アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日米韓「共同訓練定例化」は何を意味するか

2023年08月23日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 19日にキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会談で合意した「共同声明」は、「日米韓の安全保障協力を新たな高みへ引き上げる」と宣言しました。それはどういう意味でしょうか。

 「共同声明」でとりわけ重大なのは、「3カ国は共同訓練を定期的に実施する」と決めたことです。

 韓国の文在寅前政権時代は、米韓共同訓練に自衛隊を加えることを避けてきました。それが特別な意味を持っているからです。

 7月27日に「休戦協定締結」70年を迎えた朝鮮戦争を想起する必要があります。朝鮮戦争はまだ終わっていないのです。

 米韓共同軍事訓練は、朝鮮戦争の当事国であるアメリカと韓国が、対戦国の朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の鼻先で軍事デモンストレーションを繰り返していることで、朝鮮に対する露骨な挑発であり脅威です。朝鮮が行う「ミサイル実験」は米韓共同訓練に対応するものです。日本のメディアは「北朝鮮の挑発」と決まり文句を繰り返していますが、事実は逆です。

 朝鮮は一貫して米韓共同訓練の中止を要求してきました。それが朝鮮戦争の終結に不可欠だからです。

 2018年4月27日、韓国・文在寅大統領と朝鮮・金正恩委員長の会談で合意した「板門店宣言」は、「(朝鮮戦争)停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制構築」に向かうと明記しました。

 これを受けて行われた朝鮮とアメリカの首脳会談(18年6月12日、シンガポール)でも米韓共同訓練が主要な議題の1つとなりました。
 その結果、トランプ大統領は会談後の記者会見で、「米韓演習は挑発的。中止により多額の費用を節約できる」「朝鮮戦争は間もなく終結するとの期待を持っている」(2018年6月13日付共同配信)と述べたのです。

 トランプ大統領はその後自らの言明を反故にして米韓共同訓練を再開しました。
 今回バイデン政権は、この米韓共同訓練に日本(自衛隊)を加え、3カ国で定例化させることを決めました。これは朝鮮戦争終結(平和協定締結)に真正面から反するものです。

 そしてそれは日本にとって、アメリカ、韓国とともに朝鮮戦争に公然と参戦することを意味します。

 日本は朝鮮戦争勃発(1950年6月25日)以来、アメリカの兵站基地になるなど事実上朝鮮戦争に関わってきました。しかし、日本政府は朝鮮戦争への参戦を公式には認めてきませんでした。たとえば、吉田茂首相は、「国会でも曖昧な、否定的な答弁で(朝鮮戦争への)協力の実態を秘密にしていました」(大沼久夫・共愛学園前橋国際大名誉教授、月刊「イオ」7月号)。朝鮮戦争への協力・参戦は日本国憲法の蹂躙に他ならないからです。

 その憲法の壁を、岸田文雄首相は「3カ国共同訓練の定例化」によって飛び越え、公然と朝鮮戦争の参戦国になったのです。
 朝鮮に対する最大級の「挑発」であり、朝鮮戦争の終結、朝鮮半島の平和に逆行するこの暴挙を絶対に許すことはできません。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「真夏の甲子園はいらない」... | トップ | 汚染水放出・国際研究は「放... »