両親から引き離され英才教育を受けたケーンが唯一手にすることがなかった<愛情欲求への執心>だろうか?
今をときめくGAFAの創業者やメディア王マードック、大統領にまで上り詰めたトランプなど、<愛と権力への欲求>を追い求め続ける人物への興味は枚挙に暇がなく、映画化もされているが本作を越えるものでは無い。
アメリカン・ドリームを果たした実在人物を強烈に批判した本作がオスカー受賞を妨げ、興行的に失敗しても名作といわれる所以はここにあるのかもしれない。
O・ウェルズのその後は本作を凌ぐ名作も名演も果たせなかったが、映画史に燦然と輝く人であることは誰もが納得するところだろう。
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