晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『独立愚連隊』 70点

2012-11-10 16:18:30 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

独立愚連隊

1959年/日本

痛快ウェスタン風戦争アクション

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★☆☆70点

<TVでは絶対作れないものを>との企画で成立した岡本喜八監督が長年温めていた痛快ウェスタン風戦争アクション。特異な風貌で脇役に甘んじていた佐藤允とともに出世作となった。
公開時はドライでテンポの良い斬新さが話題となってヒットしたが、反面北支戦線での八路軍との派手な戦闘描写が、反中国・好戦的との批判もあった。いま改めて観ると、カラッと描いてはいるが、従軍慰安婦や馬賊の扱いなど微妙なテーマもあり、シニカルな眼差しと日本軍への郷愁がナイマゼとなって、岡本が狙ったという<戦争のバカバカしさ、虚しさ>より<無国籍娯楽アクション>の色合いが濃い。
最大の要因は主演の佐藤允が演じた野性味と人間味がミックスした新しいヒーロー像の存在だろう。のちに和製リチャード・ウィドマークともチャールズ・ブロンソンとも言われた佐藤允。小林旭・赤木圭一郎など無国籍映画シリーズと並んで従来とは違うヒーローが縦横無尽に活躍することで観客を異次元の世界へ誘ってくれる。
特筆ものは三船敏郎と鶴田浩二の役柄だろう。カタや世界のミフネの大スターが城壁から突き落とされ頭が可笑しくなった大隊長、カタや世紀の二枚目スターが怪しい日本語を使う馬賊の長という端役なのが驚きだ。二人とも監督とは下積み時代の知り合いで友情出演だが貴重な映像となった。
ほかにも雪村いづみが主人公を追ってきた慰安婦、「隠し砦の三悪人」でヒロインを演じた上原美佐が馬賊の妹役で彩りを添えている。
カウボーイハットこそ被っていないが馬にまたがり腰に拳銃をぶら下げた謎の従軍記者が独立90小哨を訪ねて始まるドラマは、ひとりの見習い士官の死を巡って規律正しい日本軍とはまるっきり違う人間模様が繰り広げられる。大隊長を追いやった藤岡中尉を演じた中丸忠雄、腹心の酒井曹長の南道郎が悪代官的敵役がハマり役。一筋縄では行かない哨長の石井軍曹を演じた中谷一郎がいい味を出していた。
日本軍・中国軍とも無差別で殺された兵隊たちへのメッセージがもっと伝われば評価は大分違ったものになっただろう。