角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

祭りより草履作り!?

2006年08月02日 | 実演日記
今日の草履は、一般綿生地シリーズMサイズ23.0cm〔靴サイズ24cmまで可・・・3000円〕
エンジ基調のいらか模様をベースに、緒は濃い青にしてみました。これまでもそれぞれに使用していた生地ですが、今日はじめて合わせてみました。ご年齢を選ばない草履になったと思います。
この草履は、作り終えるのを見届けてくださった、大潟村からお越しのお母さんがお持ち帰りです。

暑かったです、ただただ暑かったです。梅雨明けが発表されたようですが、そんなことはどうでもイイです。冷房の届かない米蔵イベントホールに、この暑さはキツいです。

今日も子どもを含むご家族連れで賑わいました。
北海道苫小牧市からお越しのご家族、お父さんにお母さん、小学2年のお兄ちゃんと保育所に通う弟さんの4人旅です。

例の通り、子ども二人だけが実演ベンチに座っています。近年高校野球でその名を轟かす苫小牧ですが、お兄ちゃんが一生懸命野球の話をしてくれました。
『ふ~ん、じゃあ君も野球やってるんだ?』と尋ねると、少し声が小さくなって『やってない‥』。
間髪入れず弟が口を挟みます、『ピアノなんかやめたいんだよねぇ』。するとお兄ちゃん、『ピアノも塾もみんなやめたい』。
会話の途中からお母さんが子どもたちの後ろを歩いてましたから、おそらく最後の言葉は聞こえたと思います。苦笑いでもしているかと思いお母さんの顔を見上げると、その顔には笑顔の欠片さえありませんでした。もちろん私に対してなんのアクションもなく、子どもたちを連れて米蔵を後にしました。
大きなお世話はできませんが、小学生の今、好きなことをさせずにどうするんでしょう。

夕方近くにお越しの奥様、秋田市からおひとりでお見えです。
『陶芸をはじめたいと思って、関心があった窯元を訪ねたんだけど、道が分からなくなって角館に来ちゃった』と笑っておいででした。今度は、偶然出逢った私の草履に興味津々です。
『私、これ作りたい!』とおっしゃり、即決で草履台のお買い上げです。見本の草履と1足分の材料をお持ちになり、いそいそお帰りになりました。
帰り際、『今晩からでも作るんシか?』と尋ねると、『もちろんやりますヨ!』。

明日から秋田市では「竿灯祭り」がはじまります。今年も多くの観光客が、その芸とお囃子に酔いしれることでしょう。
そんな祭りの喧騒をよそに、自宅の一室で黙々と草履作りに励む奥様を、私はむしろ尊敬したいと思います。
角館のお祭りの夜に草履を編むなど、私には到底真似ができませんから。
コメント (2)
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