18世紀の終わりから19世紀の後半までの時代に膨大なクラシックギターの教育的作品が書かれたが、この時代に書かれた練習曲ほどクラシックギターの技巧的、音楽的成長に大きな効果をもたらしたものはないと言っても過言ではないと思う。
この時代に活躍したギター曲の作曲家はいずれもが演奏家であり、作曲家であり、教育者であり、多くの練習曲と優れた教本を残した。
とりわけ有名な人物は以下の6人と言われている。
①フェルディナンド・カルリ(1770-1847、イタリア:ナポリ⇒フランス:パリ)
②フェルナンド・ソル(1778-1839、スペイン:バルセロナ⇒フランス:パリ)
③マウロ・ジュリアーニ(1781-1829、イタリア)
④ディオニシオ・アグアド(1784-1849、スペイン)
⑤マテオ・カルカッシ(1792-1853、イタリア)
⑥ナポレオン・コスト(1806-1883、フランス)
この6人の中で、初級、中級のメソッドを確立し、膨大な優れた練習曲を残したのがマテオ・カルカッシであることは疑いのないことであろう。
いわゆる「カルカッシ・ギター教則本」と呼ばれる作品59番はクラシックギターの入門~初級~中級にかけての教程を網羅し、効果的な練習曲を漸進的に多数配置した優れた教本として、200年近く経過した現在でも命脈を保っているし、作品60番の「25の練習曲」は中級者が必ずと言っていいほど手掛けるバイブル的な存在として重要な位置を示す教育的作品として高い評価を得ている。
一時期、カルカッシは古い、音楽的価値が低いので取り組む必要性に乏しいなどの評価を聞いたことがあったが、的外れな見解だと感じる。
初級、中級の練習曲でこれほど技巧の習得効果と音楽的魅力を同時に豊富に備えた作品は他には見当たらない。
ソルの練習曲も初級作品はあるが、漸進的な配慮が行き届いているとは言い難いし、音楽的にも優れていると感じられるものはむしろ少ないように感じる。
私がクラシックギターを始めた年に、全音から出版されていた阿部保夫著「現代奏法によるカルカッシ・ギター教則本」を買って練習をしたが、途中で挫折してしまった。
この教本を買ったときのことはよく覚えている。札幌の東急デパートの楽器売り場で買って、帰りのディーゼル列車の中で読み、お昼頃には家に着いて早速弾いてみたことなど、なぜかその時の光景が断片的にではあるが記憶として残っているのである。
しかしその時は長続きしなかった。多分もっと有名な曲を無理してでも弾きたいという気持ちが強かったからであろう。
このときに無謀にもすでにアルハンブラを自己流で弾いていたし、なんと難曲、アストゥリアスも弾いていた。
高校に入ってからもあまり練習曲には目が向かず、弾きたい曲を自己流で弾くという楽しみ方をしていたが、高校を卒業して大学に入るまでの春休みのときに、何故か心機一転、この阿部保夫著「現代奏法によるカルカッシ・ギター教則本」を最初からやり直してみようという気持ちになって第Ⅰ部から順番に練習を始めたのである。
この時は第Ⅲ部のNo.33の練習曲まで進めることが出来たが、最後まで達成することは出来なかった。
しかし、この集中的なカルカッシのメソッドと練習曲の習得で、ギターの基礎的土台の構築が飛躍的に向上したという実感を得ることが出来た。
この時の練習ほどそれ以降のギター技巧の応用に役立ったことは無かったと今では思っている。
実際、大学時代に残した録音を聴いてもこの練習の成果が現れているな、と感じることが出来る。
今から10年前に第Ⅲ部をまた再度取り組んだことがあったが、これも結局最後まで進めることが出来なかった。
そして今回、今から1か月くらい前に、1曲ずつ録音して、無期限で50曲を完成させよう、という目標を立てた。
今日、その第1回目、第Ⅲ部No.1の練習曲の録音が終わった。
短い練習曲なので、マンドリン合奏曲や独奏曲の練習に入る前に最低1回は通しで弾いて習慣化することにした。
習慣化すれば時間はかかってもおのずと一歩一歩進めていくことが出来る。録音して50の作品集を自分の演奏で残すことが出来るという期待も得られる。
ちなみに阿部保夫氏はこの第Ⅲ部の練習曲に取り組みにあたって注意点を冒頭に述べているが、その中でとくに目を引くのは、アポヤンド奏法を使用することを何度も強調していることである。
「メロディは可能な限りアポヤンドを使う」、「特に単旋律は必ずアポヤンドを使用する」などである。
これはとても重要な練習要素だと思う。
私はアポヤンドをどちらかと言うと使う方であるが、学生時代に比べると使用頻度は減少したと思う。
それが原因かわからないが、アルアイレの音は昔の時代の音に比べ、細くなっているように感じる。
そのため初心に帰ったつもりでまずは阿部氏の指定どおりに従ってアポヤンドを使って練習することにした。
多分この練習の成果がアルアイレの音の変化という形をとって現れてくると期待している。
カルカッシ・ギター教則本Op.59第Ⅲ部50の漸進的作品集 No.1 アンダンティーノ グラシオーソ 2024年2月5日夜
この時代に活躍したギター曲の作曲家はいずれもが演奏家であり、作曲家であり、教育者であり、多くの練習曲と優れた教本を残した。
とりわけ有名な人物は以下の6人と言われている。
①フェルディナンド・カルリ(1770-1847、イタリア:ナポリ⇒フランス:パリ)
②フェルナンド・ソル(1778-1839、スペイン:バルセロナ⇒フランス:パリ)
③マウロ・ジュリアーニ(1781-1829、イタリア)
④ディオニシオ・アグアド(1784-1849、スペイン)
⑤マテオ・カルカッシ(1792-1853、イタリア)
⑥ナポレオン・コスト(1806-1883、フランス)
この6人の中で、初級、中級のメソッドを確立し、膨大な優れた練習曲を残したのがマテオ・カルカッシであることは疑いのないことであろう。
いわゆる「カルカッシ・ギター教則本」と呼ばれる作品59番はクラシックギターの入門~初級~中級にかけての教程を網羅し、効果的な練習曲を漸進的に多数配置した優れた教本として、200年近く経過した現在でも命脈を保っているし、作品60番の「25の練習曲」は中級者が必ずと言っていいほど手掛けるバイブル的な存在として重要な位置を示す教育的作品として高い評価を得ている。
一時期、カルカッシは古い、音楽的価値が低いので取り組む必要性に乏しいなどの評価を聞いたことがあったが、的外れな見解だと感じる。
初級、中級の練習曲でこれほど技巧の習得効果と音楽的魅力を同時に豊富に備えた作品は他には見当たらない。
ソルの練習曲も初級作品はあるが、漸進的な配慮が行き届いているとは言い難いし、音楽的にも優れていると感じられるものはむしろ少ないように感じる。
私がクラシックギターを始めた年に、全音から出版されていた阿部保夫著「現代奏法によるカルカッシ・ギター教則本」を買って練習をしたが、途中で挫折してしまった。
この教本を買ったときのことはよく覚えている。札幌の東急デパートの楽器売り場で買って、帰りのディーゼル列車の中で読み、お昼頃には家に着いて早速弾いてみたことなど、なぜかその時の光景が断片的にではあるが記憶として残っているのである。
しかしその時は長続きしなかった。多分もっと有名な曲を無理してでも弾きたいという気持ちが強かったからであろう。
このときに無謀にもすでにアルハンブラを自己流で弾いていたし、なんと難曲、アストゥリアスも弾いていた。
高校に入ってからもあまり練習曲には目が向かず、弾きたい曲を自己流で弾くという楽しみ方をしていたが、高校を卒業して大学に入るまでの春休みのときに、何故か心機一転、この阿部保夫著「現代奏法によるカルカッシ・ギター教則本」を最初からやり直してみようという気持ちになって第Ⅰ部から順番に練習を始めたのである。
この時は第Ⅲ部のNo.33の練習曲まで進めることが出来たが、最後まで達成することは出来なかった。
しかし、この集中的なカルカッシのメソッドと練習曲の習得で、ギターの基礎的土台の構築が飛躍的に向上したという実感を得ることが出来た。
この時の練習ほどそれ以降のギター技巧の応用に役立ったことは無かったと今では思っている。
実際、大学時代に残した録音を聴いてもこの練習の成果が現れているな、と感じることが出来る。
今から10年前に第Ⅲ部をまた再度取り組んだことがあったが、これも結局最後まで進めることが出来なかった。
そして今回、今から1か月くらい前に、1曲ずつ録音して、無期限で50曲を完成させよう、という目標を立てた。
今日、その第1回目、第Ⅲ部No.1の練習曲の録音が終わった。
短い練習曲なので、マンドリン合奏曲や独奏曲の練習に入る前に最低1回は通しで弾いて習慣化することにした。
習慣化すれば時間はかかってもおのずと一歩一歩進めていくことが出来る。録音して50の作品集を自分の演奏で残すことが出来るという期待も得られる。
ちなみに阿部保夫氏はこの第Ⅲ部の練習曲に取り組みにあたって注意点を冒頭に述べているが、その中でとくに目を引くのは、アポヤンド奏法を使用することを何度も強調していることである。
「メロディは可能な限りアポヤンドを使う」、「特に単旋律は必ずアポヤンドを使用する」などである。
これはとても重要な練習要素だと思う。
私はアポヤンドをどちらかと言うと使う方であるが、学生時代に比べると使用頻度は減少したと思う。
それが原因かわからないが、アルアイレの音は昔の時代の音に比べ、細くなっているように感じる。
そのため初心に帰ったつもりでまずは阿部氏の指定どおりに従ってアポヤンドを使って練習することにした。
多分この練習の成果がアルアイレの音の変化という形をとって現れてくると期待している。
カルカッシ・ギター教則本Op.59第Ⅲ部50の漸進的作品集 No.1 アンダンティーノ グラシオーソ 2024年2月5日夜