世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

「牛の鈴音」

2009年12月27日 22時09分05秒 | Weblog
ヤバい。
ヤバすぎ。
私、この映画をなめてた。
所詮動物もんだろ?と油断してたら、大号泣してしまった。
アイメイクが取れてしまい、困ってしまった。

牛の鈴音
銀座シネパトスにて。

【ネタバレあり】

あらすじ: 韓国のとある田舎で暮らす79歳のチェおじいさんは、76歳のおばあさんと二人で暮らしている。おじいさんと牛はこの30年間毎日欠かすことなく畑仕事に出かけ、そのおかげで9人の子どもも立派に育てあげることができた。普通寿命が15年ぐらいだと言われる牛だが、この老牛は40歳になった今もまだちゃんと働いてくれていた。(シネマトゥデイ)

田舎で暮らす働き者の老夫婦と牛の地味な映画である。ドキュメンタリー映画で、事件も起こらないし、ナレーションもない。(おばあさんのエキセントリックな愚痴は賑やかだったけれども)スクリーンに映るのは、ゆっくりとした時の流れだけ。

歩く牛とおじいさん。
牛に付けられた鈴の音。
これだけなのに、胸が熱くなる。

言葉はいらない。
ただそこにあるだけの温もりが胸に沁みて沁みて仕方が無かった。

自分の体力の限界を感じ、子供たちに「牛を売って隠居するべき」と言われ、泣く泣く牛を売ろうと決意するおじいさん。
市場では「こんな老いぼれ、誰が買うかい」と馬鹿にされてしまう。
おじいさんは本当は売る気なんてなく、買い手にわざと高い値段を提示した。それを知ってか知らずか、一筋の涙を流す牛。

冬、いよいよ立ち上がれなくなる牛。
鈴と鼻輪を取られる。
「天国に行くんだぞ」
というおじいさんの言葉に、牛はカクっと頷き、眠るように死んでいった。

通常15年だとされる牛の寿命。
それが、この牛は40年も生きた。
30年、おじいさんと一緒に働いている間、この牛は幸せだったのだと思う。
あんなにおじいさんに愛されたから。

16歳の時に100キロの道のりを籠に乗っておじいさんの元に嫁いで来たおばあさんの愚痴パワーにはびっくりした。発する言葉の9割が愚痴。しかもおじいさんに愛されている牛に嫉妬している模様。家庭内三角関係が面白かった。そんなおばあさんの愚痴に、どこ吹く風の頑固なおじいさん。案外、この夫婦はお似合いなのかもしれない。

この世界であんなゆっくりとした、そして優しい時間も流れているんだ…ということを、この忙しない歳末の中、ゆっくりと確認できた。

2009年に観た映画で三本の指に入る傑作だった。


映画 牛の鈴音 予告
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