天国でまた会おう ピエール・ルメートル(著)2015年10月発行
上巻・・・
第一次世界大戦の終戦直前、混乱の戦場でプラデル大尉の野望の犠牲となった
兵士たち、悲惨な形で命を繋いだ二人の男が、辛うじてパリの片隅で生き延び
ていくこととなる。が、砲弾を受け身体が不自由になり異様な面相となっても
手術を拒否したエドウアールは、激痛を逃れようと常時モルヒネを欲するようになり、
彼を命の恩人と思うが故に、クスリを調達し生活を支えようとするアルベールは
身を粉にして働くも、まともな職につくことも敵わず、その生活は行き詰まっていく。
一方、兵士を犠牲にしても野望を抱き終戦を迎えたプラデル大尉は
終戦直後の混乱を上手く利用し、パリで実業家としてのしあがろうと画策しつづけ、
成功を治めたかにみえたが、、、
下巻・・・
実業家となり戦没者追悼墓地建設などで暴利を貪り、
その儲けで没落した実家の敷地邸宅を復興させようと強引な計略を進めて
行くが、その先には、、、
他方、働けども困窮を極め、進退窮まる元兵士の二人。
その時、アルベールに、エドウア-ルは自分の美術の才能を使い
国民の戦没者慰霊の気持ちと社会的混乱を利用した詐欺の計画を提案する。
その途方もない詐欺計画が、国をゆるがす前代未聞の大スキャンダルに。
とにかく面白い小説!
『その女 アレックス』のスリル、面白さとは、また異なる魅力が満載。
大戦直後の時代背景、社会状況、事実、事件が綿密に調べられている上に、
登場人物は、「プラデル」「アルベール」「エドウアール」の三人の主人公の他
彼らに関わる人物全てがそれぞれに素晴らしく個性的で、彼らがまるでそこに
生きているように見えて来るような描かれ方も大きな魅力。
理不尽で不公平な世の中に一石を投じようとする詐欺事件を心の隅のどこかで
応援したくなっていたり、、、
悪徳商人や無能無策な役人の鼻を明かす痛快さ、、、
それは、勿論、人々の善意を踏みにじる悪いこと、罪ではあるのですが、
そんな心理が湧いて来るのが否めないのも事実。
小説としての完成度が高く、読み応え満点。一気読みでした。
フランスの文学賞「ゴンクール賞」を受賞しています。
わがまま母