せき越えぬ 西條奈加(著)2019年11月発行
とても清々しく心地よい読後感。
天下の剣と言われる箱根の関所を舞台に、小田原藩の下級武士武藤家家督
武藤一之介、通称「武一」を主人公とし、関所番士の仕事内容、生活を描き
つつ、武一と「騎一」との深い友情、武一が淡い恋心を抱く「理世」の過去、
父親の深慮について、同僚たちとの関わり、など興味深く面白く話が進む。
『せき越えぬ』から始まり六編からなる連作で、いずれも面白く、終盤には
頁をめくる速度が早くなるような思いがけない展開も。
武一は、考えるより先に行動してしまう粗忽者な反面、正義感が強く正直。
信じたことは迷わず進む行動力が魅力。
一方、友の「騎一」はそんな武一を思慮深く支え、二人の友情の絆の強さが
さりげなく描かれ、なんとも気持ちよい。
スピード感溢れる展開で、意外な終盤を迎えるのだが、もしかして続編も?
と期待してしまう。
わがまま母