アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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朝鮮(北朝鮮)はなぜミサイル実験を行うのか(下)根源は朝鮮戦争

2023年02月21日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 朝鮮が米韓合同軍事演習に対抗してミサイル実験・核開発を行わざるをえない状況に置かれていることは、日本とけっして無関係ではありません。というより、日本はそのことに深いかかわりと責任があります。

 なぜなら、朝鮮のミサイル実験・核開発の根源は、朝鮮戦争(1950年6月25日~53年7月27日休戦協定調印)だからです。

 朝鮮戦争は、同じ民族が殺し合い、「休戦」後も分断されるという史上まれにみる悲惨な戦争です。それはそもそも、日本の朝鮮半島侵略・植民地支配がなければ起こりませんでした。日本の植民地支配の後、アメリカ・ソ連両核大国の覇権主義によって引き起こされたのが朝鮮戦争です。

「朝鮮戦争はそれ以前の5年間ずっと続けられた闘争の行き着いた当然の帰結に過ぎない。一言でいえば、1945年8月は、一度も途切れたことのない一貫した事件の連鎖をもって、1950年6月につながっている」(孫崎享・元外務省情報局長『朝鮮戦争の正体』祥伝社2020年)

 アメリカは「国連軍」の看板でこの戦争を戦いました。「国連」を隠れミノにするのはアメリカの常套手段です。総司令官はマッカーサー元帥。マッカーサーは劣勢の中で、核兵器を「26発」使うことを米政府に要請しました。
 NHK「映像の世紀」(今月13日)は「朝鮮戦争 そして核がばらまかれた」と題し、マッカーサーが本国政府に核兵器使用を要請した極秘文書の映像を流しました(写真中)。

 朝鮮戦争で核兵器を使用しようとしたのはマッカーサーだけではありませんでした。

 トルーマン大統領(当時)は、「1950年11月30日、朝鮮戦争で原爆使用辞せずと発言」(孫崎氏、前掲書)しました。
 
 さらに、トルーマンのあとのアイゼンハワー大統領も核兵器を使おうとしました。

「1953年3月から5月の間に、アイゼンハワー大統領をふくむアメリカの当局者たちは核兵器に訴えて戦争をエスカレートさせようと考えた。…通常兵器よりも「ドルに換算してより安価な」原子爆弾の使用に賛成していた。…アイゼンハワーが朝鮮ばかりでなく中国にたいしても原爆の使用を考えていたことは注目してよい」(ガバン・マコーマック・オーストラリア国立大学教授『侵略の舞台裏 朝鮮戦争の真実』シアレヒム社発行・影書房発売1990年)

 アメリカは朝鮮戦争での核兵器使用は断念したものの、「休戦」後には韓国に核兵器を持ち込んでいます。

 重大なのは、日本は朝鮮戦争のきっかけをつくった張本人であるだけでなく、核兵器を使おうとした米軍の兵站・後方基地となったことです。

 前記「映像の世紀」は、「休戦協定調印」翌日の1953年7月28日にキム・イルソン(金日成)がおこなった演説の映像を流しました。ここで彼は、「われわれはアメリカ帝国主義者の企てを粉砕した」と述べるとともに、「米国の空軍基地が日本にあり、日本が米軍の兵器廠、後方基地であったことをよく知っている」「停戦協定の締結は砲火の停止を意味するものではない」と語っています(写真右)。

 現在の朝鮮のミサイル実験・核開発が、朝鮮戦争に端を発するアメリカの核戦略にあることは明らかです。朝鮮戦争はキム・イルソンが言った通り、まだ終わっていないのです。米軍主導の「国連軍」の後方司令部は今も横田基地に置かれています。

 朝鮮戦争と日本の関係はそれだけではありません。朝鮮半島で戦っている米軍の穴埋めに、アメリカは日本に警察予備隊の創設を迫り、吉田茂政権は、国会にもはからず、一片の「警察予備隊令」(1950年8月10日)で再軍備しました。それが今日の自衛隊です。

 朝鮮戦争の特需はトヨタ、日産など主要大企業を育て、日本の「高度経済成長」の基礎をつくり、今日の日本経済につながっています。

 孫崎氏は前掲書でこう強調しています。

日本という国がどういう国か、そして今日の国際社会がどういうものか、それを理解するために、朝鮮戦争とは何だったのか、朝鮮戦争は何をもたらしたのかを、今改めて問う意義がある

 それはまた、「軍拡(安保)3文書」を撤回させ、東アジアの平和実現を進める上でも不可欠の課題です。
 朝鮮戦争はまだ終わっていないのです。
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