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晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「オール・アバウト・マイ・マザー」(99・スペイン) 80点

2015-01-28 12:33:12 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・逞しい女性たちの人間賛歌。

  
 
 スペインの奇才ペドロ・アルモドバル監督・脚本で、カンヌ国際映画祭・監督賞、米アカデミー・外国映画賞を受賞した。
 
 ゲイの夫と別れひとり息子を失ったマヌエラ(セシリア・ロス)を中心に、マヌエラの夫の子を妊娠したシスター・ロサ(ペネロペ・クロス)、薬物中毒の若手女優なしでは生きて行けない大女優マリサ・パレデス(ウマ・ロッホ)の3人による必死で逞しい生きザマを描いている。
 
 「欲望という名の電車」の映画・劇が巧く絡んでいて、登場人物が性倒錯・薬物依存など異常な世界に身を置くだけに、真実の愛を観て欲しいという暗示なのだろう。

 その代弁者が、顔と胸を手術して街娼で稼ぐアントニア・サン・ファン演じるアグラードで、主役たちを完全に喰ってしまう。

 ひとり息子を亡くしたマヌエラがロサの息子を育て、エイズ感染の危機から免れそうなのが救いで、観ていてほっとさせられた。

 

「ラルジャン」(83・フランス・スイス) 85点

2015-01-22 13:38:46 | (欧州・アジア他)1980~99 
・リアリズムの巨匠・ブレッソンが描いた遺作は<究極の虚無感>。

  トルストイの原作「にせ利札」をもとに、リアリズムの巨匠にして孤高の映画作家、ロベール・ブレッソンの脚本・監督によって製作された本作は彼の遺作となった。

 少年が作った500フランの偽札が写真店で使われ、店の主が悔しさのあまり警察へ届けないで燃料集金の従業員イヴォンに支払われる。イヴォンは気付かず食堂で支払いに使おうとしたらアルジに偽札だと言われ警察に突き出されてしまう。裁判では写真店員の偽証によって有罪となってからは冤罪を晴らすどころか負の連鎖はイヴォンをドン底まで突き落としてしまう。微罪で出所直後の仕事は気付いたら銀行強盗の見張り役をさせられていた。刑務所では娘の死を知らされ、妻宛ての手紙は宛先人不明で戻ってきてしまう。さらに...。

 文字にしてしまうとそんな馬鹿な!と思うが、ブレッソンの画像は冷徹に普通の人がどん底まで転落することが何ら不自然ではないようにカットの積み重ねで進んで行く。観客は主人公が落ちて行くさまを見せられながら、何処かでキッカケを掴んで救いや希望を見出すだろうと言う想いで見続けることになる。

 そしてそれは終盤に老婦人の後をつけ、郊外の家で果されようとしていた。その前に彼はモーテルの夫婦を殺害していたにもかかわらず食事を与え<私が神ならあなたを赦す>と言ってくれた天使のようなヒトだった。

 ブレッソンは例によって映画にダイナズムを一切排除してしまう。出演者を俳優とは呼ばずモデルといい、感情表現を一切させない。台詞は最小限で音楽は殆ど使わない。唯一流れたのが老婦人の父・ピアノ教師?が弾いたJ・S・バッハの「半音階的幻想曲とフーガニ短調」のみ。そのかわり足音・車の音・紙幣の擦れる音、スプーンの落ちる音、扉の開閉など音声はドラマに欠かせないものとして緻密に表現されているし、手・足・ドアなどのアップによって物事が進んでいる。

簡潔さの極みで、たった85分の映画なのに目が釘付けになったまま最後まで緊張感が続いて、観終わって虚無感が一杯となった。こんな映画は初めてで、べレッソンは何を言いたいのだろうか?としばらく反芻してみたが良く分からない。本人は「彼らは空虚を見つめているのです。そこにはなにもありません。善は去ってしまったのです。」というコメントを述べてる。

 現代社会では、トキドキ大人しくて目立たないヒトが社会を震撼させる無差別殺人を起こして、社会心理学者がもっともらしいコメントをしているニュースにお目に掛かることがある。べレッソンはそれを現実のものとして例示して見せたのかもしれない。独自のスタイルを頑なに守り続けた彼の遺作は、いつまでも心に残って離れようとしない。

 
 




「海の上のピアニスト」(98・伊 米) 80点

2014-08-22 17:24:14 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ 抒情的で哲学的なトルナトーレの大人向けファンタジー。

                    

 「ニュー・シネマ・パラダイス」(89)でイタリアを代表する監督となったジュゼッペ・トルナトーレ。舞台化もされているアレッサンドロ・バリッコの幻想小説を独自のアレンジで映像化した、抒情的かつ哲学的大人向けファンタジー。

 1946年豪華客船ヴァージニア号の楽団員として働いたトランペッターが語ったのは、生まれて一度も船から降りたことのない伝説のピアニストの物語だった。

 1900年に生まれた男の子はヴァージニア号の大宴会場のピアノの上で黒人機関士ダニーに発見され、通称1900として育てられた。不慮の事故でダニーが亡くなったあとも船で暮らすうち、天性の感性でピアノ弾きとしてその名を知られるようになって行く。

 実際あり得ないような男の寓話の映画化に食指が動かなかった筆者だが、トルネトーレの近作は幾つか観ていて今回漸く観る機会があった。

 イタリア語版は160分あるそうで彼の趣旨が充分伝わるのだろうが、残念ながら日本では観る機会がない。ハリウッド版の本編でも、イタリアの香りが充満して雰囲気は満喫できた。

 豪華客船による船旅は上流観光客から貧しい移民まであらゆる層の人間が、限られた時間・空間で混在する特殊社会を形成している。ここにはサマザマなドラマが誕生してもおかしくない。同じような作品に大ヒット作「タイタニック」(97)があった。SFXを駆使したパニック映画はアイルランドの画家志望の青年と上流社会の女性との純愛ドラマで、多くの人の感涙を誘っている。

 本作は背景が似ているが、SFXやパニックものとは違う世界を描いていて、感涙を誘う暇もなく人間の在り方をズバリ衝いてきて、何ともいえない感銘を受けた。やはりトルナトーレはどの作品でもシチリア人で、巨匠エンニオ・モリコーネの音楽が陰に陽に絡まって物語に深みを増している。

 筆者はいつの間にか主人公が実在の人物のように思えてしまって、ジャズの創始者と自称するモートンとのピアノ競演に力が入ったり、船内で見かけた美しい少女とのプラトニックな恋の実現を応援したりする自分がいた。ペーソス溢れるエピソードは、オペラ的雰囲気も感じる。

 主人公を演じたティム・ロスは、繊細な天才ピアニストをしなやかな指と感情こまやかな表情で演じ切り、彼の代表作となった。

 語り部でもあり、親友のマックス役のプルイット・テイラー・ヴィンスがはまり役で、「ニュー・シネマ・パラダイス」のアルフレード役のフィリップ・ノワレなどトルナトーレはこうした脇役を起用するのがとても巧みだ。

 <いい物語があってそれを語る人がいる限り、人生捨てたもんじゃない>という言葉は彼の映画作りの原点なのかもしれない。

「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(85・スウェーデン) 80点

2014-07-14 17:07:40 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ L・ハルストレム監督が、ハリウッド進出のキッカケとなった作品。


                    

 50年代後半、自国で開かれたワールドカップに湧くスウェーデンを舞台に、12歳の少年が日々の暮らしの中から成長して行く姿をみずみしく描いたヒューマンドラマ。83年出版のレイダル・イェソンの原作を、ラッセ・ハルストレム監督が映画化。彼がハリウッド進出のキッカケとなった作品でもある。

 海辺の町に住むイングマルは、兄エリクと結核の母、そして愛犬シッカンと暮らしている。父は南氷洋へ行ったまま帰ってこないので、母の病状悪化とともに田舎の叔父の家にひとり預けられる。

 12歳にしては幼く、兄弟ゲンカやドジをしたりして大好きな母をいらいらさせ叱られている。やがて母の病状悪化とともにひと夏だけ愛犬とも別れることになり、自分より不幸なことを探しては<僕はOOよりは恵まれている>と心の中で慰めている。繰り返し思うのは<宇宙船スプートニクに乗せられ死んでしまったライカ犬>。

 90年代「ギルバート・グレイプ」(93)、「サイダーハウス・ルール」(99)、2000年代「ショコラ」(00)、「シッピング・ニュース」(01)など、コンスタントに良作を送り続けてきたハルストレム監督。その原点が本作で<子供と動物がテーマ>なのは、まさにストライクゾーン。

 都会の伯父さん夫婦とは違って、田舎のガラス工場に勤めている叔父さんはとても温かく迎えてくれる。そこでひと夏を過ごすイングマルがとても微笑ましく、本人が思うほど不幸ではなく見えるのは大人目線での解釈か?

 叔父さんはガラス工場の社宅に住んでいるが、許可なく東屋を建ててマイルームを謳歌している。ゴンドラ宇宙船を作って子供たちを楽しませる人、一年中屋根を修理している人、ちょっとエッチな芸術家、曲芸を披露する男、女性下着のカタログを読んで喜ぶ老人、真冬の湖に飛び込む男・・・。可笑しな
大人たちがいるが、子供の世界には適度な距離感があった。これはちょっと年上だが同世代の筆者が育った少年時代の境遇と共通している。

 サッカーやボクシングをして遊ぶ子供たち。なかでもサガという少女とはヒトキワ仲良くなる。12歳にしては幼いイングマル。少女は男の子たちと一緒に遊んでいても異性を意識し始めた微妙な時期。胸の膨らみを隠すためバンテージを巻くのを手伝うイングマルに、男と女の成長期のズレを感じてしまう。

 こんな素敵な想い出はなくても、甘酸っぱい経験は誰にでもあること。ハルストレムは自身の少年時代を再現するようにひとつひとつのエピソードを重ね、出逢いと別れを通して少年を少しづつ人生の目覚めに遭遇させて行く。

 これが唯一の作品となったオーディションで選ばれたイングマル役のアントン・グランセリウスは泣きべそ顔が気に入られたとか。美少女サガを演じたメリンダ・キンナマンは女優となったと聞くが、筆者は未見。おそらくこれが代表作だろう。

 2度目に戻ったとき、もうサガとはボクシングもサッカーもできなくなったイングマル。それでもスカートを穿いたサガとはゴンドラには乗ることができ、屋根を修理している村のヒトは相変わらずツチ音を響かせている。

 ギリシャ人の家族が同居して手狭になった叔父さんの家では、ラジオでヘビー級世界チャンピオン・パターソンを破ったヨハンソンの英雄復活を流していた頃でもあった。

 筆者は栃錦VS若乃花や長嶋VS金田の対決を、ラジオで聞いていた頃と重なる。まるで自分がイングマルだったように微笑ましく、懐かしい作品だった。        

「エリザベス」(98・英) 80点

2014-02-03 16:57:53 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ K・ブランシェットが主演女優への道を拓いた作品。

 インド出身のシェカール・カブール監督が、オーストラリア出身のケイト・ブランシェット主演によるエリザベス一世の前半生を描いた歴史ドラマ。

 史実とは違う部分も当然みられるものの、NHK大河ドラマほどではなく?許容範囲。K・ブランシェットの出世作だろう。

 同年上映され、米国アカデミー賞受賞作品のグウィネス・パルトロウ主演「恋に落ちたシェイクスピア」に隠れ目立たなかったが、英国アカデミー賞受賞作品だけあって甲乙つけがたい。

 1558年女王即位まで命の危機に遭遇しながら自らの英知で切り抜け、イングランドを統一するまでのストーリー。ダドリー伯(ジョセフ。ファインズ)との愛を断ち切り、結婚しなかったひとりの女性の成長物語として楽しめた。

 ジェフリー・ラッシュ、リチャード・アッテンボローなどのベテランに加えヴァンサン・カッセル、ダニエル・グレイグの若手まで、厚みのある共演陣が見せ場を作ってくれたのも歴史ドラマとして相応しい。

「さらば、わが愛 覇王別姫」(93・香港) 80点

2014-01-19 12:02:00 | (欧州・アジア他)1980~99 
 ・ 時代に翻弄された京劇スターの愛憎劇。

 チェン・カイコー監督が京劇をテーマに中国の変遷とともに翻弄された50年の愛憎劇を見事に描御き、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。

 清朝末期、娼婦の息子9歳の少年が京劇の育成所へ入れられ、のちに女形のスターとなった蝶衣(レスリー・チャン)と兄と慕う段小(チャン・フォンイー)との50年の愛憎劇はまさに壮絶としか言いようがない。

 主演のL・チャンは自身の生い立ちとも重なる命懸けの名演。惜しい俳優を若くして無くしてしまった。2人に絡む菊仙役のコン・リーは、段小を一途に愛し哀愁漂う表情と、全てを捧げる強さを併せ持つヒロインを演じ、中国女優のトップへ名乗りを挙げた。

 172分は映画としては長いが、中国の歴史背景を描くにはこれでも短いと思えるほど。’37の盧溝橋事件から40年代の日本統治時代。’49国民党政権、’66文化大革命、そして11年振りに共演する「覇王別姫」にドラマが込められ、項羽に対する盧美人の深い愛が心に沁み入ってくる。

 この映画で、当時の日本軍が京劇を最も理解していたと蝶衣に云わせたのも、C・カイコーが文化大革命を体験したひとりであったからだろう。政治と芸術・スポーツの密接な関係が、この映画を壮大なラブストーリーの裏に時代に翻弄される人々の姿が描かれ味わい深い。

「イルポスティーノ」(94・伊) 75点

2013-12-06 16:36:44 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・純粋な人生賛歌を、映像美で描く。

     
 漁師の跡継ぎマリオ(マッシモ・トロイージ)は、漁師が苦手で郵便局員募集の貼り紙を見て応募する。それはチリからイタリアに亡命した詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)のためだけに配達する仕事だった。

 ネルーダは実在の詩人だが映画はフィクションで、美しい南イタリアの風景とともに、貧しいなかにあっても純粋な島の人々の暮らしと、突然現れた偉大な詩人に影響されたマリオという青年の人生賛歌を描いている。

 監督はマイケル・ラフォードで、英国アカデミー賞外国語映画賞、米国アカデミー賞オリジナル作曲賞受賞作品である。

 マリオは、詩人は女にもてるという単純な?動機で興味を持つうち、ネルーダへの一途な尊敬へと傾注して行くさまがユーモラスでもある。それはネルーダがノーベル賞候補である偉大な詩人であることより、詩に対する興味がキッカケ。食堂の娘ベトリーチェ(マリア・グラッツィア・クチノッタ)に一目惚れしてネルーダの詩をラブレターにしてしまう。「詩は作った人のものではなく、それを必要とする者のためにある」という台詞が意味深い。

 ネルーダは、亡命中の孤独を癒す程度の相手だったに違いないが、マリオにとって人生観を変える出会いとなったところが哀しさを増長させる。マリオを演じたM・トロイージは心臓を患っていて、この撮影も1日2時間を限度にして撮り終えた。その直後に亡くなってしまったので、主人公とオーバーラップしてしまう。

 フィリップ・ノワレは代表作「ニュー・シネマ・パラダイス」を始めイタリア映画には欠かせない名優だが、ここでも存在感抜群だ。

 急転直下のエンディングに、少し肩すかしの感は拭えないが、これがこの映画の余韻なのだろう。昨今のオーバーな表現がないのも好感が持て、善きイタリア映画を堪能できた印象。

 現在、ロケ地のサリーナ島ポラーラ・ビーチが荒らされてしまい、白い小石と砂浜が危機に曝されているのを訊くと胸が痛む。


「ラン・ローラ・ラン」(98・ドイツ) 80点

2013-11-27 05:33:36 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・  才気あふれるトム・ティクヴァ。

     
 ローラ(フランカ・ポテンテ)は、恋人マニ(モーリッソ・ブライブトロイ)の電話で、20分以内に10万マルクを用意しないと命がないといわれ、パパのいる銀行へ一目散で走って行く。

 トム・ティクヴァ監督・脚本によるコミック風ラブ・ストーリー。

 3パターンのストーリーがあって、2人の運命が変わってしまう。この手のプロットは邦画では「羅生門」が有名で、洋画では「スライディング・ドア」があるが、本作は理屈なく楽しめる。

 アニメと実写、コマ落としや早送りなど、映像の斬新さとジャーマン・テクノ音楽に、才気あふれるT・ティクヴァを感じる。のちの「へヴン」「パヒューム」の何れとも違う作風だが、原点はここにある。

「プレイス・イン・ザ・ハート」(84・米) 85点

2013-11-10 08:03:47 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ 人間愛に満ちたドラマで、心温まるエンディング。

    
 ロバート・ベントン監督・脚本による’30年代テキサスで家族の絆を守るため献身的に闘う女の人間愛に満ちたドラマ。

 保安官の夫が突然不慮の死で妻・エドナ(サニー・フィールド)は、2人の子供と家を守るため物乞いに現れたモーゼス(ダニー・クローバー)のアドバイスで、綿畑開墾を決意して雇い入れる。姉マーガレット(リンゼイ・クローズ)も心配するが、資金援助は儘ならない。盲目の下宿人ウィル(ジョン・マルコヴィッチ)の家賃では莫大な借金は返せそうもない。数か月後の返済額240ドルは綿花を一番に出荷させる以外に方法はなかった。

 この時代のアメリカ南部社会は人種差別・男女の差がハッキリしていて、白人未亡人が女手ひとつで農場経営することはタブーだったに違いない。エドナが崖っぷちで無謀とも言える選択をしたのは、夫への想い・家族との絆があったから。頑なな下宿人ウィルの心も啓いてくる。

 そして人間ではどうしようもない大自然の脅威・竜巻をも、却って絆を深めたり夫婦愛を気付かせたりする。一見無駄なストーリー、姉の夫・ウェイン(エド・ハリス)と女教師ビオラ(エイミー・マディガン)の不倫も意味をもってくる。

 これが映画初出演のJ・マルコヴィッチや達者な脇役陣に囲まれながら堂々主役をこなしたS・フィールドが2度目のオスカーを受賞。併せてR・ベントンは脚本賞を獲得している。

 心温まるエンディングが、このドラマの全てを語っている秀作だ。

「Queen Victria 至上の恋」 (97・英) 80点

2013-10-25 07:46:31 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ 名優ジュディ・デンチの代表作

    
 ジョン・マッデン監督、ジェレミー・ブロック脚本によるヴィクトリア女王の秘めた恋物語を、ジュディ・デンチ主演で映画化。

 19世紀大英帝国全盛時代、ヴィクトリア女王(J・デンチ)は、最愛の夫・アルパート公を腸チフスで亡くし、3年経っても喪に服したまま公務に復帰しない。見かねた王室は、ジョン・ブラウン(ビリー・コリノー)をハイランドから呼び世話係とする。礼儀を知らない彼は純朴な敬意を女王に捧げるうち、2人の関係は親愛から友情、そして愛情へと変わって行く。100年経っても、英国王室はそれ程違いが見られないのも興味深い。

 J・ジュンチは、気品ある物腰・態度と高貴なるが故の気まぐれが孤独感を増して行く女王を見事に表現していて、彼女の代表作といえる。翌年製作された「恋に落ちたシェイクスピア」でのエリザベス一世など、女王役はハマり役となっている。

 近作「クイーン」でエリザベス女王を演じオスカーを獲得したヘレン・ミレンと比較しても、演技力では微妙な心の変化を演じ切ったJ・デンチの素晴らしさが分かる。