間諜X27
1931年/アメリカ
スタンバーグがM・デートリッヒに惚れ込んで作ったスパイ映画
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 80点
グレタ・ガルボと並ぶ戦前の大女優・マレーネ・デートリッヒのハリウッド2作目はスパイ映画。デートリッヒを見出したジョセフ・フォン・スタンバーグ監督とのコンビ3作目でもある。
第一次世界大戦中のウィーン。雨の夜、娼婦がガス自殺をして運び出される。それを観ていた娼婦がストッキングを直す仕草をすると、刑事が「お前もああなるぞ」と声を掛ける。娼婦は「生きることも死ぬことも恐れないよ」と返す。ヤリトリを観ていた男が客となり間諜(スパイ)になれと誘う。
冒頭から100万ドルの美脚といわれたM・デートリッヒが娼婦で登場する。スタンバーグが彼女のために作った映画と言われるほどのヒロインは、元将校の未亡人で娼婦に身を落とし祖国オーストリアに命を捧げようとコードネームX27のスパイとなる。
身柄がスパイなのでさまざまな扮装で現れるデートリッヒが楽しめる。娼婦、女スパイ、仮装パーティ・ドレス、田舎娘、軍服、そして囚人服と、まさに七変化である。なかでも仮装パーティでは顔の大半を隠しながら口だけで内通者ヒンダウ大佐(ワーナー・オーランド)を誘惑したり、髪をアップにしてノーメイクの田舎娘のメイド姿でロシア陣内に潜入したりその変化ぶりが観客を魅了して止まない。娼婦なのに下品ではなく気品すら漂う男に媚びない女を演じ<金のためには国を売らなかったが、愛のためには国を裏切った>凛とした姿が印象的。
相手のロシアのクラノウ大佐役を演じたヴィクター・マクラレンは、4年後の「男の敵」でオスカーを獲得しているが、本作ではデートリッヒの引き立て役に徹している。むしろ銃殺隊の若い中尉を演じたバリー・ノートンが娼婦姿のX27に魅了され紳士的に振る舞い、「戦争は殺人だ!」と叫ぶ印象に残る役をしている。製作時を考えるとドイツの監督として欧州の窮状をこの一言に込めたのだろう。ヒトラー政権が誕生したのは公開後2年後を想うと感慨深い。
デートリッヒはピアノと黒ネコとタバコを随所に活かした愛に生きた女を好演している。「ドナウ川の漣」を叩きつけるようなピアノ演奏や「ウィンナ・ワルツ」「月光」などのクラシックが彼女の心情を見事に表現した愛のドラマを盛り上げている。
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