緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

フォーレ作曲「エレジー Op.24」を聴く

2016-08-14 00:06:23 | チェロ
静かな夜に聴くのにふさわしい曲だ。
ガブリエル・フォーレ作曲「エレジー Op.24」。
この曲は、チェロ独奏と管弦楽のための楽曲として1880年に作曲されたが、今日聴いたのはチェロとピアノのための二重奏版である。
エレジーとは「悲歌」とも言われる。

初めて聴いたのは、フォーレのピアノ曲の鑑賞に熱中していた頃の30代半ばであった。
録音は、チェロ:ポール・トルトゥリエ、ピアノ:エリック・ハイドシェック。
後で、チェロ:ロベール・ザール、ピアノ:ジェルメーヌ・ティッサン・ヴァランタンの演奏も聴いた。
私は後者の演奏の方が好きだ。
作品24であるから、フォーレの作品としては初期の部類に入る。

ハ短調のピアノの和音が8回繰り返された前奏の後の冒頭のフレーズは、冷たい晩秋か冬に降る冷たい雨を思わせる。そして気持ちは悲愴感に満ちている。
戦争で壊滅的な被害を受け、何もかも失った時に感じる時の感情だろうか。
失恋の痛手のような気持ちがしないでもないが、もっと強い、親しい人を失った悲しみのような気もする。
そしてどこか過去を「回想」しているように聞こえる。
しかしその後の展開で、フォーレらしい独特の和声進行により、気持ちの揺れやうつろいが感じられる。
何か過去のシーンが意識に浮かび上がってきているのか。

途中、突然重苦しい気持ちか一転して明るい晴れやかな曲想に転じる。
この変化は素晴らしい。
ピアノの静かなアルペジオが流れて、穏やかなとてもやさしい旋律が流れる。
この部分のチェロの音は小さく繊細だ。ピアノが旋律を受け持つ。
夜想曲の2番の旋律を彷彿させる部分が現れる。
新緑のまぶしい中を幸せに浸りながら歩いているようだ。
これはこの曲の主人公の、最も幸せだった時のひとつの回想のように思える。

しかし次第に曲はそのはかない幸福な思い出に浸る気持ちから現実に引き戻される。
そして激しい気持ちの昂揚を経て、再び悲愴感漂う主題が再現される。

途中やや明るみが差す部分が現れるが長続きしない。
最後は、静かなハ短調の分散和音が3回繰り返されて終わる。

この曲はフォーレの作品の中でも比較的分かりやすい方だ。
静かな夜に、思いっきり悲壮感や絶望感など、暗い気持ちに浸るとしたら、やはり夜想曲7~13番(8番除く)がいい。


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