緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ショパン ワルツ第10番ロ短調の楽譜が2種類

2013-03-02 22:05:34 | ピアノ
こんにちは。
だんだん暖かくなってきました。暖房を入れていると少し暑く感じる時もありました。
さて、以前のブログでゲサ・アンダの弾くショパンのワルツ第10番ロ短調op69-2を紹介したことがありました。
アンダの弾くこのワルツは彼が癌で54歳の生涯を閉じる半年前に録音されたもので、特に第10番は素晴らしく、私のお気に入りの演奏です。
この演奏を初めて聴いたとき、ロ長調からロ短調に戻る直前のフレーズで違和感を感じました。今まで聴いてきた演奏と違う音を出していたからです。
何故アンダはこの部分を、多くの演奏家が奏する譜面に基づいて演奏しなかったのか、謎でした。
そこでまず、ショパンの楽譜が唯一でなく、複数の版があると思い調べてみることにしました。
わかったのはショパンのワルツは、手稿や自筆譜が複数あるということです。この第10番もクラフクのヤゲロニア大学図書館に寄贈された筆者不明の写譜による版と、パリ国立図書館に所蔵されている筆者不明の手稿による版、そしてフォンタナの校訂によるベルリン版及びパリ版による楽譜があることがわかりました。
自筆譜による版とフォンタナ版の違いは、概ね下記の部分です。

1.13~14小節目
A.自筆譜


B.フォンタナ版


2.自筆譜40~41小節目、フォンタナ版88~89小節目
A.自筆譜


B.フォンタナ版


3.自筆譜65~80小節目、フォンタナ版113~128小節目
A.自筆譜


B.フォンタナ版


4.自筆譜78小節目、フォンタナ版126小節目
A.自筆譜


B.フォンタナ版



さてアンダの演奏ですが、基本的にフォンタナ版で弾いています。これは殆どのピアニストと同じです。自筆譜による版で弾かれている録音は未だ聴いたことはありません。
但しアンダは上記4番目のロ長調からロ短調に移る3小節前の部分はフォンタナ版ではなく自筆譜による版で弾いています。
何故アンダはあえてこの部分をフォンタナ版ではなく、自筆譜による版に置き換えて弾いたのか謎であり、その真意はわかるすべもありません。
アンダほどのピアニストが譜面を読み違えたり、誤植のあるような楽譜を使ったとは考えられないですね。
それとアンダはロ短調に戻ったあとの部分で、フォンタナ版には記載されたいない装飾音を入れたり、最後から3小節目2拍目の和音を変更して弾いています。
アンダは恐らく、自分が病気で命が残り少ないことがわかっていて、この最後のレコーディングに対しては自分の感じるままに自由に表現したいと考えたのだと思います。
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