角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

脳に良い小正月行事。

2013年02月10日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
オレンジ基調の布地というのは基本的に種類が少ないのか、当地の手芸店でもほとんど見ることがありません。こちらの布地は最近日暮里から届けられたばかりで、早速同系色でまとめてみました。明るく楽しい草履ですね。

当地の小正月行事が始まり、今日は久しぶりに間断のないご来客で賑わいました。昨日は白岩城址燈火祭、今夜は檜木内の紙風船上げ、そして13日と14日は角館の火振りかまくらと続きます。情緒溢れる仙北市の小正月行事を、心ゆくまで愉しんで欲しいものですね。

「今日の草履」をお持ち帰りは、兵庫県からお越しのご夫婦旅です。私立幼稚園を経営されているご夫婦は、かねてから室内履きの草履に関心があったそうです。そんなときに出会った角館草履がツボにはまったようで、ご家族分4足のお買い上げと相成りました。

奥様が特に気に入ってくださったのは、「土踏まず付き」。幼稚園では知的障がいを持つ児童の受け入れにも積極的だそうで、そうした子どもたちに裸足で園庭をかけっこさせるそうですね。するとそれまでできなかったことにも積極的に取り組むようになるなど、他の生活面で良い効果が出るといいます。

『足裏の刺激が脳に良い効果があるのは、ほんとですね』とおっしゃる奥様の言葉は、日常に子どもたちと接している裏づけがある分、説得力を感じました。
幼稚園や保育園といった施設ばかりでなく、自宅敷地や公園でも子どもを素足で遊ばせる環境作りが進むといいですね。

こちらのご夫婦は今夜から角館に連泊するそうですが、檜木内の紙風船上げはご存じなかったようです。情報を得た奥様は、『連れて行ってもらえるか、ホテルに相談してみますぅ』。

漆黒の夜空に悠々と上がり続ける紙風船。日常にはありえない幻想的な風景を見られれば、それこそ脳にとても良い効果があるんじゃないでしょうか。
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高齢者とお金。

2013年02月08日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
黒地の金プリント自体がお洒落なんですが、これに紺無地を組み合わせるとまたお洒落感が際立ちますね。年齢問わずお勧めしたいところなれど、こうした配色は主にお若い女性がお選びになります。さて「今日の草履」はいかになるでしょう。

政治家が経済復興やデフレ脱却を説くときに、「高齢者の財布のヒモ」をよく話題にします。お金の要る子育て世代は消費に回す余裕がなく、お金の要らなくなった高齢者は使わず貯め込んでいる。だから高齢者がお金を手放す施策が必要というわけですね。

その意味は私も分からなくはありません。日常の商いで、たとえば家族分の草履を一度にお買い上げくださるのは、まず「おばあちゃん」と呼ばれる年代が多いです。家庭内の“財務大臣”に中高年の女性が多いのも、裏づけのひとつでしょうか。

今朝の新聞にコンビニのローソンが、20歳代後半から40歳代の社員に対して給料を上げる記事が載っていました。子育て世代の所得を増やすことで、今よりは消費に回すお金が生まれるということでしょう。甘利経産相もこれを評価しているそうです。

総じて現役世代より高齢者のほうがお金持ちというのは分かりますが、最近のニュースでちょっと驚いたのは、贈与税の優遇措置です。生前に親が子へ一定の金額を贈与すれば、それは課税対象になります。これが孫の教育資金の場合、一千万くらいの金額には課税しないという話でした。

政府が施策とするからには、予想される対象者がよもや10万人に一人なんていうことはないはずです。孫の教育資金をそんな大金で負担してくれる祖父母が、この国にはそれなりにいるんですね。それをまず驚いてしまいましたよ。

わが家の娘たちも、祖父母からいろんなタイミングでお金をもらいます。入学祝は親である私宛にもらいましたが、それは私の思う常識的な金額でした。祖父母に大金を願えるわけがありませんし、そもそも子供の教育資金は親の務め、祖父母に願ってはいけないことのようにも思えます。

最近までは葬儀費用を念頭に、「お金がないと死ねない」なんて言われてました。これからはお金がないと、「祖父母にさえなれない」時代が来るんでしょうかね。
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支えられている感。

2013年02月07日 | 家族の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
色調としては女性より男性向けのような気もしますが、23cmで編んでみました。でもそうした配色が売れないということは過去になく、どんな色でも必ずお選びになるお客様がいらっしゃるものです。むしろそれが楽しみでもありますね。

ときどきお見かけする地元のおばあちゃん、おそらく80歳代も半ばを数えるでしょうか。この雪の中でもしっかり歩いて見えますから、足腰は丈夫なものです。
『この寒んびぃ中に、よぐ頑張るなぁ』とにこやかな笑顔を向けられると、50歳の若造が照れ笑いしてしまいますよ。

ふと子供用草履に目を向けたおばあちゃん、『孫サ、ひとつ買ってってやるがなっ』。お孫さんの年齢を訊くと、未だ1歳と2ヶ月とのこと。草履を履きだす年齢としては、おおむね2歳半から3歳くらいでしょうか。『もう少し待ってがらのほうがいいんシべ』と言うと、『なぁ~んもだ。子供なんてすぐ大っきぐなる』とピンクの16cmをお買い上げくださいました。

このときのおばあちゃんのお顔、言葉、雰囲気で分かったのは、私に対する労いと言いますか激励なんですね。この寒さにお客様のいない静かな蔵の中で、ただひたすら草履を編む私の姿に、「なにかひとつ買ってあげよう」というおばあちゃんの気遣いが強く伝わりました。
地域のお年寄りに「支えられている感」は、これまで幾度となく体験しています。

先月下旬、次女からカミさんへ届いた一通のメールは、「SOS」。看護実習が進むにつれ心身共に疲れが重なり、いよいよ食事を摂る気力も失せたとのこと。このままではいけないことを自身が一番承知したのでしょう、「何日か来てもらえないか」のメールでした。

こういうときこそ「母の力」、私に相談の後すぐさまOKの返信をし、一週間ほどの予定で仙台を訪れています。次女の電話の声では、だいぶリラックスできたのが分かりました。それこそ母に「支えられている感」を、十分すぎるくらい感じていることでしょう。

時折りしも、長女が短大の授業をすべて終え帰省しました。カミさんが留守の一週間、わが家の食卓はまるで長女に支えられています。普段は食材や味に文句を言っている三女が、長女の料理に対しては黙って食べていますよ。無頓着な三女といえども、今のわが家には「支えられている感」を持っているんでしょうね。

まだまだ春は遠い寒さなれど、ちょっとだけ気分の良い今日この頃であります。
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角館の未来と人間性。

2013年02月06日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
色調としてはオーソドックスな男性向け草履です。和を生かした、言葉を選ばなければ「田舎くさい」こうした配色が、私としては角館草履の原点のようにも思えます。案外お買い上げくださるのは、都会の紳士かもしれませんね。

先月の末、明日から草履コーナーが三連休というその日、この時季にしてはお客様との出会いが多い一日でした。朝からお買換えのお客様が三人でお訪ねくださったり、「初角館」のおばさまとも複数お会いしました。そんな中でおふたりのおばさまそれぞれに言われたのが、『東北人には、なんか日本人の原点を感じるんです』。

おひとりは群馬県高崎市から、初角館をひとり旅で愉しんでいるおばさまでした。『一度来たいと思ってて、念願が叶いました』とおっしゃるおばさまは、角館草履にも縁を感じてくださりご自分用をお買い上げでした。

おばさまがおっしゃるのは、『群馬県は東京に近すぎてダメになった気がします。なんでも都会に倣う風潮が出来てしまって、群馬独特のものが廃れてしまったんですよね』。
比較して東北は今なお独自の文化を持っていて、そこに「日本」を感じるということでした。

こちらのおばさまがお帰りになって間もなく、やはりひとり旅を愉しんでおられる神奈川県川崎市のおばさまがお立ち寄りです。こちらのおばさまも角館草履に縁を感じてくださったのでしょう、迷うことなくお買い上げになりました。

『東北を巡って来たんですけど、どこへ行っても人間がいいですよねっ』とおっしゃるおばさまに、今しがたの高崎のおばさまの言葉をお教えしました。すると、『まさにその通りっていう気がしますよ』。

角館を訪れる旅人と日常に会話して、いわゆる「東北の良さ」には地元民の人間性を含むのがよく分かります。おそらくその点に「期待感」もあるのでしょうから、逆に私たちにすれば恐い条件かもしれません。

一昨日の晩、角館あきんど塾の例会がありました。座っていた周囲で話題になったのが、「観光地角館の今後」です。2014年には金沢までの北陸新幹線が開業し、2015年には函館までの北海道新幹線が開業を控えています。今年は大河ドラマで会津が有力ですし、世界遺産の平泉だってもちろん元気でしょう。

さて角館、春の桜まつりはまず心配ないとして、JR東日本と秋田県が主催するデスティニーキャンペーンと県種苗交換会の時期が重なる秋も、一定の賑わいは期待できると思います。

来年以降の角館はどんな様子になるのか、ひとまず「人間がいい」という評価だけは裏切っちゃいけませんね。
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おまかせシリーズ廃止について。

2013年02月03日 | 製作日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔五阡円〕
冬場の在庫作りでは、売れ筋の定番配色を編みためると同時に、「バラエティ」もまた大事な要素になります。大きめサイズでこうした真っ赤を作るのも、お客様にいろんな配色を見ていただくためですね。

「今日の草履」をずいぶん眺めていたのは、台湾からお越しの女性です。大柄な女性は、試し履きで25cm草履がベストでした。しばらく考えた末に、『スコシカンガエテ マタキマスゥ』とお帰りのまま、再度のお訪ねはありませんでした。
「縁」のあるなしは、どうにも仕方のないものです。

ネット通販の際にご利用いただく「ご注文フォーム」ですが、1月下旬から「おまかせシリーズ」を削除しました。これまで定番配色8種のほかに、赤系・紺系・黄色系・緑系・紫系のおまかせ5種がありました。「今日の草履」でもときどきご紹介していた通り、おまかせシリーズのご注文は結構あったんですね。

おまかせ廃止の理由は、色の曖昧さによるイメージの差異から、お客様のご満足を得られないことがあったからです。色というのはなかなか曖昧で、たとえば「深緑」も「黄緑」も同じ緑系で括っていますが、明らかにイメージが異なります。すると深緑をご所望の方に黄緑が届くと、『これはちょっと…』が起こりうるわけです。

おまかせシリーズを「深緑系」「黄緑系」、あるいは「赤紫系」などのように細分化するのは、布地の在庫が膨大な量になってしまうため現実的でありません。また編む前に布地を写真撮影し、お客様から可否の判定を待つというのもたいへんな手数になります。
ここは思い切って、通信販売は定番配色のみの対応がベストと判断いたしました。

今後定番配色を増やすことは、前向きに考えています。そして定番配色以外の一点モノの製作は、これまで以上に力を入れたいとも思っています。
「今日の草履」のように真っ赤な一点モノ草履は、今後通信販売ではご注文いただけません。ぜひとも西宮家角館草履コーナーへ足をお運びのうえ、思う存分眺めていただけましたら幸いと存じます。
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