・ アメリカ的反戦と家族愛のヒューマン・ストーリー。
ジョン・フォードの助監督を務め後継者と言われたアンドリュー・V・マクラレン監督が南北戦争中・米国南部バージニア州を舞台に家族の絆を描いたヒューマンドラマ。主演は<アメリカの良心>ジェームズ・スチュアート。
広大な農場を経営しているアンダーソン家のチャーリーは妻に先立たれたが、6男1女と次男ジェームズの妻ジェニーが暮らす大家族。北軍が近くまで迫っていたが、戦争には関わらず頑なに中立を守り続けていた。
頑固な父とその子供たちの暮らしは絶対父権の大家族制そのもので、ユーモア溢れるホームドラマ調でスタートする。妻の遺言で行く礼拝は墓参りを兼ねていて、賛美歌も徴兵に加担する説教も無視する。
「マーサ、この戦争について私はよく知らない。どんな戦争だって勝つのは葬儀社だけだ・・・。」ジェームズ・リーバレットの脚本は反戦姿勢で語られていく。
中盤、末っ子のボーイが拾った南軍兵士の帽子をかぶっていたため北軍に捕らえられてしまうあたりから空気が一変しする。家族のためには武器を持って戦うという如何にもアメリカ的正義で、チャーリーは長男夫婦と初孫を残し息子たちとボーイ救出に向かう。南軍将校サムと結婚したばかりで男勝りの娘アンもついて行く。
アンに扮したのはこれがデビュー作となったキャサリン・ロスで、2年後の「卒業」「明日に向かって撃て!」(69)でニューシネマのヒロインとなっていく。
一家だけで捕虜輸送列車を襲って救われたのがサムだったり、長男ジェイコブを撃った16歳の南軍歩哨少年を赦したり、ボーイを救ったのは黒人の少年ガブリエルだったというご都合主義が気になってしまったのは筆者の言いがかりか?
留守中、略奪者に荒らされた農場やジェームズ夫妻が命を奪われ一家を戦争の悲劇が襲うなど終盤にかけて描かれたのは戦争の空しさが溢れ出ていた。救いは幼子アーサが無事だったこと。
19世紀初頭の民謡がもととなったテーマソングが流れ、予定調和ながら新しい時代の幕開けを感じさせるエピローグだった。