緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

R.サーインス・デ・ラ・マーサ作曲「カスティーリャの歌」を聴く

2019-04-07 21:25:56 | ギター
レヒーノ・サーインス・デ・ラ・マーサの自作曲の中であまり演奏される機会はないが、いい曲がある。
「カスティーリャの歌」という曲だ。
この曲を初めて聴いたのは高校3年生の時、FMラジオで流れていたアリリオ・ディアスのライブ演奏だった。

この時の演奏をカセットテープに録音したのだが、NHK-FMのアナウンサーはこの曲の題名を確か「スペイン風~」と言っていたように記憶している。
「スペイン風」の後が思い出せない。
そんなわけでこの曲の正しい題名はわからずじまいで、東京に出てきてからこの曲を弾きたいと思って楽譜を探したけど見つけられなかった。
1990年代の初め頃だったと思うが、マリア・エステル・グスマンが初めてレコーディングしたCD「スペインの詩」(その前にも一発録りのようなCDが出たことはあったが)にこの曲が収録されており、そこで初めてこの曲の題名が分かることになる。



しばらくして楽譜も手に入れたが、曲を完成させるには至らなかった。





8分の3拍子の舞曲風の後半部が印象的だ。
イ長調に転調したあとの特徴的なフレーズは、ギター愛好家であればどこか他のギター曲で似たようなものを聴いた記憶が蘇るに違いない。





スペインのカスティーリャ地方に古くから伝わる民謡のような歌なのであろう。

私がFMラジオで聴いたのが1981年だったが、同じアリリオ・ディアスのライブ録音で1990年代のものがYoutubeにあった。
ディアスの愛奏曲の1つなのかもしれない。

Alirio Diaz-Canciones Castellanas (Regino Sainz de la Maza)

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バリオス作曲「マドリガル」を聴く

2019-04-06 20:47:51 | ギター
昨日からある曲が頻繁に心に流れてくる。
バリオスの「マドリガル(ガボット)」だ。



昨日、いつもよりちょっと大きな仕事の山を越え、ほっとした頃からだと思う。

アグスティン・バリオスの曲の中で最も好きなのは、「前奏曲ハ短調」、次に「最後のトレモロ」、「大聖堂」、「マドリガル」、「蜜蜂」、「情熱のマズルカ」と続く。
この「マドリガル」を初めて聴いたのは大学生の時だ。
兄がせっせとFMラジオから録音したカセットテープを聴かせてもらったのだが、演奏者はジョン・ウィリアムスではなかった。
奏者の名前をはっきりと記憶していない。
社会人になって、ジョン・ウィリアムスの1970年代のバリオス集の録音カセットを見つけて聴いた。

この「マドリガル」は最初から好きなわけではなかった。
本当にいい曲だと思うようになったのは今から10年くらい前だった。
何故かわからないが、じわっと時間をかけて好きになってくる曲なのだ。
10年くらい前に、聴くだけではなく実際に演奏も手掛けた。
バリオスらしい左指の拡張を強いられる箇所があるが、それほど難しい曲ではない。

この曲の魅力は何だろう。
短い曲であるが、とても強い感情が凝縮されている。
短いけど、作者の様々な心情が一筆書きのように移り変わっていく。
その心情の変化の表現、構成が素晴らしい。
冒頭の主題は後でも再現されるが、何かめんどうなこと、ちょっと大変だったことが片付き、開放された安堵感の中での幸せな気分、何か楽しいことをしたい、あるいは楽しかったことの回想、嬉しいながらも落ち着いた心境、そんなイメージが湧いてくる。

そして短調に転調するが、この部分が最も好きだ。



すごくいいフレーズだと思う。
悲しいけど悲痛ではない。
不思議な悲しさだ。
転調後の3小節目、1拍目F#の音。



ここがこの曲の最大のポイントだと思う。
このF#の音にとても強いものを感じる。
何か心にとても強く喰いこんでくる。
自分が演奏するときは、このF#の音はアポヤンドで強く弾く。
そして、5小節目、6小節目も好きだ。



6小節目、3拍目のやはりF#の音が心に響く。
13小節目の3拍目も同様だ。



小品で、長調、短調と続く曲で、これほどつながりが自然でかつ、短調のフレーズが、重く感じさせないけど、何か「美しい純度の高い悲しみ」とでもいうのであろうか、純粋なものを感じさせてくれる曲は極めて少ないのではないかと思う。

この短調が終ったあとに冒頭の主題が再現され、ニ長調に展開される。
このニ長調のフレーズは、穏やかな春の、静かな陽気を感じさせる。
丁度今日のような穏やかさ。
厳しかった季節(環境)を抜けて、明るい穏やかかなものに浸る。

バリオスは組織に属さなかったから、年老いても感情や感性が豊かで、鋭かったのであろう。
あるいは元から天性の敏感な感受性に恵まれていたに違いない。

バリオスの曲は、あまり情景描写の要素は感じない。
むしろ、人間の日常の心情、それもとても根源的で強いものを感じさせてくれる。
それもギターという楽器で。
彼がギターという楽器に全てを注いだことが、曲を通じて伝わってくる。

バリオスの曲は純クラシックと呼べないかもしれないが、聴く人の気持ちに強く共振するものを持っている。
人が忘れてはならない感情を蘇らせてくれる力を持っているのではないかと思う。

下は、1970年代のジョン・ウィリアムスの録音。
残念ながらYoutubeねアップロードされた音は大変悪くなってしまっている。
オリジナルの音源はもっといい音だ。

John Williams (1977) plays Barrios Madrigal Gavotte
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