アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

韓米合同軍がミサイル発射、朝鮮半島の緊張高めるユン政権

2022年06月07日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 韓国とアメリカの合同軍が6日、日本海に向けてミサイル8発を発射しました(韓国軍7発、米軍Ⅰ発)。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が5日に8発のミサイルを発射したことへの「対抗措置」だとしています。しかし経過を見れば、挑発しているのはアメリカ・韓国の側であることは明白です。

 問題の元凶は韓米合同軍事演習です。

 そもそも朝鮮戦争(1950・6・25~)は停戦協定が調印(53・7・27)されただけで、いまだに終結していません。その状態で、韓国とアメリカが合同軍事演習を行うことがいかに朝鮮にとって脅威であり、朝鮮半島の緊張を高めるものであるかは明白です。だから朝鮮は、再三にわたって韓米合同演習を行わないよう要求してきました。

 その外交努力の1つの到達点が、朝米シンガポール会談(2018年6月12日)で、トランプ大統領(当時)は記者会見で、「米韓演習は挑発的」と認め、「中止」を言明しました(同6月13日付共同通信)。

 その前段には、朝鮮・キム・ジョンウン(金正恩)委員長と韓国・ムン・ジェイン(文在寅)大統領の歴史的な板門店会談(2018・4・27)がありました。

 ところが、ムン氏に代わって5年ぶりの保守政権となったユン・ソクヨル(尹錫悦)氏が大統領に就任(5月10日)した直後から、事態は急速に変化してきました。

 5月24日、ユン大統領はバイデン米大統領との会談で、「韓米合同軍事演習の強化」を合意しました(写真左)。

 6月2~4日、韓米合同軍は沖縄南東海上で、米原子力空母も加わった軍事演習を強行しました。原子力空母が参加した合同軍事演習は2017年以来です。

 朝鮮はそれに対抗して8発のミサイルを発射し、韓米合同軍がさらにそれを口実に同じ8発のミサイルを反射したもので、どちらが挑発したかは明らかです。

 日本政府やNHKなどメディアは、今回も朝鮮のミサイル発射を「挑発」と言い、韓米のそれを「対抗措置」と言っていますが、これは事実経過を逆に描く典型的なプロパガンダ(偏向報道)と言わねばなりません。

 ユン氏は大統領選挙の時からムン前大統領がすすめてきた「南北融和」政策を「失敗」と断じてきました。バイデン大統領との会談では合同軍事演習の強化とともに、アメリカの核の「拡大抑止」でも合意しました。

 そして、ミサイルを発射した6日には、「より根本的で実質的な安全保障能力を備える」と述べ、軍事力・韓米軍事同盟のいっそうの強化を表明しました(写真中)。

 ユン氏のこうした言動は、ウクライナ情勢に乗じたバイデン政権の東アジアにおける覇権主義強化とあいまって、朝鮮半島、東アジアの軍事的緊張を急速に高めています。

 この情勢に日本はもちろん密接に関係しています。

 松野博一官房長官は6日の会見で、朝鮮を非難すると同時に、「反撃能力(敵地攻撃能力)を含むあらゆる選択肢」の検討、軍事力の「抜本的強化」をあらためて表明しました(写真右)。

 さらに今後予断を許さないのが、「日韓米3ヵ国合同軍事演習」をめぐる動きです。
 現在は日米、韓米がそれぞれの軍事同盟によって合同演習を重ね、アメリカを中心に間接的に連携していますが、さすがに3ヵ国の合同演習はおこなわれていません。

 それをバイデン政権は韓国に再三要求しています。韓国側はいまのところ承諾していませんが、ユン大統領の言動から、今後韓国が応じる可能性はけっして小さくありません。

 もし日韓米合同軍事演習が強行されれば、明白な憲法違反(集団的自衛権)であるばかりか、朝鮮半島の緊張激化に日本が直接関与する重大な画期となります。絶対に容認することはできません。

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日米・韓米合同軍事演習とウクライナ戦争

2022年04月19日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

    

 米軍と韓国軍は18日、合同軍事演習を開始しました(9日間)(写真中)。これはアメリカと朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)のシンガポール会談合意(2018年6月12日)に反するもので、米韓による明白な挑発行為です。

 一方これに先立ち、米軍と自衛隊は今月13、14両日、日本海で合同軍事演習を行いました(写真右)。

 日米と韓米2つの合同軍事演習。これは一体のものです。しかも現在のウクライナ戦争と無関係ではありません。

 3月31日のハンギョレ新聞は、驚くべきニュースをスクープとして報じました。それは日米両政府が「朝鮮半島水域」で日韓米3ヵ国合同の軍事演習を行うよう再三提案した、しかしムン・ジェイン(文在寅)政権が拒否したため実現しなかった、というものです。概要を抜粋します。

< 外交筋は「今年2~3月、韓米日高官級会合の過程で、米日が3ヵ国による軍事演習を重ねて提案したが、文在寅政権がこれに同意しなかった」と本紙に伝えた。

 同外交筋の話を総合すると、今年2月12日にハワイのホノルルで開かれた韓米日3ヵ国外相会談(写真左)で、ブリンケン国務長官と林芳正外相は、チョン・ウイヨン外交部長官に韓米日合同軍事演習を提案したが、チョン長官は難色を示した。さらに今月11日、韓米日外務次官による電話会談の際にも米国と日本は繰り返し提案したが、(韓国は)やはり難色を示した。

 複数の外交筋は「最近の米日による3ヵ国合同軍事演習の提案は、北朝鮮を理由にしているが、実際は何より中国及びロシアを牽制しようとする意図があるとみるべきだ」と指摘した。

 韓米日3ヵ国が朝鮮半島水域で軍事演習をした事例はこれまで一度もない。北東アジアの地政学を質的に変える「重大な変化」と考えられてきた上、36年間にわたる日帝強占期(日本の植民地時代)を経験した韓国にとって、「日本自衛隊の朝鮮半島への進入」に対する拒否感が強いためだ。>(3月31日付ハンギョレ新聞日本語電子版)

 アメリカ政府(米軍)は日米と韓米の合同軍事演習を結合することによって、朝鮮に対する軍事圧力を強めるだけでなく、朝鮮半島の向こうの中国、ロシアに対する軍事的牽制を強化しようとした、日本政府はそれに同調した、というわけです。

 合同軍事演習の結合は、日米軍事同盟(安保条約)と韓米軍事同盟の2つの軍事同盟を事実上合体し、より強固な軍事同盟にすることを狙ったものです。

 ここに、ウクライナ情勢とのきわめて相似した関係があります。

 ウクライナ戦争の誘因がNATO(北大西洋条約機構)というアメリカ中心の軍事同盟の東方拡大にあることは周知の事実です。そのアメリカの挑発によって、ロシアは軍事侵攻を強行しました。

 NATOはアメリカ覇権主義を支えるヨーロッパの軍事同盟であり、そのアジア版が日米軍事同盟であり韓米軍事同盟です。アメリカはそのアジアの2つの軍事同盟を合体させてより強大な軍事同盟の形成を図ろうとしているのです。

 この構図が続く限り、ウクライナと同じように、いつ朝鮮半島で戦争の火ぶたが切って落とされるかわかりません。

 それを防ぐカギは、すべての軍事同盟をなくすることです。私たち日本人がやらなければならないのは、日米軍事同盟(安保条約)を廃棄することです。それこそが、「戦争反対」を実行する具体的な行動です。

あす(水曜)も更新します。


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朝鮮の「ミサイル実験」をどうみるか

2022年02月07日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の相次ぐ「ミサイル実験」に対し、米バイデン政権は「我々の関心を引くためだ」(ブリンケン米国務長官)とし、日本のメディアは、「北朝鮮の挑発」(1月22日付朝日新聞社説)、「危険な挑発行為」(2月4日付毎日新聞社説)などと、相変わらず朝鮮を一方的に非難しています。

 こうした「論評」は、朝鮮憎悪に基づくきわめて歪んだ言説と言わねばなりません。
 まともな論調が乏しい日本のメディア・「識者」に比べ、朝鮮と国境を接する韓国のメディアには注目される論説があります。
 その1つ、 ハンギョレ平和研究所長・チョン・ウクシク氏の寄稿「北朝鮮はなぜ次々とミサイルを発射するのか」(1月31日付ハンギョレ新聞日本語電子版)の要点を抜粋します(太字・改行は私)。

< 北朝鮮の意図は何だろうか。北朝鮮が昨年から強調してきた二つの表現から、その答えを見つけることができる。「軍事力のバランス」「戦争抑止力」がそれだ。すなわち、軍事的敵対関係にある韓米日を相手に最大限の軍事力バランスを取って戦争を抑制するのが北朝鮮の根本的な意図であり、目標であるという意味だ。

 これは「知彼知己(彼を知り己れを知る)」を通して優に推測できる。韓米日は北朝鮮の核とミサイル能力だけに注目するが、韓米同盟と米日同盟の軍事力は北朝鮮を圧倒する
 ここのところ韓国と日本の軍事力も飛躍的な成長を遂げている。2017年に世界12位と評価された韓国の軍事力は、最近世界6位に跳ね上がった。特に「キルチェーン-韓国型ミサイル防御体制-大量報復」で構成された3軸システムが強化された。
 専守防衛の原則を掲げ攻撃用兵器の導入を控えてきた日本も、「敵基地攻撃論」を既成事実化するなど、変化を見せている。

 これに対抗して、北朝鮮は核とミサイルに「選択と集中」をしながら、新型ミサイルを保有することで軍事力のバランスと戦争抑止力を維持しようとしている。
 北朝鮮が最近発射しているミサイルの特性からも、これを確認することができる。極超音速ミサイルは韓米日のミサイル防衛体制(MD)を無力化しようという意図を、潜水艦や列車から発射するミサイルは発射プラットフォームを多様化し、2次攻撃能力を確保するという目的を持っている。

 では、北朝鮮の暴走を止める方法は何だろうか。対北朝鮮制裁の強化や先制攻撃論では阻止できない。何が必要だろうか。北朝鮮の武器庫に劣らず、自分たちの武器庫に積まれていく先端兵器も顧みる知恵が、韓米日に求められている。>

 「戦争抑止力」論は肯定できませんし、最後の「暴走」「知恵」という表現にも違和感があります。しかし、全体の論旨は明快で、共感します。要は、朝鮮を批判する前に、日本、アメリカ、韓国は軍事同盟による自らの軍備増強、軍事的挑発を顧みる必要があるということです。

 日本についていえば、史上最大の軍事費による自衛隊(日本軍)増強、米軍との一体化、「敵基地攻撃論」あるいは「戦争法(安保法制)」による「集団的自衛権」容認という憲法違反を直ちに改め、日米安保条約(軍事同盟)の見直しへ向かわねばならないということです。

 日本のメディア・「識者」がチョン・ウクシク氏のような冷静で公正な視点が持てず、「北朝鮮の挑発」という錆びついた決まり文句で朝鮮への一方的非難を繰り返すことは、日米政府の「北朝鮮敵視」政策に加担すると同時に、日本の軍拡・戦争国家化・憲法違反を容認することだと銘記すべきです。


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「朝鮮半島の非核化」を「北朝鮮の非核化」にすり替える日本政府

2021年05月13日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

    

 コロナ対策の菅義偉政権の失政は深刻ですが、同政権の問題はもちろんそれだけではありません。コロナ禍で見過ごされがちですが、朝鮮半島・東アジアの平和への逆行・妨害もその1つです。

 韓国のムンジェイン(文在寅)大統領は10日、就任4年目の特別演説を行いました。大統領は「演説の中で、朝鮮半島の完全な非核化を目標とする米バイデン政権への支持を表明」(11日付東京新聞)しました。

 この5日前(今月5日)、日韓米3国の外相会談がロンドンで行われました。同日の記者会見で茂木敏充外相はこう述べました。「ブリンケン国務長官、鄭外交部長官との間で、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し(た)」(外務省HP)。

 3カ国外相会談について日本のメディアは、「米政権による対北朝鮮政策見直し作業の完了を踏まえ、北朝鮮の完全非核化へのコミットメント(決意)を再確認した」「茂木氏は米国が朝鮮半島の完全非核化目標を維持したことを歓迎した」(7日付共同配信)と報じました。

 「朝鮮半島の完全な非核化」と「北朝鮮の完全非核化」。一見同じようですが明確に違います。日本の報道は2つが混同されています。この混同は何を意味しているでしょうか。

 バイデン政権の政策目標は、「朝鮮半島の非核化」です。先月30日、「対北朝鮮政策見直し」を記者会見したホワイトハウスのサキ報道官が、「朝鮮半島の非核化」と明言(5日付ハンギョレ新聞)したことからも明らかです。

 にもかかわらず日本政府はあくまでも「北朝鮮の完全非核化」だと強弁し、そう公式発表しているのです。先の日米首脳会談の共同声明(4月16日、写真左)でも、日本政府は「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメント」(外務省HP)で合意したと発表しました。

 日本政府はなぜ「北朝鮮の非核化」にこだわるのでしょうか。
「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」の違いは重大です。韓国はその違いに敏感です。

「韓米の目標が「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」であることが、なぜ重要なのか。南北が1991年12月に合意した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」から2018年6月に朝米が署名した「シンガポール共同宣言」(写真右)に至るまで、この用語が過去30年あまり続いてきた北朝鮮核交渉の骨子となってきたからだ。

 米国が朝鮮半島の非核化という用語を受け入れた(注・3月18日の韓米外相・国防相会談で―引用者)ことは「朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約」するという北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の誓約が盛り込まれたシンガポール共同宣言を継承することを意味し、この約束の土台となった2018年4月27日の板門店宣言(写真中)に生命力を吹き込むという意味と解釈することもできる。

 韓国がまず先に非核化(在韓米軍の非核化―引用者)して北の非核化を導くという「朝鮮半島の非核化」とは異なり、北朝鮮の一方的な核放棄を意味する「北朝鮮の非核化」は、外交的手段では到底達成できない「遠い夢」にすぎない」(5月5日付ハンギョレ新聞日本語電子版。改行は引用者)

 「朝鮮半島の非核化」にはこのような歴史的意味と現実的重要性があります。韓国政府の主張もあってバイデン政権はそれを政策目標とすることを再確認したのです。にもかかわらず、あくまでも「北朝鮮の完全非核化」だと言い張ってそれを公式発表し、半島の非核化を「遠い夢」にしているのが日本政府です。

 私たちは「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」の違いに敏感になる必要があります。そして半島の非核化・平和的統一に対する日本政府の妨害を絶対に許すことはできません。


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なぜ「米韓合同軍事演習」の不当性を問わないのか

2021年03月27日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

    

 菅義偉首相は26日の参院予算委員会で、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の25日の「弾道ミサイル発射」について、「わが国の平和と安全を脅かした。断じて許すことができない」と語気を強めました(写真右)。飛翔体はいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下しており、「平和と安全を脅かした」は誇張も甚だしいものですが、なによりも問題なのは、ことの経過・本質を一切捨象して朝鮮を非難・攻撃していることです。

 問題の元凶は、今月8日から18日まで行われた米韓合同軍事演習です(写真左は2019年8月の合同演習)。朝鮮の「弾道ミサイル発射」が、これに対する抗議・対抗行動であることは明白です。日本政府さえ、「米韓の合同軍事演習への反発」(26日のNHKニュース)だと認めています。

 朝鮮はなぜ米韓合同軍事演習に「反発」するのか。それはこれが朝米首脳会談(2018年6月12日)合意違反だからです。

 同会談の「シンガポール共同声明」は、「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束」(2018年6月13日付共同配信)と明記しています(写真中)。そしてトランプ前大統領は、金正恩委員長との会談後の記者会見で、「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」(同共同配信)とのべ、米韓合同軍事演習の中止を言明し、事実、その年(18年)の合同軍事演習を中止しました。

 政権が変わっても他国との公式な合意(約束)が守られなければならないのは言うまでもありません。しかしバイデン米政権が行った今回の米韓合同軍事演習は、アメリカが朝鮮と交わした安全保障上の約束を一方的に破ったものです。朝鮮が「反発」するのは当然ではないでしょうか。「挑発」しているのは朝鮮ではなく、トランプ氏がいみじくも「挑発的」だと認めた米韓合同軍事演習であり、それを強行したアメリカの方です。

 この事実経過を意図的に無視して、朝鮮を非難・攻撃する菅政権は、日米安保条約(軍事同盟)の下でアメリカに追随し朝鮮を敵視する日本政府の姿を露呈したものです。

 日本政府だけではありません。日本のメディアは一様に、上記の経過・本質を棚上げし、「北朝鮮の挑発」という決まり文句の中傷論評を繰り返しています。「北朝鮮の挑発 同じ愚を繰り返すのか」と題した朝日新聞の社説(26日付)もその典型です。

 バイデン氏や菅氏は、「弾道ミサイル発射は国連安保理決議違反だ」として、自らに「正義」があるように言いますが、これもとんでもない話です。

 そもそも国連安保理は、核大国が自分たちの利益を守るための“互助組織”です。朝鮮の核兵器・弾道ミサイルを禁止するなら、まず自らそれを実行するのが道理であり「大国」の責任ではないでしょうか。ところが逆に、自分たちは核兵器を持ち続けるが、他の国には認めないというのは核大国の身勝手・横暴・大国主義以外のなにものでもありません。

 しかも、インドやイスラエルなどアメリカと親密な国の核保有・実験は黙認するが、朝鮮は許さない、禁止するというのは、ダブルスタンダードも甚だしいと言わねばなりません。

 日米両政府、そしてメディアのこうした理不尽な朝鮮敵視・攻撃は今に始まったことではありません。それが朝鮮学校無償化排除など在日コリアンへの差別やヘイトスピーチ・クライムを助長している事実を直視しなければなりません。その罪はきわめて重大です。

 さらに問題は、こうした政府やメディアに日本市民の多くが無批判に追随していることです。市民が思考停止から脱却し、事実経過・本質に目を向けることがなによりも求められています。

 


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朝米会談「中止」の責任はどちらにあるのか

2018年05月26日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

     

 トランプ大統領が朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との会談の「中止」を突然発表(24日。写真左。右はペンス副大統領)したことに対し、日本のメディアは(「産経」や「読売」でなくても)、「北朝鮮の柔軟性のなさは相変わらず」(25日付朝日新聞社説)、「北朝鮮は今月十六日、突然態度を硬化させた」「突然の姿勢の変化は、北朝鮮への信頼を失わせ、マイナスにしかならない」(25日付東京新聞社説)など、朝鮮を一方的に非難しています。

 これは、「直近のあなた方の声明で示された敵対心や怒りに鑑みると、私は今、計画通りに会談することが適切だとは思わない」と「会談中止」を朝鮮のせいにしたトランプ大統領の「書簡」(25日付共同)に同調するものです。

 こうした朝鮮非難は果たして妥当でしょうか。「会談中止」になったのは朝鮮のせいでしょうか。
 トランプ氏が挙げた朝鮮の2つの「直近の声明」の内容と経過を検証してみましょう。

 ★5月16日の「金桂冠第1外務次官談話」

  朝鮮の金桂冠第1外務次官が5月16日、「会談取りやめを警告」する「談話」を発表したのは事実です。問題は(東京新聞の社説などがまったく触れていない)その趣旨と経過です。

 「談話」は「非核化の用意があるが、米国の敵視政策と核による威嚇を終わらせるのが先決条件」(17日付共同)と述べています。これは、「核放棄を先行させ見返りを与えたリビアの成功例を北朝鮮にも適用すべきだと主張するボルトン氏を糾弾」(同)したものです。

 ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、「16日、ラジオ番組で『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(「リビア方式」の言い換え-引用者)という目標は後退させない』と述べ」(18日付共同)、朝鮮をけん制しました。同氏は13日にもテレビ番組で、「ウラン濃縮も再処理能力も取り除く」(17日付共同)ことを要求しました。これは朝鮮に「核の平和利用」をも断念することを迫るものです。

 「リビア方式」はボルトン氏の持論ですが、朝鮮ははじめから絶対に容認できないと表明しています。

 「核放棄完了後に見返りを与えるリビア方式に関わったボルトン大統領補佐官が北朝鮮への適用に意欲を示していたが、北朝鮮は体制崩壊への懸念から反発していた」(19日付共同)

 だからトランプ氏は17日、「『リビア方式』について、『北朝鮮について検討する際の方式ではない』と言明」(19日付共同)し、表面上ボルトン氏をおさえて見せたのです(写真中。右がボルトン氏)。

 金次官の「談話」は、ボルトン補佐官の相次ぐ挑発発言を受けたものであり、その趣旨は「リビア方式」の放棄を求めるものだったのです。

 朝鮮が「完全非核化」した後でないと(制裁緩和など)「見返り」は何も与えない、という「リビア方式」はアメリカの一方的な言い分です。しかもそれでリビアのカダフィ政権が倒された歴史から、朝鮮が受け入れられないのは当然でしょう。アメリカが「リビア方式」に固執する限り、会談(交渉)は成り立ちません。

 ★5月24日の「崔善姫外務次官談話」

 2つ目の朝鮮の「談話」は、対米関係を担当している崔善姫外務次官によるものです。

 「朝鮮中央通信によると、朝鮮の崔善姫外務次官は24日、米国のペンス副大統領がFOXニュースとのインタビュー(21日)で朝鮮の核問題で軍事的対応の排除を否定し、『リビアのように終わるだろう』などと発言し、『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』を主張したことを非難する談話を発表した」(24日付朝鮮新報)

 事実、ペンス副大統領は21日、「FOXニュースのインタビューで、北朝鮮が完全な非核化に応じなければトランプ大統領が米朝首脳会談が始まってからでも取りやめることがあり得ると警告し、『米国の一方的な核放棄の強要』に反発する北朝鮮をけん制した」(23日付共同)のです。

 「崔次官は、ボルトン国家安全保障担当補佐官に続き、ペンス副大統領までもが朝鮮に対し、リビアの轍を踏むだろうと力説したことについて、『われわれは、リビアの轍を踏まないために高い代価を払って自分自身を守り、朝鮮半島と地域の平和と安全を守ることのできる強力で頼もしい力を育てた』と指摘。『この現実をいまだに分からず、われわれを悲劇的な末路を歩んだリビアと比べるのは、米国の高位政治家が朝鮮をあまりにも知らない』と非難した」(24日付朝鮮新報)

 以上の2つの「談話」を含め、この間の主な経過をまとめてみましょう。

3月8 トランプ大統領、「米朝首脳会談」の意向表明
4月27 「南北会談」=板門店宣言
5月9 朝鮮が「3人のアメリカ人」を解放
同13 ボルトン大統領補佐官のテレビ発言
同16 ボルトン大統領補佐官のラジオ発言
同日  金桂冠次官談話
同21 ペンス副大統領のFOXニュース発言
同24 崔善姫次官談話
同日  朝鮮が豊渓里の核施設爆破(写真右)
同日 (その数時間後)トランプ大統領が「会談中止」発表

 以上の経過をみれば、「板門店宣言」以降、朝鮮はアメリカとの会談実現のためにできることを段階的にやってきたが、アメリカは、ボルトン補佐官、ペンス副大統領の2人の側近が相次いで、朝鮮が絶対に受け入れられない「リビア方式」を執拗に持ち出し、トランプ大統領は会談をアメリカペースにするために2人を使って朝鮮をけん制してきた、というのが事実ではないでしょうか。

 「会談中止」の責任がアメリカ側にあることは明白です。


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相次ぐ米軍「事故」、元凶は「北朝鮮」ではなく「日米安保」

2018年02月22日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

     

 米軍三沢基地のF16戦闘機が燃料タンクを青森県・小川原湖に投げ捨て、あわや大惨事という「事故」が起こりました(20日)。相次ぐ米軍機「事故」は、米軍基地の存在がいかに住民の生命・安全を脅かすかを改めて示しています。

 しかも今回の「事故」は明らかに「米軍が本来回収する案件」(21日、小野寺防衛相)であるにもかかわらず、米軍に言われるまま自衛隊が代わって回収するというのですから、自衛隊の対米従属ぶりは隠しようがありません。

 見過ごせないのは、相次ぐ米軍機・自衛隊機の「事故」の原因が、あたかも「北朝鮮(情勢)」にあるかのような論調・記事が流布していることです。

 「米軍機が絡む事故が続く。背景に何があるのか。…永岩氏(永岩俊道元航空自衛隊空将―引用者)は、『対北朝鮮、中国をはじめ米軍は世界中で作戦を展開し、自衛隊も日本周辺で厳しい警戒を続けている。疲労が蓄積し…「組織的ストレス」も背景にあるのかもしれない』と話す」(21日付朝日新聞)

 「北朝鮮情勢などで任務が増えていないか…検証と分析が不可欠だ」(22日付朝日新聞社説)

 「20日のトラブルは、北朝鮮情勢を背景に活動を活発化させる米軍の事故が、どこでも起こり得るという現実を浮き彫りにした。…沖縄国際大の前泊博盛教授(日米安保論)は『…北朝鮮情勢を背景に現場での人繰りが回っていないのではないか』と分析する」(21日付共同配信)

 メディアや「専門家」だけではありません。

 「背景には…中国・北朝鮮への対応など任務激化と整備能力の低下といった構造的な要因が指摘されており…」(21日付「しんぶん赤旗」の「解説」)

 こうした記事・論調は、「北朝鮮対応で現場負担増」(21日付琉球新報)「北朝鮮情勢 負担か」(同、沖縄タイムス)などの見出しとともに、米軍機「事故」の原因・根源が「北朝鮮(情勢)」にあるかのような印象を与えています。

 これは事実に反するだけでなく、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への憎悪を煽り、米軍機・自衛隊機「事故」の本質を見誤らせるきわめて危険なものと言わねばなりません。

  在日米軍とそれに従属する自衛隊が朝鮮に対して軍事的圧力を強めているのは事実であり、その「負担」が米軍機や自衛隊機の相次ぐ「事故」を誘発していることは十分考えられます。問題はそうした米軍・自衛隊の軍事圧力の根源は何かということです。それを考えるカギは「米韓合同軍事演習」にあります。

 「米韓合同軍事演習」は朝鮮戦争休戦協定(1953年7月27日)に反してアメリカが強行している軍事挑発です。朝鮮は一貫してその中止を要求していますが、アメリカはそれを無視し続けています。平昌五輪・パラリンピック後にも強行すると公言しています。(15日のブログ参照http://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20180215

  また、「北朝鮮の核・ミサイル開発」についても、休戦協定に違反していち早く韓国に核兵器を配備したのはアメリカです。そして今、世界の反核世論に逆らって「核兵器禁止条約」に反対し、新たな「使える核」戦略を発表したのもアメリカであることは世界周知の事実です。

 この危険極まりない米軍が日本に基地をもち、わがもの顔で傍若無人な振る舞いを続けている(続けられる)のは、日米安保条約がそれを許しているからです。
 安倍政権が「百パーセント」アメリカに追随し、戦争法(安保法制)で米軍と一体になって集団的自衛権を行使しようとしているのも日米安保条約があるからです。

  米軍機・自衛隊機の相次ぐ「事故」の原因は「北朝鮮(情勢)」ではありません。元凶はアメリカの覇権主義・核戦略であり、そのアメリカに追随する日米安保条約です。

  いかにも「北朝鮮」に問題があるかのように言う記事・「識者」が、「しんぶん赤旗」を含め、例外なく日米安保条約の見直し・廃棄には触れていない(「地位協定の見直し」は言っても)ことが、事態の深刻さを示しています。

 


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ペンス副大統領はなぜ横田基地に直行したのか―朝鮮戦争と日本

2018年02月08日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

     

 アメリカのペンス副大統領は平昌五輪開会式出席を前に日本に立ち寄り(6日夜)、7日安倍首相と会談、「北朝鮮は世界で最も残虐な国だ」「今後外交的にも経済的にもこれまでにない最大限の圧力をかける」と口をきわめて朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵意をむき出しにしました。安倍氏も「日米の北朝鮮政策を完全にすり合わせることができた」「日米・日米韓で連携してあらゆる方法で圧力を最大限まで高めていく」と応じました(写真中)。

 朝鮮と韓国が同じ民族同士で緊張を緩和し話し合いを深めようとしているのに対し、大国覇権主義のアメリカと日本があくまでも「北朝鮮敵視政策」に固執し、それを妨害しようとしている姿が、改めて浮き彫りになっています。

 ところで、ペンス氏は通常の訪日ルートである羽田空港ではなく、米軍横田基地に降り立ちました(写真左)。トランプ大統領も初訪日(2017・11・4)の着陸は羽田ではなく横田基地でした。
 トランプ氏やペンス氏はなぜ横田基地へ直行したのでしょうか。

 もちろん、横田が都心に最も近い米軍基地だということはあるでしょう。しかし、それだけでしょうか。

  横田基地はアメリカにとって特別な基地なのです。なぜなら、そこには朝鮮戦争(1950・6・25~53・7・27休戦協定)「国連軍」(アメリカの傀儡軍)の後方司令部が現在も存在しているからです。

 「朝鮮国連軍は…五〇年七月に創設され、東京に司令部が置かれた。五七年に司令部は韓国・ソウルに移され、後方司令部が日本(横田基地―引用者)に設けられた。現在、オーストラリア出身の司令官を含め、米国、カナダ出身の計四人が常駐している。
 五四年には、朝鮮国連軍の日本滞在中の権利・義務や待遇を定めた地位協定も締結した。同協定に基づき、キャンプ座間(神奈川県)や横須賀海軍施設(同)、普天間飛行場(沖縄県具宜野湾市)など七カ所の在日米軍基地を使用できる」(1月18日付東京新聞)。

 日本は朝鮮戦争に深くかかわった、というよりアメリカに従って事実上参戦した国であり、それは現在も継続しているという事実を私たち「日本人」は銘記する必要があります。

 「日本は朝鮮戦争において、巨大な規模の間接的役割のみならず、直接的に重要な軍事的役割を果たした。日本は戦闘司令部の所在地であり、供給、通信、兵站の中心地であり、そして米軍(国連軍)将兵の休息と娯楽の場所であった。しかしそれのみではない。非常に微妙で極秘の軍事作戦にも直接関与したのである。…一九五〇年一〇月、もと日本帝国海軍将校たちは北朝鮮の海域に出動を命ぜられ、そこで港湾に敷設された機雷を除去するための特別掃海隊の指揮に当たっていた」(ガバン・マコーマックオーストラリア国立大教授『侵略の舞台裏―朝鮮戦争の真実』シアレヒム社)

 朝鮮戦争の「休戦協定」調印から65年。いまさら朝鮮戦争でも、と思ったら大間違いです。アメリカは平昌五輪に先立って朝鮮への圧力・制裁を確認するため、カナダ・バンクーバーで「20カ国外相会談」(日本時間1月16日、写真右)を開催しました。招集をかけたのは朝鮮戦争「国連軍」参加国と日本、韓国でした。アメリカ政府の中では朝鮮戦争は終わっていないどころか、現在進行形なのです。

 トランプ大統領は新たな核戦略として、小型核兵器で朝鮮を先制攻撃する「鼻血作戦」なるものを検討しています。これについて寺島実郎氏(日本総研会長)はこう指摘します。
 「第2次朝鮮戦争も辞さない覚悟がなければできない」(6日のBS日テレ「深層NEWS」。7日付読売新聞より)。

 アメリカの先制攻撃による「第2次朝鮮戦争」はけっして荒唐無稽な話ではありません。少なくともアメリカがそういう軍事的圧力を朝鮮に加えていることは事実です。

 そして、安倍首相はそんなトランプ政権と「100パーセント一致している」と再三公言し、アメリカが強行する朝鮮への攻撃(第2次朝鮮戦争)に積極的に参戦しようとしているのです。私たち「日本人」はそれを座視していていいでしょうか。


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「北朝鮮は常に交渉を望んでいる」元防衛次官が断言

2017年11月06日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

     

 安倍首相とトランプ大統領はきょう6日午後の日米首脳会談で、武力行使も含む北朝鮮への圧力をさらに強化し、敵対姿勢を露わにします。

 こうしたトランプ、安倍両氏の対北朝鮮姿勢は、朝鮮半島情勢の平和的解決に逆行するばかりか、「日本の安全保障」も危うくする。北朝鮮は常に交渉を望んでおり、軍事的挑発は行っていない。日米首脳会談を前にして、防衛官僚トップの元防衛事務次官がテレビでこう断言しました。

 注目すべき発言を行ったのは、秋山昌廣元防衛事務次官(橋本内閣、小渕内閣当時。現安全保障・外交政策研究会代表)。番組は5日夜9時から放送されたBS・TBS「LIFE」(写真中、右)。

 秋山氏の主な注目発言は次の通り。

 「北朝鮮は常に交渉を望んでいる。ミサイル発射や核実験もけっして軍事的挑発をしているわけではない。そこを見誤ってはいけない

 「安倍首相が『対話ではなく圧力だ』と強調しはじめて、北朝鮮の日本に対する姿勢が強硬になった。安倍首相の姿勢が日本の安全に危機をもたらした

 「(トランプ氏の「日本はなぜミサイルを迎撃しない」発言について)安倍首相も菅官房長官も、トランプ氏の『すべての選択肢はテーブルの上にある』発言を全面的に支持すると表明した。それなら日本も一緒にやろう、というのがあの発言だろう」

 さらに秋山氏は、ボードを使って「対北朝鮮政策の3つ提言」を行いました。

① 制裁強化・圧力一辺倒は日本の安全保障に深刻な危険をもたらす。

② 少なくとも米側から軍事力を行使すべきではないという考えを日本としても明らかにすべき。

③ 解決のためには、まず米朝双方がいったんここで立ち止まることが不可欠。辛抱強い外交と対話が必要。

 事務次官という官僚トップが退職後に真相・本心を公言することは「森友・加計問題」でもありましたが、秋山氏の発言もその1つといえます。
 元防衛官僚トップの目から見ても、「北朝鮮を完全に破壊する」(トランプ氏、9月19日の国連演説)、「必要なのは対話でなく圧力」(安倍氏、9月20日の国連演説)というトランプ、安倍両氏の北朝鮮敵視がいかに危険かは明らかです。

 さらに秋山氏が、「北朝鮮はけっして軍事的挑発はしていない」と断言したことは、「北朝鮮の挑発」という常とう句で思考停止に陥っている日本の政党、メディア、「市民」に大きな一石を投じたと言えるでしょう。

 


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