緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

静岡大学マンドリンクラブ第54回定期演奏会を聴く

2017-12-16 23:40:57 | マンドリン合奏
今日(16日)静岡駅近くのしずぎんホールユーフォニアで、静岡大学マンドリンクラブ第54回定期演奏会が開催され、聴きに行ってきた。
11月下旬のリフレッシュ休暇の途中でひいたたちの悪い風邪がよくならず、体調も今一つであったが、プログラムに「細川ガラシャ」と「星空のコンチェルト」あるので何としてでも行きたかった。
静岡といっても自宅からは遠い。しかしちょっといつもより早く起きれば当日日帰りで行ける距離。前日は勤務先の忘年会であったが、酒は殆ど飲まずに早く切り上げた。
静岡大学マンドリンクラブのTwitterに、「星コンやります! ガラシャやります!」、「東京から静岡まで東海道本線で三時間と少し。小旅行気分で静岡大聴きに来て欲しい。」と書いてあったが、この言葉、熱意に引き寄せられたか.

静岡には30年くらい前に行ったことがあるが、殆ど訪れる機会のない所。駅前でも人通りは多くなく、綺麗でいい町という印象を持った。
ホールは小ホールだが、音響はなかなかのもの。音の小さいギターも十分に響いていた。

大学のマンドリンクラブの演奏を聴き始めて、4、5年は経つが、正直、当たり外れが大きかった。
厳しい練習を重ね、聴き手に大きな感動を与えてくれる団体もあれば、下を向いてばかりで、未熟で、残念ながら何の感動も感じさせてくれなかった団体もある。
どの団体がすばらしいのか、はっきり言うと、聴いてみないと全く分からない。
しかしはっきり言えるのは、いい団体とは、「この一生に一度しかない感情共有の場」に対して、「これ以上ない最大限の準備をして、聴き手と最高の出会いと感動を分かち合いたい」という気持ちをメンバー全員が強く持っている、ということである。そこにメンバーが強く意識し、価値を抱いているか、ということである。

結論から先に言うと、静岡大学マンドリンクラブの演奏はとてもすばらしかった。
この4、5年かなりの数の団体の演奏を聴いたが、満足度では今まで聴いた中でトップクラスと言っていい。
総勢25名ほどの小所帯。管楽器やパーッカションはもちろん、OB、OGなどの賛助も無い。
しかし技巧レベルが非常に高かった。
1年生を含めたトータルでもレベルが高い。
伝統的に基礎技巧を徹底的に練習に取り入れていることが分かる。
曲よりも基礎練習。これがもっとも大切。フォームの確立、左手、右手の脱力、音階、半音階、ピッキング、ハイポジションの安定、確実な芯のある弾弦、ぶれないトレモロ、等々、基礎技巧をまずは徹底して叩き込むことが何よりも必要なことだ。
オープニングの小曲を聴いて、この団体の技巧レベルが高いことがすぐに分かった。

さて今日のプログラムは以下のとおり。

Ⅰ部
教会に眠るねこ  作曲 湯淺 隆 吉田 剛士

劇的序楽「細川ガラシャ」  作曲 鈴木 静一

Ⅱ部
アンサンブルステージ
Back to the Future  作曲 Alan Silvestri
虹  作曲  森山直太朗  御徒町凪
運命の人  作曲  草野正宗
Friend Like Me  作曲 Alan Menken
ひまわり  作曲 葉加瀬太郎

合奏ステージ
HIGHLIGHTE FROM HARRY POTTER  作曲 J.Wiliams
学園天国  作曲 井上忠夫

Ⅲ部

組曲「降誕祭の夜」  作曲 A.Amadei

外洋へ向かって  作曲  E.F.Braein

星空のコンチェルト  作曲 藤掛廣幸


第Ⅰ部1曲目の「教会に眠るねこ」は、ややリズムの刻みの難しい出だしで始まった。
伴奏のギターのアルペジオの音が良く抑制されていて、それでいて美しい。
1年生を除く人数での演奏。各メンバーがソロのようなものだ。しかしどのメンバーもミスが殆ど無く上手い。
音量のコントロールとバランスが良く考えられている。ppとffのレンジがとても広い。
マンドリンの単音の強音の芯がとても強い。

2曲目は鈴木静一の「細川ガラシャ」。
この曲は私も学生時代に弾いたが、ギターの箏の奏法を彷彿させる非常に美しい日本的情緒を感じさせる人気曲である。
この4、5年で学生団体の演奏会でも3、4回は聴いた。
出だしは激しいかき鳴らしで始まるがすぐに難しいパッセージが続く。このパッセージの弾き具合で、演奏する団体のだいたいの実力が分かるものだ。
静岡大学マンドリンクラブははたして完璧な演奏であった。
技巧だけではない。アクセントの付け方、強弱のバランスも見事だ。
この強弱の付け方が人数の少なさを補っている。
ギターの音もいい。
中間部のあの極めて美しい、ギターの悲しい伴奏が奏でられる部分。素晴らしかった。





そして聴くうちにあることに気付いた。
コンサートミストレスが物凄く上手いのだ。確実な安定した技巧。ポルタメント。音の流れ、美しさ。本当に素晴らしい。この部分の旋律を聴いて、お恥ずかしことであるが自然に涙が溢れてしまった。こんなことは滅多にないが。
それにしても何と悲しい旋律であろうか。ガラシャの悲痛な無念の気持ちが強く感じ取れた。

第Ⅱ部の前半は4年生だけのアンサンブル。
マンドリン、ドラ、セロ、ギター、ベースの各1名、5名だけの小アンサンブルであったが、みんなとても上手い。
とくにギター(女性)はとても上手い。この奏者のレベルも今まで聴いたなかでもトップレベルと言えよう。
2曲目はNコン中学校の部課題曲からの編曲。
最後の「ひまわり」は4年生が1年生のときに演奏したという想い出の曲。
マンドリンのリズムの強い刻みに4年間の凝縮した気持ちを十分に感じた。

第Ⅱ部は、卒業していく4年生が主役のステージ。
後半は1年生も含めての合奏。
しかしその前に4年生のギター(女性)とセロパートの4年生のギターとの2重奏が挿入された。
これがまた良かった。
2人ともとても上手い。男性の方はセロパートなのによくここまで弾けるものだと大いに感動した。
この男性のギターの音が柔らかくとても良かった。
このあと4年生3名が仮装でちょっとした余興があったが面白かった。卒業していく4年生を大切にしているんだなあ、と感心した(自分の学生時代には無かった)。
合奏ステージは指揮者の予期しない仮装が聴衆の笑いを誘っていたが、曲も楽しめた。

第Ⅲ部1曲目はアマディの「降誕祭の夜」。
アマディの曲は1週間前の立教大学の定期演奏会でも聴いたが、青空の海を連想させる明るい曲。
第1楽章は激しいリスムの刻みがあるが、綺麗な響きに持っていくのは難しい。
第2楽章も明るい曲想。波のゆらぎ。マンドリンのppとffの表現がとてもいい。
第3楽章は祭りらしく、華やか。イタリア人との国民性の違いを如実に感じさせる。

第二曲目「外洋へ向かって」は恐らくはじめて聴くだろうが、ノルウェーの作曲家の曲。

さて最後の曲は、藤掛廣幸の「星空のコンチェルト」。
この曲を初めて聴いたのが今から15年くらい前の30代後半の頃。藤掛廣幸の事務所から直接買ったCDで聴いたときであった。
生演奏では2年前に母校の定期演奏会で聴いた。
冒頭の2stマンドリンソロから1stマンドリンに引き継がれる旋律があまりにも美しく、この部分を何回繰り返し聴いた分からない。





人の心の核を通す旋律。理屈で生みだせる旋律ではない。いろんな人生の積み重ねから生まれ出る音楽。
ここでもコンサートミストレスの音が美しかった。

それにしてもこんな少ない人数でここまで強い音を良く出せると思う。
もう少しベースの音が強く欲しいとは思ったが。
中間部のフーガの技巧を要する部分、ドラの超絶技巧も決まっていたし、マンドリンも殆ど破綻がなかった。速度の選定は難しかったに違いにない。
ギターのかき鳴らしの音も硬くなくていい。ギターの音質と音量はとても考えられている。
終結部の長調への転調部のマンドリンの音の揃った音には感動した。

静岡大学マンドリンクラブの今日の定期演奏会を聴いて、学生時代の母校の演奏との共通点をいくつか感じた。
まず、演奏に対して真面目で誠実であるということ。いい加減なものは無い。これは母校以上。
基礎技巧の確実性をまず感じたし、何よりも聴衆との一体感を前提に、最高の演奏をしたいという強い気持ちを感じた。
演奏者たちが地味で学生らしいということ。特段何も見返りを期待しない、ひたすら自分たちのベストを尽くすという、地方の国立大学らしさを感じた。
彼ら自身は特に意識せず当たり前のことをしたと恐らく思っているかしれないが、そこが大切。
影でとても感動している聴き手もいることも分かってもらえればなお嬉しい。
この4、5年でいろいろな学生団体の演奏を聴いたが、この団体には、なにか自分にとって同類というか、とても共感するものを感じた。

指揮は母校のものを彷彿させた。
打点を常に明確にする指揮。だから演奏者たちが指揮をよく見ていた。そこに強く感動した。
ひたむきな気持ち。
冒頭に、大学のマンドリンクラブの実力は聴いてみないと分からないと書いたが、この静岡大学マンドリンクラブの演奏はまさにそれを感じさせる演奏であり、マンドリン音楽鑑賞の素晴らしさを拡げてくれるものであり、彼らには真に感謝してやまない。


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4 コメント

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ありがとうございます (名乗るほどの者ではありません)
2018-03-04 16:58:28
我が子がお世話になっているクラブです。

お褒めいただき、

自分のことのようにうれしく思いました。

ありがとうございました。
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Unknown (緑陽)
2018-03-04 23:33:09
静岡大学マンドリンクラブ定期演奏会の記事にコメント下さりありがとうございました。
昨年12月に聴きた静岡大学マンドリンクラブの演奏は人数が少ないものの、とても素晴らしものでした。
私が聴いたマンドリン演奏会の中でもトップクラスでした。
演奏がハイレベルで正直驚きました。
曲目の中では「細川ガラシャ」もとても良かったです。あの旋律の美しさ、各パートのバランス感覚は生半可な練習では決して出せるものではありません。
それから数か月後に去り行く4年生のために、最高の演出をしていたことにも感動しました。
このようなことが出来るのは、メンバーにいい方がたくさんいるからなのですね。
素朴でいい大学ですね。自分の学生時代を思い出しました。
今年もプログラム次第ではありますが、聴きにいきたいと思います。
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昨年度はありがとうございました。 (すまく)
2018-12-13 10:53:54
昨年はお越しいただきありがとうございます。クラブ員の者です。
さて、今週末の12月16日ですが静岡大学マンドリンクラブの55回演奏会があります。
もしよければお越しくださいませ!
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Unknown (緑陽)
2018-12-13 23:19:56
すまくさん、はじめまして。コメント下さりありがとうございました。
昨年の演奏会、素晴らしかったですね。
とくに、細川ガラシャと4年生のギターの2重奏にとても感動しました。
4年生の寸劇も楽しめましたし、演奏会が終っても結構長い間満足感が続いたのも嬉しいですね。
結構マンドリンオーケストラの演奏会を聴いていますが、こういうのも何ですが、本当に感動する演奏って少ないです。
静岡大学マンドリンクラブは小所帯ですが、いい団体ですね。
素朴なのにとても上手い。
さて16日ですが、所用があり、聴きに行くことはかなり難しそうです。
メイン曲は柴崎利文の「雲の行方」ですね。
演奏、頑張って下さい。
成功をお祈りしております。
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