遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

いないも同然だった男

2015年12月27日 12時22分59秒 | 読書

      いないも同然だった男    パトリス・ルコント(著)2015年7月発行

    『髪結いの亭主』などの作品で有名なフランスの映画監督が書いた小説。
    ドーバー海峡を一人で泳いで渡る話、と聞いて読み始めたものの、
    それは小説のテーマに占める割合は、さほどでもなく、チョッと落胆。

    子供の頃から家族と居ても、大人になって職場(パリの銀行勤務)においても、
    存在が認められず、あたかも居ないかのような扱いを受け続ける男の日々が
    淡々と語られていく、いかにもフランス小説らしい語り口。 

    日々、まるでそこに存在していないかのような扱いを受け、
    それを自然なこと仕方ないこととして受け入れて暮らす男が、
    職場で好意を抱く女性に「自分の存在に気付き、振り向いて欲しい」
    そして「出来る事なら自分の気持ちを受け入れて欲しい」と一念発起。
    唐突に、ドーバー海峡を一人で泳ぎきることができたら彼女に気付いてもらえる
    のではないか・・・と、妄想を逞しくする。
    巨大なフィンとウエットスーツ、食料を入れたリュックを背負い、
    ある日、ついに無謀にも、イギリスの海岸から海峡横断泳を開始。
    まあ、満足なトレーニングも準備もしていないまま実行しているので、
    結果は推して知るべし。
    そこが、私が想像していたドーバー海峡横断泳話とは全く違っていて
    期待はずれだった、というだけで、小説の意図はそこにはないので止むなし。

    切実で身の危険を思わせるシーンもありつつ、
    ラストが悲劇で終わらない、ってところが昔のフランス映画と違うかな。
    それでも、やはりフランスっぽい空気感あふれる小説でした。


       わがまま母
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