角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

命を削るのが「作品」。

2006年08月03日 | 実演日記
今日の草履は、7月21日、お隣り大仙市からお越しくださった奥様のオーダー草履です。
『紺系でシックに、帯は細めで‥』がこちらになります。二週間のお約束ギリギリになってしまいましたが、本日の便で出発しています。

今日も引き続き暑かった角館。それでも、昨日の暑さが記憶に新しいためか、「予測能力」が働きます。暑さに慣れるということは、この力かもしれません。

朝一番のお越しは大阪からのご夫婦、揃ってオーダーくださいました。
『これから竿灯見物ですか?』とお尋ねすると、『いえいえ、できるだけ賑やかなところは避けたいんです』。
青森ではねぶたが始り、秋田では竿灯も幕を開けました。普通はそれらを目指して一挙東北へ‥という感じなのですが、いろいろなお客様がいらっしゃるものです。

展示パネルに飾ってあるひとつの草履を指して、『うわ~、この配色素敵!日本の祭りが表現されてる感じがイイわ~』。
そういう誉め方をされた経験が少ないことを伝えると、『あ~、一応私も絵描きだから、やっぱり配色が気になるのよね~』。
なんとこちらは女流画家さん、ゼネコンの業界紙に載せる「日本の建造物」の挿絵を担当してらっしゃる方でした。
「画」と言えば、もちろん私の後ろに飾られた「ふたつの分身」。この画の話を教えると、『ん~、イイわね~、あなたは素敵な仕事してる。私にもその草履頂戴!』。

こちらの女流画家さんとのおしゃべりで、共通したある想いを発見しました。
画家さんは二年に一度、銀座で個展を開かれるそうです。そのために出品する作品はおおむね30点、この四分の三がご売約となるそうですが、売れる喜びの反面、なんとも言えない寂しさがあるとおっしゃいます。
『作家って、命を削って作品を世に出しているんだと思うの。売れていく作品は、すべて私の命なのよ』。

この言葉、妙に共感する部分があるんです。朝6時から草履作りをはじめて、西宮家で9時間、その後自宅で2時間程度は作ります。それでも出来上がる数はそう多くありません。それが、お客様の多い日は半日で売り切れます。これを商売にしているわけですから、売れなければ死活問題です。素直に喜べばいいものを、心のどこかに僅かな寂しさがあるんですね。そう、双六ゲームで「振り出しへ戻る」に当たったような‥。

まぁ、こういうのは作り手の「わがまま」のようなものでしょうから、明日から西宮家にお立ち寄りのみなさま、どうぞご遠慮なくお買い上げください。もっとも、展示してある僅かな在庫からで恐縮なんですが‥。

コメント (2)
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