角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

深イイ話。

2008年06月16日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
織物風の和柄プリントをベースに、合わせは紺です。6月8日の「今日の草履」と同じベース生地なんですが、やはり合わせを紺にすると「昔」のイメージが深まると思います。私は好きですねぇ、こういう配色。

島田紳助さんが出演する番組のひとつ「深イイ話」、なかなか面白いですね。わが家ではほぼ毎週観ている気がします。紹介されるエピソードのひとつひとつが「イイ話」なんですが、単純に「イイ」ばかりでなく「尊敬」に値する話がときにあります。
私が最近とあるニュースで知った話は、まさにそんなエピソードでした。

茨城県取手市に暮らす70歳代の女性は20数年前、病気の母上の介護と同時にご自身も病を患っていました。家族はふたりだけですから収入がありません。女性は市へ生活保護申請をし、受理されました。
数年後母上が他界されたのを機に、手に職をつけるため勉強をはじめます。少しずつでも収入が得られるようになった女性は、生活保護の取り消しを自ら申請したんですね。

それから20年、現在はフツーに年金ももらえる状態になった女性は、あることを決意します。
当時生活保護費受給にあたり、親身になって相談にのってくれた市の職員へ電話し、自宅へ来てもらいました。そして見せたものが預金通帳、『あれから20年、コツコツ貯めたお金がここまでになりました。このお金をぜひ市へ寄付したいんです』。その額は百万円でした。

驚いたのは市の職員です。後のコメントに、『いまどきこれほど律儀な人がいるなんて…』と語っていました。そして念願の寄付を済ませた女性のコメントは、『これでようやく肩の荷が降りました』。

この話を知って、女性の想いに一番心を打たれたのはそうなんですが、もうひとつ思ったのは市の職員ですね。20数年前女性が生活保護申請をしたとき、こちらの職員の対応がことのほか良かったんでしょう。女性が20年もの間この気持ちを持ち続けてこられたのは、困ったときに出逢った「人の心」と思うわけです。

「寄付」の心は女性の律儀さが大きいと思うんです。でもそれだけなら市の窓口誰でもイイわけですよね。その話をしたいためにその職員へわざわざ電話したことに、職員の過去の「仕事」が見て取れます。当時職員の年齢は30歳の若者、他人が20年間も忘れられない仕事をしたとは頭が下がります。おそらくですが、彼もまた誰かに助けられた経験があるんじゃないですかね。

明日から公開実演再開です。さすがにこれほどの「深イイ話」はそうそうないでしょうが、実演席でのお客様とのおしゃべりを、「楽しく」「大切に」したいものです。

コメント
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