・激動の70年代、中国文芸工作団で青春時代を過ごした若者たちの近代史。
毛沢東時代の中国で、歌や踊りで兵士たちを慰労・鼓舞する歌劇団・文工団で過ごした若者たちを描いた青春群像。文工団に所属していた名匠フォン・シャオカン監督が同じく団員だったゲリン・ヤンの原作・脚本により念願の映画化。<4000万人が涙した>というキャッチフレーズのとおり本国で大ヒットした。
物語はゲリン・ヤンがモデルと思われるシャオ・スイツの追想による語りで進行していく。
1976年、17歳のホウ・シャオピン(ミャオ・ミャオ)が踊りの才能を見込まれ文工団に入団する。シャワーを毎日浴びることができる喜びを味わう貧しい家の可憐な少女は、先輩たちのイジメもアリながら親身になってくれる舞台制作係のリュウ・フォン(ホアン・シュアン)に密かに憧れていた。
毛沢東の死、文化革命の終焉という時代が大きく変わろうとする中、若い団員たちも多大な影響を被ることに・・・。
前半はシャオピンとフォンの愛の物語を軸に、踊りの花形スイツ、歌姫ディンディン、寮長で司会とアコーディオンのシューウェンの女性たち、それに幹部の息子でトランペットのツァンらの青春の日々が描かれる。
シャオカン監督は、リアル感を大切にしながら懐かしさと映画としての美しさを優先し、同時代を過ごした観客に郷愁を誘う作りに徹している。
筆者にはチャンツイイを彷彿させる三つ編みのシャオピン以外識別がつきにくい状態でありながら、どんな環境であっても若い頃はみな同じだなという気持ちで観ていた。
ところが、79年に起きた中越戦争となった途端、6分間ノーカットの戦闘や野戦病院の生々しいシーンとなり趣きが一変する。わずか一ヶ月の戦いは何故起きどのような結果だったかは描かれないのが残念だが、フォンとシャオピンが不幸な結果となることで、如何に理不尽な戦争だったかは充分伝わってくる。
解団公演で戦争の英雄となったシャオピンが月明かりで踊るシーンが秀逸だ。
その後<’91>青年期となったリウ・フォンとシューエン、スイツの再会で境遇の違いを知り涙を誘う再会があって、その4年後に本作のエンディングを迎える。
中国の名監督といえばチャン・イーモウだが、「戦場のレクイエム」(07)、「唐山大地震」(10)とヒット作を生んだシャオカン監督。
カットされたシーンもあったのでは?と思わせる制約の多いこの国で、もどかしいこともアリながら許される極限までの表現に挑戦したことで、中国映画史に残る監督として名を残すことになるだろう。