アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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日韓関係の「改善・正常化」とは何なのか

2023年11月27日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国
   

 韓国高裁が日本政府に戦時性奴隷(「慰安婦」)被害者への慰謝料支払いを命じる判決を下した(23日)ことについて、毎日新聞は25日、「慰安婦判決と日韓関係 対立の再燃招かぬ知恵を」と題した社説を掲載しました。

 この中で、「主権免除」を退けた判決を「無理がある」と批判するとともに、「両国関係は「国交正常化以降で最悪」と評されるまでに悪化していた。流れを変えたのは、尹錫悦政権が今年3月に徴用工問題の解決策を提示したことだ」「対立の時代に逆戻りすることのないよう、日韓両国は信頼構築の努力を続けなければならない」と書いています。

 共同通信も24日の配信記事で、「尹錫悦政権下で日韓関係が改善する中、両国間にしこりを残す可能性がある」と高裁判決を批判しました。

 日本メディアの主張はほぼ共通しています。①性奴隷(「慰安婦」)や強制連行・労働(「徴用工」)に対する補償問題は日韓請求権協定(1965年)で解決済み②さらに性奴隷問題は日韓合意(2015年)で決着済み③その見直しを図った文在寅前政権が両国関係を悪化させた④尹錫悦政権で関係は改善され正常化へ向かっている―。政府の言い分と歩調が合っています(写真右は「慰安婦合意」を強行した安倍晋三首相と朴槿恵大統領=当時)。

 一方、韓国のハンギョレ新聞(日本語電子版)は24日の社説でこう書いています(太字、改行は私)。

「韓国司法府は、日本企業を相手取った強制動員訴訟では2018年に、最高裁(大法院)全員合議体判決で損害賠償責任を認めている。今回「慰安婦」訴訟でも一貫した司法府の見解が確立されたわけだ。
 しかし、尹錫悦政権は対日低姿勢外交を展開する中で、司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起になり、強制動員関連の最高裁判決にもかかわらず「第三者弁済」という譲歩案を貫こうとしている。法治国家なら、政府は司法府の判断を尊重しなければならない。判決の趣旨に合わせて、歴史的正義の実現と国民の被害回復に努めなければならない日本政府も、韓国政府の一方的な譲歩に喜ぶだけではなく、歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない」(写真左は勝訴した李容沫さん=ハンギョレ新聞より)

 韓国司法判断の評価はこれまで繰り返し書いてきたのでここでは述べません。百歩譲って、それに異議があるとしても(「主権免除」の解釈等)、上記ハンギョレ新聞の太字の部分に反論することはできないのではないでしょうか。

 尹錫悦政権が「司法府の判断まで歪曲し「歴史問題の封印」に躍起」になり「歴史的正義の実現と国民の被害回復」に背を向けていることは客観的事実です。日本政府がそれを喜んでいるのも事実です。

 日本のメディアはそれを「日韓関係の改善」「正常化」と評しているのです。

 尹政権の「一方的な譲歩」は、東電福島原発の汚染水海洋放出でも顕著です。それに対しても韓国では市民の批判が広がっています。

 尹政権の対日「譲歩」の背景・根源に、韓米軍事同盟と日米軍事同盟(安保条約)の結合を図るアメリカの戦略があることは明白です。

 こうした日韓両国政府の動向のどこが「改善」「正常化」なのでしょうか。

「歴史問題の解決に向けた真摯な努力を示さなければならない」のは「日本政府」だけではありません。「日本のメディア」そして「日本の市民」も同じです。その努力の先にこそ本当の「正常化」があるのではないでしょうか。


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