角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

寒い土地から暖かい便り。

2011年10月03日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔4,000円〕
【2012年1月1日より4,600円】
秋色を念頭に配色してみました。濃淡の組み合わせですが、どちらも落ち着いた雰囲気が「秋」を想わせますね。
ベースは縁起物のふくろうプリント、「不苦労」ということなのでしょう。




ここ数日寒い日が続いていましたが、今日の寒さはまたひとしおでした。散策のお客様も晩秋から初冬の出で立ちで、寒さのせいか歩行スピードが若干速く感じられました。
東京からお越しのご夫婦は、『八幡平にいたんだけど、雪でバスが運行中止になっちゃって。私らはまだ夏のつもりなんだけどねぇ』。
確かに9月いっぱいが夏休みの首都圏であれば、10月3日は夏に近いかも知れません。

週間予報によると、この異常低温もまず今日まで。明日からは20℃前後の平年並みに戻るようです。よもや紅葉を見ずに里にも雪が降るとは思ってませんが、そうでなくとも短い秋の観光シーズンを、もっと存分に愉しませて欲しいものです。

実演席の丸太椅子に腰を下ろし、時間にして30分以上を実演見学とおしゃべりに費やすお客様は、年間相当の人数に及びます。さすがにこの時間すべてを草履談義というわけには行かず、むしろ半分以上は草履以外の一般的な話題が多いです。特に角館人ならではの情報はとても喜んでくださいますね。そしてそんなおしゃべりが、私が考える以上に「旅の想い出」となる場合があるようです。

今日実演中に私のケータイが鳴りました。表示された番号で「北海道」ということだけは分かりましたから、ということは自宅電話からの転送です。以前に『カニ要りませんかぁ?』のような電話に出たことがありますが、とりあえず電話をお受けすると、『あのぉ、角館の草履屋さんでしょうか?』。
草履のお客様と思しき電話の声は、まず「おじいちゃん」と呼ばれるご年齢を想像しました。

『平成20年の春に妻と角館を旅行しまして、そちらの草履を買い求めました。ずーっと履いておったんですが、いかにも古くなりましてねぇ。私の分と妻の分、新しい草履を送ってなどはいただけるものでしょうか?』。

一週間ほどで新しい草履をお届けできる旨をお伝えすると、『いや~、良かったぁ。そちらへお伺いしたときに、角館の美味しいお店を教えていただいたり、いろんなお話を聞かせてもらったんですよ。妻とときどき思い出して話しているんです』。

お届けする住所など、電話の聞き取りで間違いがあるとタイヘンなので、FAXを送っていただくことになりました。実演が終わり帰宅すると、間違いなく一枚届いています。
さけいや草履工房様の後に綴られた言葉は、『お元気で頑張っているとのこと。大変嬉しく思っております』。

電話でお伝えしたご希望配色は特に記述がなく、代わってあるのは「男子用73歳・女子用68歳」の文言です。おそらく配色は私におまかせくださったのでしょう。
住所は北海道の中でも寒さ厳しい「十勝」でした。角館で寒いなんて言ったら笑われそうな土地で、73歳と68歳のご夫婦が角館旅行を懐かしみながら草履のご注文をくださったわけです。

さて、どんな色の草履をお作りしましょうか。
コメント
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