晴れ、ときどき映画三昧

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「刑事 マディガン」(68・米) 70点

2014-05-05 18:10:34 | 外国映画 1960~79

 ・ R・ウィドマーク×H・フォンダ×D・シードルのNY警察物語。

                    

 リチャード・ドハティの原作「ザ・コミッショナー」をもとに、アメリカン・ニューシネマ作家エイブラハム・ポロンスキーが脚色した警察官の生活風景が描かれた異色刑事アクション・ストーリー。監督は本作のあとC・イーストウッドと組んで、「マンハッタン無宿」(68)、「ダーティ・ハリー」(71)を監督したドン・シーゲル。

 NY、スパニッシュ・ハーレム地区の金曜日。事件の発端は犯人・ベネシュを捕まえ損ねた刑事・マディガンは一瞬のスキで拳銃を奪われる失態を犯してしまう。情婦のヌードに見惚れたというのが人間らしい。警察委員長のラッセルは、72時間の間に拳銃を取り戻すことで解決を図ろうとマディガンに厳命する。

 事件発生の金曜から3日間、マディガンとラッセルがどのように過ごしたかを追ったストーリーは、今まであった刑事アクションとはまるっきり趣きの違うテイストだ。

 監督・プロデューサーはタイトルを「金曜・土曜・日曜」にしたかったが会社の反対で実現しなかっただけあって、公私とも悩みを抱えながら過ごした2人の3日間が俯瞰的に描かれる。

 マディガンを演じたリチャード・ウィドマークは当時53歳。その個性的な風貌で、西部劇などで悪役もこなせる俳優として存在感を示していたが、そろそろ曲がり角の時期に差し掛かっていた。本作で新ジャンルを切り開くキッカケとなった。

 ラッセルを演じたのはヘンリー・フォンダ。原作は題名が示すようにラッセルが主役で、本作でも均等な扱いのため、その分散漫さは否めない。これは大物俳優を起用したことによる諸事情が窺えるが、単なる刑事アクションではないことの証明でもある。

 マディガンの悩みは、仕事一筋のあまり妻の不満を癒すことができないこと。安月給なのに家を空けることが多く夫婦生活も儘ならず、土曜の警察パーティにもダンス相手を同僚に託すほど。何げないシーンで長年の相棒ボナーロや情報屋など仕事仲間からの信頼も厚いのが分かる。

 ラッセルの悩みは部下で親友・ケインの汚職問題、黒人牧師からの苦情を抱え、私生活ではセレブな不倫相手との別れ話も。

 叩き上げのアイリッシュ刑事とエリート警察委員長という2人の違いを対照的に描き、地味ながら当時のNYの息遣いが聴こえてくるようだ。NYの夜景をバックにしたオープニングから、ブルックリン、コニーアイランド、イーストリバーなどの野外ロケを活かした名手ラッセル・メディの映像と、ドン・コスタの音楽が効果を高めている。

 どちらかというとB級映画監督として存在感を示していたD・シーゲルの転機となった作品で、R・ウィドマークがそのキャラクターを活かしてTVシリーズ「鬼刑事マディガン」で主演することでお茶の間に浸透することとなった作品でもある。