・ イランの名匠がスペイン田舎町で起きた誘拐事件を描いた人間ドラマ。
「別離」(11)、「セールスマン」(16)で米国アカデミー外国語映画賞を2度受賞したイランの名匠アスガー・ファルバルディ監督のオリジナル脚本による最新作。
スペインのマドリード郊外の田舎町で起きた16歳の少女誘拐事件をもとに、母親とその家族・友人たちを巡る人間模様を描いたサスペンス風ドラマ。
ファルディバル監督が15年前スペイン旅行したときにみた行方不明者の写真がヒントとなったという。
ペネロス・クルス、ハビエル・バルデムの共演によるオール・スペインロケをイラン人監督がどのように描いたか?
実の夫婦でもあるスペインのスターふたりが元恋人役で共演するだけでその関係がストーリーの中心となるのは想定通り。その分ミステリー要素ではマイナスとならざるを得ない。
冒頭、新聞の誘拐事件切り抜きのシーンで始まるが、明るい日射しのスペイン田舎町を走るラウラ一家の帰郷シーンとなり、登場人物紹介がお祭りムードのなか繰り広げられる。
お祝い騒ぎの最中、娘・イレーネが行方不明になる。
まもなく高額の身代金要求のメッセージがラウラの携帯に届き、誘拐と判明する。
どうして幼い息子ではなく、イレーネなのか?脅迫メッセージがラウラだけでなく幼馴染みのパコの妻ベアにも届いたのか?
極上のサスペンスものと思って期待して観たらどうやら犯人捜しのミステリーではなく、ムラ社会で起きる人間の影の部分をあぶり出す人間描写が見どころのようだ。
40代になっても美しいP・クルスがラウラに扮し、娘のためにナリフリ構わず奔走する熱演が目を惹くが、パコが知らなかった秘め事まで言うなんて・・・。
秘密を知らなかったのはパコ夫婦だけで、家族はもちろん村人たちは噂噺で周知の事実だったとは?!
パコに扮したJ・バルデス、妻ベアのバルバラ・レニー、ラウラの夫アレハンドロにリカルド・ダリンという豪華俳優を起用しているだけに脚本の破綻からリアリティに乏しいのが残念!
ファルディバル監督には、次回作に期待したい。