晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『十七人の忍者』 75点

2012-11-15 18:30:32 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

十七人の忍者

1963年/日本

地味ながらリアルな集団時代劇第1号

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★☆☆70点

リアルな時代劇小説の1人者・池宮彰一郎の脚本家時代のペンネーム・池上金男による集団時代劇。この年公開された「十三人の刺客」で確立した東映集団時代劇に先駆けて公開されている。監督は長谷川安人で映画作品は六本と少ないが、後にTV界に転じて「銭形平次」「大江戸捜査網」を始め多くの時代劇を手がけている。
将軍秀忠の死期が近づき家光の弟・忠長を担ぎ家督争いを企てた外様大名11名の連判状を、老中・阿部豊後守の命で奪取しようとする公儀お庭番・伊賀忍者の物語。
忍者ものでは前年大映・山本薩夫監督、市川雷蔵主演による「忍びの者」が先駆者だが東映はスター不在となり若手の里見浩太郎を起用したが、むしろベテランの大友柳太朗(伊賀三ノ組組頭・甚伍左)と近衛十四郎(才賀孫九郎)の対決をメインに<命より使命が大事>という忍者の宿命を描いている。大友も近衛も時代劇のスターらしい大見得を切るシーンがあるが却って全体の地味な展開とは違和感があるほど。若手の里見が先輩東千代之介を差し置いて主役になったのはモノガタリに必然性があったからでもあり、紅一点の三島ゆり子も同様。拷問シーンも今思うと可愛いもの。
彦根城を駿河城に見立てたモノクロ画面が引き立ち、荒唐無稽な映像は殆どないリアルさが当時は却って新鮮に映った。お堀から城壁をよじ登るサマはまるでロッククライミングのよう。
どんな役でもいつも悪役ばかりで子供の頃から名前を覚えていた薄田研二が老中阿部豊後守を演じ、後半決め台詞を言ったときは不思議な感慨にひたったのを懐かしく思い出させる。