
<生地詳細・素材感>
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23cm〔3000円〕
赤のいらかをベースに、紺基調の絣風生地を合わせてみました。和の雰囲気がなかなか良く仕上がったと思います。この絣風もほんの僅かしかなかったため、こちらも「世界にひとつだけ草履」となりました。
今日家族5人で出掛けて来た場所というのは、県の施設「動物管理センター」です。迷い犬や捨て猫などが最後に集められる場所で、大半のこうした動物たちはここでこの世とさよならします。
今わが家では、「犬を飼ってみようか」という話題になっています。三女が特に動物好きで、「犬を飼う」のは彼女の最大の念願と言ってもいいくらいです。
三女がまだ小さい頃は、生き物を飼うのはたいへんなことだから‥という理由で断念させてきました。しかし、もうこの理由を当てはめるほど子どもではなくなっています。
そしてもうひとつの理由が、私自身なんです。草履職人となってからは、朝から晩まで座りっぱなしの生活になっています。元来スポーツ好きでもありませんから、運動不足がますます顕著になってるんですね。今はまだ若いからイイのですが、このまま何十年か経ったらいよいよ深刻な問題になりそうです。
そこで犬でもいたなら、否応なしに散歩するんじゃないかと思ったわけです。朝の早起きは問題ないですし。
知人に自他共に認める「犬博士」がいます。こちらの方とこんな話をしているうちに、「動物管理センター」の存在が話題に上りました。ネットで調べているうちひとつ疑問に思ったのは、年間1000の単位で動物たちが殺処分されているのに、新たな里親に引き取られる数が極端に少ないことです。
施設へ伺うと、対応してくださる職員が会議中とのことで、その間ビデオを拝見しました。施設の業務を紹介しながら、人間の都合で殺されていく動物たちの哀しさを綴ったものです。
ビデオが終わると、間もなく職員の方とお話できました。今日は殺処分を待つ犬がいないこと、里親となるのは簡単でないこと、犬は誉めて躾ること、決して叩かないこと、ほかにもいろんなことを教えてもらいました。
私が疑問に思っていたことをお尋ねしてみました。里親が少ない現実についてです。理由の一つは、「簡単には引き渡せないこと」にありました。
動物たちがこの施設に行き着くまでに、実に多くの苦難を経験しています。あちこち追いやられ安住の地がない、叩かれ蹴られ生傷が絶えない、満足な食餌を得ていないなどなどですね。
人間を「主」と思えない環境に長く置かれた動物を、いっときの感情で「飼ってみようか」と思ったところで、そううまくはいかないのだそうです。だいたいの場合が挫折し、また同じように捨てられるんですね。
そしてもうひとつ怖いのが、挫折した人間側の感情と言います。『私は犬を育てられなかった‥』の想いが、その後の生活から動物を排除してしまう。施設としてはこれも本意ではないということでした。
そのために施設は、こうした動物たちに人間への信頼を取り戻させ、また新たに躾け直してから里親を探すことに決めているんだそうです。躾直しを「リトレーニング」と呼ぶそうですが、年間1000の単位の動物をリトレーニングするのはとても現実的ではなく、結果里親に引き渡される動物の数はほんの僅かになるわけです。
現在、三匹の犬がリトレーニングされていました。そのうちの一匹と「リードウォーク」の練習をさせてもらいましたが、可愛いですよ、どの犬も。この犬たちを捨てた飼い主、やむにやまれぬ事情があったと思いたいですね。
でもこの三匹は幸せなんですよ、やがてリトレーニングが終われば新たな飼い主と巡り会えるんですから。可哀想なのは、リトレーニング犬に選ばれず死んだ多くの動物たちです。
ビデオに登場していたのは、30数年のキャリアをお持ちで、先日定年を迎えられた職員の方です。この方が言ってました、『選ぶこの身がつらい‥』。
わが家が犬を飼うかどうか、これから家族会議を重ねます。結論はまた後日ご紹介するとして、今日の施設見学は大きな意味がありました。
犬は動物のひとつです。そして人間もまた動物のひとつです。わが家がもし犬を飼ったなら、それは四人目の子どもとして育てるでしょう。
今日の施設職員のお話には、「犬」「猫」という言葉がほとんど出てきません。呼び名はいつも、「子どもたち」でしたね。