晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

井上靖 『風林火山』

2022-11-05 | 日本人作家 あ

寒いですね。といってもまだ関東南部は霜が降りたり氷点下になったりはないので寒冷地にお住まいの方たちからすれば「生意気言うな」ってなもんですが。お鍋とかシチューとか美味しいですね。二十代くらいの若かりし頃は鍋とかすき焼きだと肉、肉、肉とまさにミートファーストでしたが、歳を重ねますと、白菜、ネギ、豆腐、きのこといった感じのベジタブルファースト。おでんも練り物や卵も好きですが、コンニャクと結び白滝と大根と昆布がスタメン起用。東京っ子なもんでちくわぶが大好きです。

以上、えせベジタリアン。

さて、井上靖さん。一生のささやかな目標として井上靖さんの作品を全部読むというのがありまして、まだ道のりは長いですが、まあささやかなんでゆるくいきましょう。

タイトルと文庫の表紙の絵の座ってる甲冑姿に赤い陣羽織の武士で兜には白いフサフサの何かでクワガタみたいな角が二本、右手に軍配とくればアノ人しかいないですが、主役は山本勘助。ヤマカン(山勘)の語源として有名な軍師ですね。

戦国時代の駿府(現在の静岡県)城下の破れ寺にひっそりと住む浪人の山本勘助。もともと三河牛窪の出らしいのですが、九年前に駿府へやって来ます。仕官を申し出てはいるのですが採用されず、今川家家老に助けてもらってます。顔は傷だらけで斜視、肌は黒く、足は跛行、右手の指を一本失うといった容姿ですが、全国各地を旅して兵法軍法を学び剣術も達人、とされていますがそれが本当なのかどうか誰にもわかりません。

そんな勘助のもとに、甲斐、武田家から仕官の要請があり、了承して古府(現在の甲府市)へ。武田の居城で城主の晴信にお目見え。しかし家臣たちは疑いの目。合戦に参加したことが一度もないというのですから無理もありません。ところが城主の晴信は勘助をいたく気に入ります。

この頃、甲斐の武田は信濃を攻略しようとしていて、諏訪家との合戦に勝利し、城に入るとそこに城主の娘の由布姫が。晴信はこの姫を側室に迎えることにします。この由布姫と晴信の間に生まれた長男がのちの跡継ぎとなる勝頼。正室にふたりの男子がいたのですが、長男は病弱で次男は目が不自由。

勘助は、武田家と相模の北条家、駿河の今川家の三家と縁戚関係を結んで同盟を画策します。しかしそんな中、北条と争っていた武蔵、上州の上杉憲政がいきなり甲斐に攻めてきます。それに勝った晴信は、続いて信濃の村上家と合戦、これにも勝利します。村上家は越後の長尾景虎に助けを求めることに。今まで甲斐の武田家と越後の長尾家は信濃を挟んで争うことはなかったのですが、戦国の世、好むと好まぬに関わらず対決をしなければならなくなります。とうとう景虎が信濃に攻めてきますが、しかしこの段階で両者が激突すれば下手すれば負けるかもしれず、勝ってもかなりの損失がありそうと勘助は予想し、初対決は様子見で終わります。

ところで武田家内での話ですが、勘助は由布姫とその息子を可愛がり、後継ぎはこの子しかいないと思っていたところになんと晴信、また側室を迎えようとするではありませんか。こいつはまずいと勘助は晴信に出家させようとして勘助もいっしょに剃髪して、晴信は信玄とあらためます。

一方、上杉憲政は越後に逃げて景虎を養子にして関東管領を譲ります。この頃には名前が輝虎になってて、上杉輝虎に。で、こちらも出家して上杉謙信に。いよいよ上杉が攻めてきて、迎え撃つ武田。決戦の地は川中島・・・

史実通りですと、この両者の争いは決着がつかず、そうこうしているうちに信玄が亡くなって謙信も亡くなって天下取りレースは東海地方を中心に進んでいきます。タラレバですが、もし上杉と武田が争わずに連合していたら天下取りはこの連合軍がなっていて、そうなると幕府は新潟か甲府になって、という説を唱えるひともいたりしまして、日本の歴史もだいぶどころか大幅に変わってきますね。

ただ、歴史というのは「最終的に辻褄を合わせるもの」でして、例えば過去にワープして少年時代のヒトラーを殺害したとしても他の誰かがユダヤ人のジェノサイド政策をやっていただろうというのがありまして、日本でも結局は明治維新的なことがあってそして欧米列強と戦争して負けて戦後復興して、となるんでしょうね。

まあただ空想というか想像は自由ですので、それこそが小説の楽しみというか醍醐味ですので、結局何が言いたいのかといいますと、この小説は面白かったのです。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする