緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

シュテファン・ラック作曲「ロマンス」を聴く

2018-04-15 22:25:32 | ギター
今日はマンドリン合奏の練習で東京まで行ってきた。
2週間前の合同練習の時よりもかなり合わせられるようになってきた。
合わせられるようになってくると、他のパートの音が自然に耳に入ってくる。
今までは自分のパートのことしか考えられず、余裕が無かった。
これから合わせるのが難しい箇所と技巧的な難所を重点にとにかく練習だ。
本番で不完全燃焼になるのは勿体ない。
このような機会を得られたということはこれまでの自分には考えられなかった。
機会を与えていただいたことに感謝しつつも全力で弾きたい。

今日の練習で気付いたことであるが、マンドリン合奏を長年経験してきた方は、テンポを正確に数えられる能力に優れているということだ。
そしてリズム感にも優れている。
反面感じたことは、音作りに弱いということ。
ちょっと言いにくいが、音は綺麗とは言えない。
独奏は「音」がとても大きな要素を占めており、聴き手はギターの音の美しさ、魅力を求めるから独奏者は必然的に「音」を磨くことに注力する。
独奏者が陥りやすいのは、テンポ、リズムが自己中心的になりがちなことだ。
テンポ、リズムは全て独奏者が決定する。
独奏者により如何ようにも変化させることができる。
未熟さゆえに間違った表現をしても瞬時に気付くことはない。
それに対して合奏においては、テンポ、リズムは指揮者が決定する。
合奏の場合、奏者は指揮者の求めるテンポ、リズムに100%正確に合わせなければならない。
これが大きくずれると、合奏曲は台無しになる。
だから奏者は徹底的にテンポ、リズム、拍の長さ等を合わせる練習をする。

ただ音を合わせることが合奏において重要とは言っても、それだけではいい演奏は生れないと思う。
私はこれに音の魅力、楽器の持つ最大限の音の美しさを表現できるようになることがさらに重要だと思う。
その意味では、合奏者も独奏の練習が必要だし、独奏者の合奏の経験が必要だと思うのである。

今日、記事にするシュテファン・ラック(Stepan Rak 1945~)作曲の「ロマンス(Romance」という曲は、あまり知られていないがとても美しい曲であり、ギターの音の美しさを存分に表現できる曲でもある。
ホ短調のアルペジオを伴う旋律はとても美しく、聴き手を少なからず感傷的な気持ちにさせる。
8分の9拍子、8分の6拍子、8分の9拍子が入り交じり、それが気持ちの高揚、せつなさ、やるせなさなどの表現につなげられているように思う。
美しい旋律の要所はアポヤンドを使うべきだ。

(下に楽譜の写真を載せておく。コーヒーでもこぼしたのであろうか。広範囲にわたって染みが付いていた。)







ラックの曲を最初に知ったのは大学時代だった思う。
全音のギターピースの裏面に掲載されていた曲目に「クレンピルの主題による変奏曲」という曲があり、これがラックの作曲であった。
しかしこの曲は実際には聴くことがなく、最初に聴いたのが「ロマンス(Romance」だった。
30歳を超えた頃だったと思う。
実家に帰省した時に兄のCDで聴いた。
この曲のホ短調の部分があまりにも美しかったので、その後楽譜も買った。
しかしこの曲のホ長調に転調した部分はあまり好きになれなかった。
曲が硬くて少し乱暴な感じがする。
ホ短調の部分があまりにも美しいので、その落差にいささか失望する。

先ほどの兄所有のCDであるが、演奏者はウラジミール・ミクルカ(Vladimir Mikulka)。



ミクルカはチェコ出身のギタリストで、パリコン優勝者である。
録音もかなり残したが、残念ながら今日ではわずかしか手に入らない。

このミクルカの弾く「ロマンス(Romance」の演奏は素晴らしい。超名演と言っていい。
芯のある、力強く、透明感の強い音。
今の時代には無い弾き方。
昔の時代の弾き方と言ってはおかしいが、昔の時代というより、クラシックギターの魅力ある音を最大限に引き出す弾き方、演奏だと言っていい。
本来、クラシックギターの音とはこのような素晴らしい音が出るんだ、というような音と演奏なのだ。
楽器は1979年製のイグナシオ・フレタである。

ミクルカはフレタを使う前の70年代の録音に河野賢を使用していたが、河野ギターの最大の欠点である、音の立ち上がりに鈍さが出た録音が多かった。

ミクルカの「ロマンス(Romance」の演奏をYoutubeで探したが無かった。
ミクルカ以外の演奏もYoutubeで探してみたら、少ないながらもいくつか聴くことができたが、紹介できるレベルのものが無かったで、この記事では載せないことにした。

ミクルカの音や演奏を聴くと、クラシックギターの独奏のみならず、マンドリン合奏での音を追求すべきものを感じる。
澄み切った透明感、強い芯の高音、深く力強い低音。

昨日の夜にラックの曲を記事にしようと思うとコメント欄に書いたのであるが、単なる偶然であろうか。兄がこのCDを返してくれと言ってきたらしい。今日実家から電話があった。
もしかして私のブログを見つけて読んだのか。そうならやばい。

【追記】
1週間後に母校マンドリンクラブ記念演奏会の合同練習に参加するために札幌に行く。
曲数は7、8曲あるが、まだ1回~数回しか弾いていない。
当日はギターを持ったまま、聴くだけに終わってしまいそうで、ちょっと情けない。あと6日間。簡単な部分だけでも弾けるようにしておこう。


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