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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

他の地域でやめようとする教育改革をスタートするのが大阪

2012-04-01 12:58:55 | ニュース

いよいよ今日から2012年度がスタート。先日、あれだけいろんな人々が反対、抗議の声をあげるなか、大阪府議会で可決成立した教育行政・府立学校・職員の3つの基本条例も、いよいよ今日からスタートすることになります。

大阪維新の会の市議団の「ねつ造」リスト問題の陰に隠れていますが、大阪市や堺市を除く府内の全域で、まずは今日から(日曜日なので実質的にはあすから)、主に府立学校を中心にこの3つの基本条例に沿った動きが、いよいよ本格的に動くことになります。また、府内の各市町村教委、市町村立学校についても、この3つの基本条例にかかわる部分が徐々に動き始めることになります。そのことをあらためて、いま、ここで確認しておく必要があります。

と同時に、大阪市ではこの3つの基本条例によくにた「教育行政基本条例案」「学校活性化条例案」の2本が市議会に提案され、継続審議の状態にあります。その条例案の中身については、下記のブログで見ることができます。

http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/4181172.html

さて、橋下市長は「学校選択制の導入」を大阪市において行うと言ってきましたし、この間、各区単位で学校選択制と中学校給食導入に関する公聴会(教育フォーラム)をはじめています。ですが、その学校選択制、すでに導入したほかの自治体のなかからは、以下のとおり、やめようとするところがあらわれています。

http://www.asahi.com/national/update/0331/OSK201203310060.html (杉並区、学校選択制廃止へ「教育内容で選ばれず」:朝日新聞デジタル配信記事2012年3月31日づけ)

また、杉並区以外にも、群馬県の前橋市や長崎市なども、次の記事のとおり、学校選択制の廃止を決めています。

http://osakanet.web.fc2.com/kiji01.html

学校選択制を日本の各自治体で導入するとどんな結果が生じるかは、導入を推進する側の「よさ・メリット」の強調の一方で、たとえば嶺井正也さんや佐貫浩さんなど、すでに教育政策の研究者たちが各自治体の動向などをていねいに検証しています。その検証の結果、選ばれる学校・選ばれない学校の差がはっきり出ること等、そのデメリットもはっきりと出てきています。(嶺井さん・佐貫さんの学校選択制関連の文献を名前だけ、紹介しておきます。)

佐貫浩『品川の学校で何が起こっているのか 学校選択制・小中一貫校・教育改革フロンティアの実像』花伝社、2010年。

嶺井正也(編著)『転換点に来た学校選択制』八月書館、2010年。

嶺井正也・中川登志男『学校選択と教育バウチャー』八月書館、2007年。

嶺井正也・中川登志男『選ばれる学校・選ばれない学校』八月書館、2005年。

このような研究動向、あるいは他の地域での動向を見れば、いまさら学校選択制を導入しても大阪であまりいい結果は出ないことはわかるはずです。

同じ日本国内の他の地域やもうやめようとしている教育改革を、大阪において、これから準備して実施することに、いったい、どんな意味があるのか。すぐにでも中止、撤回の方向に舵を切るべきではないのでしょうか。

ただ、「ねつ造」リスト問題への対応に見られるように、自らの失敗に対して謝ることも、従来の方針を軌道修正することもできないのが、橋下市長や大阪維新の会の今の姿のようです。こういう危ない人たちを、このままそのポストに置いていていいのか。もしも今後、彼らが任期切れまで居るとしたら、彼らの打ちだしてくる子ども施策や教育改革の諸提案について、それが本当に子どもにとって利益にならないと思うのであれば、徹底的に批判していくしか道はないのではないか。このごろ、あらためてそう思います。

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