緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

サドル自作

2016-09-10 22:18:34 | ギター
手持ちのギターで、弦高が高く、弾きづらいものがあり、セーハの多い曲などでは弾くたびに左指に負担がかかり、弾く楽しみを奪われていた。
弦高の高い楽器は、順反りしたことが原因であるものと、元々弦高の高い設計の楽器であるものとの2種類がある。
弦高は0.1mm変わっただけで演奏に影響を及ぼす。
ネックが順反りすると間違いなく弦高は高くなる。
先日中古楽器店で異常に順反りした楽器を弾かせてもらったが、いくら音が良くても弾くうちにストレスが大きくなり、演奏を途中で止めざるを得ない。
ネックはどんな高級ギターでも順反りするものがある。
高級ギターだから順反りしないなんてことはあり得ない。2、3万円の量産ギターでも反らない楽器を見たことがある。
材料の当たり外れによる原因が最も大きいのではないか。
フレットの打ち込みが弱いと順反りしやすいと言われている。
あとは湿度である。
湿度が高くなると木材は湿気を吸って膨張するので、ネックが反りやすくなる。
そのような状態で、カーボン弦など張力の強い弦を張るとネックが反ることがある。
私の楽器でこれをやってしまったものがある。

楽器の弾きやすさ、弾きにくさを決定する要因で最も重要なのは弦高だと思う。次に弦の張力だ。
弦長はこれらの2つに比べあまり大きな要因にはならない。
以前、弦長665mmの楽器(ラミレスではない)を弾いていたことがあったが、ネックが完璧にストレート、弦高が12Fで1弦3mm弱、6弦4mm弱で、張力も普通で、とても弾きやすかった。

弾くのに最も苦労するのは弦高が高く、かつ弦の張力が強い楽器である。
冒頭の手持ちの楽器はそのような状態なのであるが、ネックはストレートで順反りしていない。
とても頑丈な材料を使っているのが分かるような楽器であり、弦を張りっぱなしでも恐らく反ることはないであろう。
しかし弾きづらい。
そこで弦高が低くなるよう、サドルを自作することにした。

サドルは今までにも自作したことがある。
ナットも含め、20本くらいは作っただろうか。
プロに頼めば安心して精度の高いものが得られるが、工賃は高くつく。
もとより工作は得意ではないが、自作であれば材料費だけで済む。

サドルはオリジナルは残しておいて、別に自分の弾きやすい高さに合わせたサドルを自作した方が良い。
オリジナルのサドルは製作家によりベストの音を出すために採寸されたものであるから、これは出来るだけ保存しておいた方が良い。



サドルを作るために必要な工具は、ノギス、小型の万力(バイス)、糸のこ、金やすり、サンドペーパーなどであるが、私は砥石も使う。
まず材料にオリジナルのサドルをあてがい、鉛筆で型取りする。



オリジナルのサドルの厚みと材料の厚みをノギスで測定する。



今回は、オリジナルが2.3mm、材料が2.4mmだった。

型取りしたサドルを万力で固定し、糸のこで鉛筆の線に沿って切断していく。
今回使った糸のこは、「ミニ コッピングソー」という商品で、普通の糸のこの刃とは異なり、360度全周がスパイラル状になった特殊な刃を持ったものであり、曲線切りも楽に出来るものであった。これは使いやすい。
近くのホームセンターで780円で購入。





下はのこで切断した後のサドル。



次にサドルを万力で固定して、金ヤスリで弦の当たる部分(サドルの上面)を削っていく。



この作業は根気がいるし、作業に熱中していると知らないうちに削りすぎていることもあるので注意が必要だ。
少しづつあわてないで作業し、ある程度削ったあとは、こまめに万力から外し、オリジナルのサドルとの高さを比較する。
これを意図する高さまで削れるまで繰り返す。



意図する高さの近くまできたら、サンドペーパーに持ち替え、なるべく力をいれずに削っていく。
サンドペーパーは、平らな木片などに巻いて使った方がいい。



次にサドルの厚みをブリッジの溝に合うまで削っていく。
砥石を万力に固定し動かないようにし、砥石の上にサドルを置いて、指で押さえて上下に擦っていく。



サドルはあまり強く押さえつけない方が良い。力を入れると厚みにむらが出来てしまう。
これも頻繁に万力から外し、ノギスで厚みを確認する。
削りすぎると全てが水の泡になってしまう。時間がかかっても慎重に削っていく。
そしてサドルを何回もブリッジの溝に当てがって、あとどのくらい削ればいいのか確認する。
無理やりサドルをブリッジの溝にはめ込もうとするのは、溝が拡がるから厳禁。
ブリッジの溝にややきつめに入り込むようになったら、サドルの表面を目の細かい仕上げ用サンドペーパーで、削りすぎないよう注意しながら表面を磨いていく。



そしてブリッジの溝に何度か入れてみて微調整していく。


楽器により、サドルを低くすると音がかなり変わってしまうものがある。
張力が変化するの当然である。それでも弾きやすさを重視するのであればやむを得ない処置だ。
今回サドルを変えた楽器はあまり音が変わらなかった。
調弦し、これまで苦痛に感じていた曲もかなり楽に弾けるようになっていた。
しばらくこのサドルの高さで様子を見て、もしまだ弾きにくさを感じるようであれば、さらにもう少し削ることになるかもしれない。
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