角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ナイショ話。

2008年06月06日 | 家族の話


今日の草履は、東京都墨田区にお住まいの男性からの、メールによるオーダー草履です。過去の「今日の草履」をご覧になってのご指定でしたね、イメージ通りでしょうか。
こちらの草履はご自身用ではなく、岡山県のご実家に暮らすお父上へのプレゼントなんです。父の日の贈り物がまさかの「草履」、さらに事前に教えない“サプライズプレゼント”です。大好きですね、そういう遊び心。もうちょっと父の日に近づいてから発送しますねっ!

“サプライズプレゼント”も一種の「ナイショ話」ですが、この「ナイショ」が通じない人もいます。『口止めされてるんだけどサァ…』とかなんとか言いながら、手当たり次第喋り歩く人ですね。
でもほんとにこの人だけが「ナイショ」を知らない人なんでしょうか。その前にこの人に話題を提供した人、つまり『誰にも言わないでくれよぉ』と言って話を教えた人が、一番「ナイショ」を知らない人ですよね。

今年三月、わが家では三人娘全員の卒業と入学で多忙を極めていました。そんなある日、長女と次女とカミさんの三人で出掛ける用事があって、ちょうど昼飯の時間私と三女のふたりになりました。
その日もバタバタしていた私は昼飯を作るので面倒になって、三女とふたり近所にある食堂の自慢メニュー、「カツ丼」を食べに行ったんです。フツーわが家では、五人が分かれて外食するなんてことがありません。私と三女ふたりだけでカツ丼を食べる、ましてそれがナイショなんていうのは、言ってみれば“事件”に近いわけです。

ふたりで食べながら、『このことは誰サも言うなよっ』と三女に言いました。三女も悪戯好きなところがありますから、ニコニコ顔で『うん、うん』と頷いています。
でも私には分かっていました。三女は実に隠し事が苦手で、「ナイショ」と言われるとそれを言いたくて言いたくてウズウズするタイプなんですね。

食べ終わって自宅へ戻る途中、三女があることに気づきました。『とーさん、昼ごはん食べた跡がなければバレるんでねぇがっ?』。もちろんそんなことは承知していますし、仮にバレたところでカミさんが私たちを怒るようなものではありません。ここで私の悪戯心がふたたび芽生えます。三女に返した言葉は、『うん、大丈夫だっ。かーさんに昼ごはんのごど訊がれだら、“断食してらっ”って言えっ』。

夕方近くカミさんたちが帰宅すると、三女は昼の「カツ丼」を喋りたくてウズウズしています。かーさんから『昼ごはんなんとした?』と訊かれるのを、ひたすら待つ三女が見て取れました。
間もなくカミさんがスーパーへ買い物に行くと言います。三女はチャンスとばかりに、『あたしも行くぅ~!』。そして帰宅するなりカミさんが私へ、『なして断食よ?』。

事の次第を教え合い、二人で大爆笑です。どうやら三女は「断食」の意味を知らなかったようです。ウズウズが頂点に達した三女は運転しているカミさんへ、『ダンジキなんだどもなぁ…』と呟いたとのこと。食料を買いにスーパーへ行く車中で“断食”ですから、カミさんもワケが分からず三女に訊くと、言葉の使い方を誤ったのを察知したんでしょう。『えっ…んーと…とーさんが…ダンジキだって…』。
カミさんはてっきり私が晩飯を食わないと勘違いしたんですね。

三女がいつどのような場面で「カツ丼」を喋るのか楽しみにしていましたが、私が思っていたよりはるかに面白い結末となりました。
やっぱり悪戯心で悪いことは考えるもんじゃありません、あやうく私の晩飯が消えるところでしたねぇ。

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継続のヒミツ。

2008年06月05日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
桜うさぎピンクをベースに合わせは黄色、真ん中に緑を配してみました。定番配色では桜うさぎピンクにエンジを合わせてあるのですが、こうして黄色を使っても可愛いですね。さらに三色使いにすると、可愛らしさも一層と思います。

公開実演小休止の間の在庫作り、昨日から完全再開です。昨日の朝メール確認すると、一通のご注文が入っていました。まずはこちらからと編みはじめ、昨日の便で即日出荷です。受注から発送まで即日ですよ、この小気味の良さに自分で笑ってしまいました。
在庫作りのほうは、まず24cmを集中的に作る予定です。上半期は24cmを完全に足りなくしてしまいましたから、そのあと他のサイズへと進むつもりです。

米蔵スタッフのおひとりによく言われるのが、『こんなに休みナシでよく働けますねぇ』。
3月16日からはじまった今年の公開実演でしたが、上半期最終までの二ヵ月半はほとんどノンストップです。後半戦がはじまればその期間はさらに長いんですね。
私が返す言葉は、『火星人だがらだべっ』。「火星人」の意味は今年1月7日のブログの通りです。

先日のテレビで、とある温泉ホテルの名物女将が紹介されていました。経営するホテルに宿泊のお客様はもちろん、地域にある他店のお客様も自由に観られる「お芝居」を演じているという女将さんです。
脚本から小道具まで自身の製作にも驚かされましたが、もっと驚いたのは一年365日ほとんど休まず演じるというエネルギーのほうですね。年齢は私よりはるかに上ですから、私の「休まない」とは比較になりませんよ。おそらくこちらの女将さんも「火星人」じゃないですかね。

まず他人が考えるに『よくやれるなぁ』と思われる事柄は、本人にとってなによりそれが「好き」というのがゼッタイ条件と思ってます。「嫌い」あるいは「好きじゃない」ことは、短時間や短期間であれば耐えることも出来るでしょう。でもそれが一年中だったら、とっても出来るものじゃないですよね。

草履作りと共に『よく続くねぇ』と言われるのが、このプログなんです。さすがに一年365日と言うわけには行きませんが、確かによく更新してるとは思います。
毎日おおむね150人ほどがこのブログをお読みになっています。タレントさんや著名人のブログに比べれば「スズメの泪」でしょうが、角館という田舎で草履を編んでいる男のブログにしては、なかなか健闘している数字じゃないですかね。

ブログ読者を推測するに、やはりかつて実演で草履をお買い上げくださった方が最も多いでしょう。メールで追加や買換え注文をくださる方は、まず間違いなく読者のおひとりと思います。それがときに、この逆があるんですね。

十日ほど前でしたか、一息入れようと立ち上がって歩き出したところへ、ひとりのおばさまが入って見えました。そのおばさまは、明らかにニコニコしながら草履を見始めたんです。以前のお客様のお顔を憶えるのが苦手な私は、『前にもお越しでしたか?』と訊ねてみました。
するとおばさまは、『いえ、ブログはよく読むんシども、草履は初めて見ましたぁ』。

聞いてみるとおばさまは、角館のお隣り旧中仙町にお住まいで、以前から私のブログをよくお読みとおっしゃいます。そんなおばさまはご主人から、『そんたに欲しがったら一足買ってくればいいねがっ』と言われていたそうです。その日はご主人の所用に運転手としてお越しで、用事が済むまで時間が空くため西宮家をお訪ねくださったんですね。
『今日はどこから来た人が載ってるべなぁ…と思いながら読むんシものっ』。そんなおしゃべりをしながら、草履を一足お選びくださいました。

草履作りもブログ更新も、好きだからこそ続けられる。その「好き」というのは、楽しんでくださる方がいればこそです。先の女将が毎晩芝居を演じられるのも、その舞台を観て大笑いするお客様がいればこそでしょうね。

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町の食堂。

2008年06月04日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
赤と黒の網目プリントをベースに、合わせはエンジです。まずはオーソドックスな配色ですね、無難に選ばれそうな雰囲気です。

公開実演小休止に入ってから、連日好天が続いています。昨日と今日、二日連続で武家屋敷通りを訪ねてみました。青い空に新緑が眩しいくらいの美しさですが、やはり散策する人影はまばらです。絵描きのクマさんも少し退屈そうにしてましたねぇ。
修学旅行の季節ですが、昨日も今日もそうした姿はありませんでした。商売とは別に、修学旅行生は元気があって街も活気づきます。

五月末に西宮家を訪れた修学旅行生。札幌市にある中学校で、毎年北東北が旅行地なんだそうです。このときの旅行生が面白かったのは、昼食のお店でした。それぞれ班毎にお店を決めるのですが、聞いた店の名前がいかにもマニアックな「○○食堂」。
ホームページ公開しているとはとても思えず、『どこでその店を知ったの?』と訊ねてみると、『先生が一覧出してくれて、そこから選んだんですぅ』。先生からどこでその店を知ったのか聞きたいくらいでしたねぇ。

マニアックと言っても、決して味が良くないという話じゃないんです。実際そこのタンメンは私も食したことがありますが、なかなか旨かったです。日本全国どこの町や村でも「食堂」と呼ばれる店がありますが、一店一品自慢のメニューがまたあるもんです。わが家の近くにある食堂は「カツ丼」が自慢で、そりゃあ旨いですよ。

そして値段ですね。フツーの食堂は地元民を対象に営業していますから、明らかに高ければ誰も近寄りません。ラーメン500円からはじまりカツ丼で700円くらいでしょうか。このときの修学旅行生を見事と思ったのは、そうしたお店も対象にしていたからなんですね。イイじゃないですかっ、修学旅行で食べた昼飯が田舎のタンメン600円なり~!

んっ、そう言えば30年前私たちの修学旅行は北海道、昼飯はジンギスカンでしたなぁ。味も値段も忘れてますが、旨かったという憶えだけはありますよ。みんなで食えばなんでも旨いでしょっ。

そうそう、西宮家北蔵レストランの平日限定日替わりランチはお勧めですよ。680円でランチコーヒーが付いても780円、いわゆる食堂値段で凝った味が楽しめます。実演中は食べてる時間がないので、このお休み中に行ってみようかと思ってます。

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角館の「お休み」!?

2008年06月03日 | 地域の話


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
夜桜をベースに合わせはエンジ、真ん中にベージュ基調のうさぎプリントを配してみました。定番配色⑧の美しさに、ベージュが優しさを加えた感じでしょうか。
「今日の草履」は実際には三日前の製作で、今は在庫として来たる後半戦のために“お休み中”です。

今年の桜の異常開花はすでにお伝え済みですが、桜まつり実行委員会が発表した人出実績を見ても明らかな減少でした。発表ではおおむね20%減となっていますが、現場の話や私の実感ではもっと少ないと思いますね。
私もそうですが、みなさんの予想を超えたのはやはり「キャンセル」でしょう。『桜がない角館なんて行く意味がない』と考える人がこうも多いのは意外でした。もっとも「意外」と考えるのはこちらの勝手な思い込みがあるからで、これが現実と考えるのが賢明でしょう。

実は私たちの予測をさらに覆したのは、ゴールデンウィークが終わってからこれまでなんです。昨年と比較して明らかに散策のお客様が少ないんですね。私の実演席も、ときに冬を想わせる静かな日がありました。街に出ても人影がなく、『角館が定休日みでったなぁ』なんて苦笑いしたものです。
こういうマイナスの事実を地元民が、まして観光に携わる私が述べるのは非常識なのかも知れませんが、事実を事実として課題とすることが望ましいと思うわけです。角館は「魅力ある街」と信じて疑ってませんから。

ひとつの理由は明らかと思います。それはJR東日本が発売する大人の休日倶楽部「乗り放題チケット」が、昨年の五月から今年は六月に移行されたことです。
新幹線で降り立つお客様は、高い確率で西宮家を訪れると思います。昨年のゴールデンウィーク明け、このチケットでお越しくださった首都圏のおばさまたちとのおしゃべりは、ブログでもたびたびご紹介していました。それほど多くのお客様がこのチケットをご利用なんですね。
今月16日から利用がはじまるチケットで、今年も多くの方々が遊びに見えることを期待しています。

それはそれとして、秋田新幹線が開業して十年余りが経ちました。もしかしたらこれを恩恵とした「右肩上がり」は、そろそろ終焉なのかも知れません。
かつてサラリーマン時代、社長に教えられたひとつが頭をよぎります。『一年前と同じ仕事をしていては売上が一割落ちると思え』。つまり売上を維持するだけでも、仕事量は一割増やさなければならないということでしょう。
実際問題として、すべての業種が仕事量を単純に増やせるわけではないので、それに相当した「工夫」もあるでしょうね。

角館に遊びに来てくださる人を増やす工夫、凡人の私ごときが悩んだところで“休むに似たり”でしょうか。私に出来ることは草履作り、これだけはあまり休まず再開させます。

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ひとまず終了です。

2008年06月02日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
実に21種類の布地を合わせてみました。こうした配色はさすがに初めてです。タイトルはキャッチコピーになぞらえて、「じんせいいろいろ草履」でいかがでしょう。
使用したすべての布地が、これまで上半期の「今日の草履」にベース生地として登場しています。少しずつ残った生地を合わせた「今日の草履」は、上半期の実演をご覧くださったみなさま、そして実演席を彩った草履たちへの感謝の意味もあります。

「今日の草履」は、東京からお越しくださった母娘ペアさんのお母さんのほうがお持ち帰りです。こちらの草履と出逢ってくださった縁、そして上半期最終日に実演と出逢ってくださった縁をお話しすると、おふたりとも笑顔が明らかに増しましたね。

神奈川県厚木市からお越しの女性ふたり旅。うちのおひとりが草履をとても気に入ってくださいました。好きな配色にサイズがなかったため、二足のオーダーです。
草履と出逢えたことで、『ここに入って来て良かったですぅ』。この二ヵ月半こうしたお言葉を何人もから聞かされ、縁の「楽しさ」と「ありがたさ」を毎日感じることができました。

昨日をもちまして、西宮家公開実演はひとまず終了です。この二ヵ月半ほとんどノンストップで務めてきましたから、オーダー草履を除いて数日は手を休めたいと思います。もっとも実演のお休みは在庫拡充の意味が大きいですから、決してダラダラしているものではありません。
一昨日東京の仕入部長から、間もなく日暮里仕入れとの連絡をいただきました。また新たな生地が入荷することを思えば、腕がなるのも事実です。

後半戦が始まりますと、あとは観光シーズン閉幕の十二月まで長丁場です。後半戦には、お盆、大曲の花火、角館のお祭り、そして紅葉があります。春の桜まつりが一年のピークなんですが、桜まつりは冬場の在庫で対応ができます。これからの長丁場は頼れる在庫がない分、日々の積み重ねが重要ですね。

後半戦も、どうぞよろしくですっ!

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