角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

仲良し家族。

2007年04月01日 | 実演日記

<生地詳細・素材感>

今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ24cm〔3000円〕
青のいらかをベースに、青基調の絣風生地を合わせてみました。ところどころに赤が顔を出す色調がなかなかイイ感じです。こちらも「世界にひとつだけ草履」になりました。

東京都杉並区からお越しのご家族、お母さんと二十代前半の娘さん、そして二十歳くらいの息子さんの三人旅です。秋田市に暮らすおじいちゃんのところへ来て、その帰り足に角館へお立ち寄りとのことでした。

娘さんが真っ先に草履を気に入ってくださり、「土踏まず付き」でオーダー決定です。続いてお母さん、『私も土踏まずが付いたのにする!』。それまで寡黙にしていた息子さん、おもむろに試し履きへと足を乗せました。するとお母さん、『あらっ、あんたも欲しいの?』。
最後にお母さんがお金を払おうとすると、その息子さんがすーっとお金を出しましたね。結局、とっても仲良しのご家族なんですよ。

神奈川県鎌倉市からお越しのご家族、7~8人くらいでお越しでしたから、続柄は一見しただけで分かりませんでした。うちの明らかに姉弟と分かるお二人、お姉さんは高校生くらい、弟さんは小学校高学年とお見受けしました。
ほかのみんなが米蔵の中へ入っても、その二人だけは実演席から進もうとしません。男の子へ『座って見ててイイんだよ』と言うと、ニッコリ微笑んでベンチに座りました。次にお姉さんへ『試し履きしてもイイよ』と言うと、『えっ、イイんですかっ!』。これまで試し履きを勧めて、これほどの笑顔を見せてくれた方はいないと思います。

しばらくして、さらにその上のお姉さんと思しき女性が戻って来ました。妹へ、『欲しかったらお母さんにねだればイイじゃん!』と言ってましたが、彼女は明確な返答をしませんでした。
間もなくご家族全員が実演席に集合です。さっきのお姉さんがお母さんに、『欲しいみたいだよ、買ってあげれば?』と言うと、今度はすかさず返答しましたね。『イイの、自分のお金でも買うから!』。

二人だけずーっと実演を見ていたのを、お母さんは知っていたんですね。男の子へも『欲しかったら買ってあげるよ』と言うと、男の子は大きく頷きました。そのときのお母さんの言葉が印象的でしたね、明るく微笑みながら、『滅多にモノを欲しがる子じゃないから』。

なんと言いますか、ときおり草履との「運命的」な出逢いを感じる方がいます。こちらの姉弟も、きっとそんな出逢いだったんじゃないでしょうか。作り手としても、この出逢いに感謝したくなります。

さて明日は一日実演をお休みして、家族でちょっと出掛ける予定です。今日のご家族のようにいくかどうかわかりませんが、できるだけ「仲良し家族」を努めたいと思います。

コメント
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