ブログ 「ごまめの歯軋り」

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熊倉正修 著 「日本のマクロ経済政策」

2021年06月22日 | 書評
京都市左京区北白川 「金福寺」

熊倉正修 著 「日本のマクロ経済政策」 

岩波新書(2019年6月)(その14)

第4章 財政政策―経済成長は財政再建の必要条件か

4) 国民を欺く政府
安倍首相が2015年になって「2020年ごろには名目GDP600兆円を達成する」という景気の良い話を打ち上げた。むろん東京オリンピックへ向けた景気浮揚花火であるが、およそ実感のない国民を欺く発言である。その場を欺けば国民の目を政治から経済へシフトさせる意図が込められていたのであろう。この20年間にほとんど増加して来なかったGDPは当時500兆円ほどで、5年間で2割増加の600兆円にするということである。名目3%のGDPの成長率で推移すると2020年には600兆円を超える計算になる。それは既存の目標(く名目GDP3%、実質GDP2%) の言いかえにすぎず、達成できなければ政府の責任が問われる筋合いのものである。これに2015年に国民所得統計の改定が予定されており、2015年の500兆円のGDPは翌年から533兆円と換算される予定であった。何もしなくても約6.4%の名目GDPが増加する勘定となる。その分債務残高/GDP比は2%も低下し、2017年度に消費税8%に増税すれば名目GDPが0.4%増加することも計算済みである。

(つづく)