緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

2012弦楽器フェアに行った

2012-11-03 22:03:28 | ギター
こんにちは。
11月に入って急に寒くなってきました。家ではエアコンの暖房を入れ始めました。
しかし今日は暖かい晴天に恵まれ、年1回科学技術館で開催される「弦楽器フェア」に行ってきました。
この弦楽器フェアでは、日本人製作家のバイオリン、チェロの他、マンドリン、ギター、リュートを数多く展示し、誰でも自由に試奏することができます。
またギターショップや商社もブースを設け、外国製の楽器や楽器用材、楽譜、CDなども販売したり、プロの演奏家が展示楽器をコンサートホールで演奏するミニコンサートなど、年1回の催し物でありますが、とても楽しめるイベントなのです。







私は1990年ごろから、当時は信濃町の野口英雄記念館で開催されていましたが、もう20年以上足を運んでいますが、若い頃、まだ高級なギターを買えなかった頃はこのフェアに行って、50~80万円もするようなギターを思う存分時間を忘れて試奏するのがとても楽しかったですね。
さて今日は会場に着いたのが午後2時近くで、知人と1年ぶりに再会したがゆっくり話す時間もなく、2時からの坪川真理子さんのミニコンサートを聴くことにしました。
プログラムと演奏楽器は以下のとおり。

①ジュリアーニ作曲:ヘンデルの主題による変奏曲 楽器:奥清秀
②ポンセ作曲:組曲イ短調よりプレリュード、ジーグ 楽器:加納木魂
③マラッツ作曲(タレガ編曲):スペインセレナーデ 楽器:井上保人
④アルベニス作曲(坪川編曲):朱色の塔 楽器:筒井修一
⑤グラナドス作曲:ゴヤの美女 楽器:堤謙光
⑥モレル作曲:ソナチネ 第2、3楽章 楽器:桜井正毅
⑦アルカス作曲:椿姫の主題による幻想曲 楽器;横尾俊佑
⑧サーインス・デ・ラ・マーサ作曲 ロンデーニャ 楽器:黒澤澄雄

坪川さんは体調がすぐれなかったのか、5曲目までは本来の演奏が出来ていませんでした。しかし6曲目から調子を取り戻し、最後の2曲はいい演奏でしたね。
このコンサートで印象に残ったのは⑥の桜井正毅氏の楽器。
このコンサートで一番楽器が響いていたのが④の筒井修一氏と⑥の桜井正毅氏の楽器だったのですが、筒井修一氏の楽器は弦高が高かったのか、彼女にとっては大変弾きづらそうだったようで、本来の音が聴こえなかったのがやや残念。
桜井正毅氏の楽器は音のバランスが大変良く、最低音から最高音までクリアーで雑味の無い良く通る音を聴くことができた。
会場に戻って各製作家の楽器を実際に弾いてみましたが、今年のフェアで印象に残った楽器はやはり桜井正毅氏と筒井修一氏の楽器でした。
桜井正毅氏の楽器はこれまで出品された中でも最も出来の良かったのではないか。音にムラが無く、最低音から最高音まで均一で良く鳴り響き、演奏して気分が良かった。
筒井修一氏の楽器は初めて弾きました。筒井修一氏は楽器修理を随分手がけた方で、私が20代のころ確か東京目白のマンションの一室で工房兼ショップを開いていました。その頃も楽器製作をやっていたようですが、体を壊してからは修理業を止め、楽器製作に専念されたようです。
今回展示された筒井氏の楽器は表面板が杉材のもので、昔のホセ・ラミレスの豪快な響きを彷彿させるものでした。
杉材の楽器は高音は良く鳴り響くが、低音が貧弱なものが多く、ここに表面板に杉を使用することの難しさを感じるのですが、筒井氏の今日の作品は5弦、6弦、4弦と音がぼけることなく強く鳴り響き、特に5弦の響きはラミレスに近いものを感じました。
高音もムラが無く、ハイポジションまで音抜けが良く、音の立ち上がりが速く、弾いていて実に気分が良かった。
アルハンブラの想い出とヴィラ・ロボスの練習曲第1番を弾いてみたが、音の分離も良く、練習曲第1番では中音域の音が明瞭に聴こえたのはこの楽器の音の分離の良さを表していると思います。
筒井氏の楽器は高音に色彩感が、低音に鋭さが増してくればもっと良くなると思います。
今回の展示会では全ての楽器を弾く事ができませんでしたが、感想としては、重量の軽い楽器や、高音にエコーのかかる倍音の多い楽器が多かったように感じました。
また弦高は意外に高くしている楽器も多かったですね。最近の傾向なんでしょうか。
弦の張力が中庸または弱めの楽器も多かったです。私としてはもっと張りの強い硬派な楽器もあっていいのではないかと思います。

今回の展示会は昨年と比べて製作家の方が試奏者の演奏に耳を傾けたり、意見を聞いたりする場面が多かったように思います。これはとても必要なことだと思います。
楽器は工芸品や美術品のように作品を見たい人が見て評価てくれればいいというのではなく、演奏するための道具であるわけですからもっとユーザーの中に入っていって、意見を聞いて楽器をもっと良くするための情報を引き出してもいいのではないかと思います。
(私はメーカー勤めなので、ついこのように考えてしまいますが、ラミレスやベルナベなの大家もセゴビアやイエペスなどのギタリストの意見を随分取り入れて、名器を生み出しましたから)
試奏者と話をしなかったとしても、試奏者が自分の楽器を気持ちよく弾いてくれているか、気に入った様子があるか、ちょっとだけ弾いて終わってしまっているか、など観察するだけでもいいから、このフェアの場をユーザーと接点の持てる貴重な場としていただきたいですね。
うるさい会場の中で、自分の楽器の音を少しはなれた場所で聞いて、明瞭に聴こえるかどうか、他の製作家と比べて音の通りかたはどうかなど、観察してみてはどうかと思います。
また試奏者の側も、楽器に絶対に傷を付けないよう細心の注意を払うべきだと思います。人によっては展示品はサンプル品だと勘違いして、ラスゲアードをしまくって表面板にいくつもの傷をつけていたのを見たことがありますが、展示品の中には個人の方からのオーダー品もあるため、注意すべきです。
左手親指の爪をちゃんと切っておいたり、ファスナーや金属製のボタンの着いた上着は脱いだり、腕時計は外すなどの配慮は必要です。

ギターショップや商社が展示していた海外製の楽器(売物です)で、ハウザーⅡ世のめずらしい表面板が杉のギターや、ダブルトップの表面板を採用したシュテファン・シュレンパーの楽器も弾かせてもらいました。
さまざまな楽器を試奏できるこのような催し物はありがたいし、勉強になります。
他の製作家も出品して欲しいですね。
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