できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

正直、最近疑問に感じていること(1)

2007-09-11 10:43:17 | 学問

今日はいつもと少しトーンを変えて、率直にこのところ、疑問に感じていることを書きます。少々、私の「仲間」とも言える人たちに対して「苦言」とでもいうような内容になりますが、でも、「このままで本当にいいのか?」と思うことなので、あえて書いておきます。

まず、今日、大学に出勤したら、「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウムの今年度分の案内が届きました。このシンポジウムの呼びかけ文や案内を毎年送ってくださるのは、何年か前に私のゼミ学生に呼びかけ、何人か参加したこともあって、たぶん、そのせいかと思っています。そして、このシンポジウムでは毎年、子どもの権利条約などの理念をふまえつつ、何か新しい子ども施策をやってみようと思う自治体関係者からの報告や、それに向けて積極的にアプローチをしようという市民・研究者からの発言などがあります。

もちろん、各地方自治体で子ども施策、特に子どもの権利擁護関係の施策や子育て支援関係の施策が新たに実施されたり、それに向けて行政と市民、研究者の意見交換が積極的に行われること自体は、私としては大歓迎です。それこそ、他の用事などがなければ、積極的にこのイベントに毎年、自分が参加したいくらいです。それこそ、このイベントに招かれたり、そこで司会や発表者として名前の挙がってる人のなかには、私の知り合いも何人か含まれていますしね。

ですが、こういう子どもの権利擁護関係、子育て支援関係の施策が積極的に推進される自治体がある一方で、今の大阪市のように、これらの先進的な取り組みをおこなう自治体に匹敵する面を持つ青少年会館事業を、去年の今頃からあっという間に条例廃止・解体へともっていった自治体もあるんですよね。あるいは、他の自治体においても、例えば子ども関連の施設の統廃合問題や民間委託をめぐる諸問題を抱えているケースとか、財政難などを理由にいろんな子ども関連の施策が縮小・廃止に追い込まれているケースとか、そういったこともあるでしょう。そして、そういう「後退局面」にある自治体のなかで、悪戦苦闘をしている行政職員もいれば、なんとかその後退を食い止めようとふんばっている市民もいるだろうし、この両者に協力しようという研究者・専門家もいると思うんですよね。

私としては、こういうイベントの情報を見聞きするたびに、大阪市の青少年会館の問題にここまでコミットした以上、子ども関連の施策について、そういう「後退局面」に今、向かいつつある自治体の問題についても、先進的な取り組みをやろうとしている自治体と同じように視野に入れ、「これからの自治体の子ども施策はどうあるべきか?」という議論をするべきだと思うのです。でないと、少なくとも今の私、「昔の仲間たちがやっているこういうイベントに参加しても、自分の居場所ないなぁ」と思ってしまいそうです。

例えば、先進的な地方自治体の試みのなかには、子どもの意見表明権保障のあり方や、子どもの社会参加・参画支援のあり方を積極的に追求しようというものが見られます。その一方で、昨年から今年にかけての大阪市の青少年会館条例廃止問題について、ある青少年会館で集まっていた子どもたちは、積極的に自分の意見を市役所側に述べたり、署名活動を行ったりしていました。こういう取り組みだって、子どもの社会参加・参画の動きだと思うし、子どもの意見表明権の保障のあり方を考える事例だと思うのですが・・・・。

だから、一方で子ども施策面で先進的な取り組みをする自治体に注目し、その動向を広く各地に発信しようという意図は悪くないし、私も積極的に協力したいなと思いつつも、この手のイベントの案内をもらうたび、「もう一方の後退局面にある自治体、そこで何を、どうすればいいんだろう・・・・。財政面を含め、子ども施策で後退局面にある自治体において、子どもの意見表明権保障とか、子どもの参加・参画支援はいかにあるべきなんだろう・・・・」と私はふと疑問を抱いてしまうのです。