遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

日本人の恋びと

2018年06月17日 11時45分23秒 | 読書

   日本人の恋びと   イザベル・アジェンデ(著)2018年2月発行

   
  アメリカ西岸バークリーにある老人施設『ラークハウス』に住む
  謎めいた老女「アルマ・ベラスコ」の人生を軸とした物語。
  彼女の生き方に興味を抱いたモラビア出身の介護士「イリーナ」と、
  アルマの孫「セツ」によって、アルマの生きた時代背景や、
  ポーランドとアメリカの家族の歴史を辿りつつ、
  残された手紙や写真により謎が紐解かれていく。

  「アルマ」はポーランド生まれのユダヤ人。
  ナチの迫害を逃れるため、父母の計らいで幼少期に両親や兄弟と別れ
  叔母の住むアメリカに一人送られ、ユダヤ系アメリカ人として成功し
  裕福な家庭を営んでいた優しい叔父(叔母の夫)に可愛がられ、
  守られながら、従兄弟たちと共に成長していく。
  温厚な叔父の唯一の趣味が庭園の創作で、
  仕事と家族を大切にする以外の時間を、自宅の庭園造りに情熱を傾けていた。
  そんな叔父の信頼を得て庭の管理を任されていた日本人の親子が
  移民一世の「タカオ・フクダ」と彼の息子「イチメイ」だった。

  「アルマ」は、アメリカ社会や叔母家族に上手く馴染むことができず、
  部屋にこもりがちで孤独な子供時代を過ごしていたが、
  庭で父を手伝い作業する「イチメイ」と出会い、不思議と心が通じた。

  祖国を逃れたユダヤ人「アルマ」と、日系移民の子「イチメイ」の
  運命的な出会いだった。が、
  大人になりかけたばかりの若い二人が心を通わせ始めた矢先、
  アメリカ西海岸にも戦争という現実が迫ってくる。
  日本の真珠湾攻撃により、日系移民たちは迫害を受け、財産を没収され
  遠く荒れ果てた土地にある収容所に隔離されることになり、
  フクダ一家も辺境の砂漠で過酷な状況に追いやられ、
  ついには連絡不能となってしまう。

  「イチメイ」に恋した過去を秘めながらも、
  いとこ「ナタニエル」と結婚し息子をもうけ、
  「セツ」という孫もいる恵まれた環境にある老女「アルマ」。
  不自由なく淡々と自分流を貫きながらラークハウスで暮らす彼女の前に
  ある時、世話係として若いが様々な苦い人生経験を持つ「イリーナ」が現れる。
  「アルマ」も「イリーナ」の人間性を気に入り、孫の「セツ」とともに
  「ベラスコ家」の歴史を編む許可を与えたことから、
  「アルマ」の秘めた恋の謎とともにベラスコ家の人々のストーリーも
  徐々に明らかになっていく。

  生涯の愛・・・どんな状況にあっても一生をつらぬく愛というものがある。

  読み終えれば、謎めいたアルマの人生、魅力的な独自の生き方に納得がいく。
  が、最終章での想定外の人物の告白には驚かされ、
  少々ショックでドラマティックながら、知ることで、再び納得。
  
  著者の作品は初めてを読んだのだが素晴らしく、感動。
  優れた翻訳のおかげだろうが、もっと読んでみたいと思った。
  
  訳者はあとがきで、
  _
  現代版『嵐が丘』ともいえる本書は、アルマ・ベラスコとイチメイ・フクダの悲恋を
  主軸に「老いと愛」のテーマに踏み込んだ珠玉の作。著者イザベル・アジェンデは
  72歳の時に、この小説を上梓した。
  _
  とし、
  _
  真珠湾奇襲を発端とする太平洋戦争の幕開けと、日系米国人の苦難の歴史、
  ナチス・ドイツによるホロコースト・・・21世紀の高齢化社会の縮図ともいえる
  ラークハウスの背景には、作中人物の人生を翻弄する激動の20世紀という時代が
  存在した。人種や境遇、性別を超えた様々な愛はアジェンデ作品の中心テーマだが
  そこに「老いと愛」の現実を重ねたところに、普遍性と現代性をあわせもつ
  比類ないこの小説が誕生した。
  _
  と解説している。
  
  因みに、著者は1942年、ペルー生まれのチリの作家。
  ジャーナリストとして活躍中の73年、叔父のアジェンデ大統領が軍事クーデターで
  暗殺される。著者も迫害にあいながら『精霊たちの家』を執筆し、絶大な反響を呼ぶ。
  
  
  わがまま母
  
  
  
コメント
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